ウォッシュチーズ 〜婆さんホイホイの餌はこれ〜
私は、プロセスチーズは嫌いだが、ナチュラルチーズは好物である。
ウォッシュチーズが4割引き!思わず手に取り、鼻に付きそうなほど顔に近づけて匂いをかいだ。匂わない…当たり前と言えば当たり前である。匂ったらその一区画が臭くなってしまうため、何重にもラッピングしてあるのだ。それでもついついやってしまう。チーズ好きのご同輩ならば分かってくれる、性である。
隣の市に新たなスーパーマーケットができたという情報を得て、そのスーパーへ行き、たくさん売れ残っていたウォッシュチーズを見つけたのだ。手のひらサイズの円形を半分にして、税抜2680円の4割で販売されていた。チーズ名は、聞いたことがないが、これは買うしかないだろう。
一般的な日本人には、ウォッシュチーズはあまり馴染みがない上、臭いが独特なため好まれないチーズの筆頭だろう。だが、好き者にはあの匂いが堪らないのだ。
ラングル、マンステール、モンドールなどのウォッシュチーズはいくつも何度も食べた。その中で、特にモンドールが好みである。一度、チーズ専門店に勧められ、賞味期限を数週間過ぎ、木枠に入ったチーズの外側にカビが現れるまで熟成して食べたことがあるが、トロトロして最高に旨かった。
家に帰り、もう一度ラベルを見ると「エポワス」と明記されていた。浅学なため、初めて聞く名だった。そこで、ネットで調べてみると、「ウォッシュチーズの王様」とあるではないか!ウォッシュチーズが好きだと自負していた自分が恥ずかしくなるほどの別名である。
ここで一句
エポワスや 神の御足に 口吻たい
ネットの説明では、エポワスの香りは「神のお御足」と何とも粋な表現をしていた。
足の臭いで思い出したが、王朝時代の中国では、逃亡防止として女性に纏足をさせたが、纏足して蒸れた臭い足を舐めて楽しんだとも聞く。さすが、「四足は机、飛ぶものは飛行機以外は食べる」と言われる中国である。食への探求心には頭が下がる。「神のお御足」はこれに通ずるものがあるのだろう。
さて、小皿に入れ、何重にも巻かれたラップを剥がした。1枚剥がす度に、台所に広がっていくあの昭和の公衆便所のような臭い、いや、芳しい香り。これこそ、ウォッシュチーズ独特の香りである。ネットには、ウォッシュチーズの中でも香りが強烈と書いてあったが、私には香りがまだ不十分に感じたので、しばらく放置することにした。冷蔵されていたチーズを、数時間ほどテーブルに置いて室温に戻すと、チーズが眠りから覚め、発酵を再開して香りも強くなり、トロトロしてくるのだ。
ここで一句
放置プレイ ムラムラたまらん 口付けたい
本当は、3時間ほど置いておきたかったが、食いしん坊の性に勝てず、スプーンでチーズをすくおうとした…。
ところが、すでに3分の1ほど、チーズが削られているではないか!?2階にいたはずの家人が、リビングルームでワイン片手に、鼻歌交じりにエポワスを舐めていた。やはり、匂いは強烈なのだろう。
食の好みが一緒なのが、長続きする秘訣のひとつなのであろう。




