玉蜀黍 〜♪時の過ぎゆくままにこの身を任せて…食べました〜
玉蜀黍は、夏の高原に行くと必ず食べている。
高原の野菜は、高原の清らかな水、爽やかな風、煌めく光などの栄養分を吸収して体内に蓄えて成長した農作物である。その夏野菜の代表がとうもろこしだ。それを食べることは、高原食物連鎖の一役を担うことになるのだ。とどのつまり、高原のとうもろこしは旨いから食べる、ということである。
この日は、八ヶ岳・蓼科方面にクルマで出かけ、まず最初に八ヶ岳原村の自由農園に野菜や果物を買うために寄った。
脚の悪いはずの家人は、ターボがかかったように店頭のとうもろこしコーナーに向かい、私が持つ買い物カゴに、とうもろこしを8本もカゴに入れた。そのため、カートを持ってきて、とうもろこしで一杯のカゴをカートの下に置き、新たにもう一つのカゴをカートの上に置いた。
すると、珍しい赤いとうもろこしがあったと2本新たにカゴに入れてきた。家人は、実家の分もあるからと平然と言った。
結局、他にもぶどう、りんご、トマト、りんごジュースなどを購入し、合計1万円以上も支払った、とテヘペロした。
自由農園をあとにして、「八ヶ岳エコーライン」沿いのカフェにでも寄ろうとクルマを茅野方面に向けて走らせた。
八ヶ岳高原の左右に田んぼや畑が続くこの道路は、いつ走っても空気も陽光も新鮮で、爽やかな気分になれるお気に入りのドライブコースである。
しばらく走らせていると、右手にかまぼこ型の店舗やキッチンカーなどが置いてある施設が現れた。
「見たことない施設よね?野菜の販売所かしら?」
「寄ってみる?」
「うん。」
ということで、まだ野菜を買うのかと思いながらも、クルマをUターンさせて先ほど通過した施設に向かった。
施設の駐車場にクルマを停め、かまぼこ型の倉庫に入った。そこには野菜や果物ではなく、近隣の工芸品などが棚に並べられ、売られていた。多くが若い世代向けの商品だった。裏手に出るドアが開いていたので、そこから外に出た。
すると、とうもろこし畑が八ヶ岳に向かってザワザワザワーと広がっていた。風が気持ちよかった。そこにあったテーブルの椅子に腰掛け、
「道路からは、こんな風景は想像できなかったね。コーヒーでも飲もうか?」
「うん。」
しばらくコーヒーを飲みながら、涼しい風に吹かれ、八ヶ岳まで続くようなとうもろこし畑を眺めていた。
「どんなお店か知らずに入ったけど、壁に囲まれたカフェに寄るよりここに寄ってよかったわ。」
「うん、そうだね。そういえば、キッチンカーに『冷やしとうもろこし』が売ってたよ。食べる?」
生とうもろこしを冷やしただけのものが、こんなにも瑞々しくて甘く美味しいとは思わなかった。まるで、八ヶ岳高原を濃縮したような味だった。
とうもろこし 畑を渡る 風を喰む
その後もそこから立ち去りがたく、時の過ぎるのも忘れて風に身を任せていた。
食事は、「誰と何処で」食べるかが肝要ではあるが、こんなにもロケーションが食事の旨味調味料になったことは初めてだった。




