55、終わりなき襲撃
55、終わりなき襲撃
ノヅチは村の周囲で全て凍りつき、その動きを止めていた。でも、さすがに私も疲労と脱力感を感じていた。アリスはシモンの回復魔法とギュスターヴの癒しのリュートの旋律に包まれているけど、まだ倒れたままだ。無理もないよ。こんな神獣クラスの化け物の動きを何体も封じ込めたんだ。もう限界を超えていたのは間違いないよ。ごめんね、アリス無理させちゃって……。頑張ったね、アリス……。私は、アリスの手をペロペロと嘗めていた。そして、同じく倒れているユダの方を向いた。
・・・ちょっとぉ、何いつまで呑気に寝てるの ・・・
私はユダの顔を黒く長い爪で引っ掻いていた。それでも、ユダは動かない。私は、ユダの鼻に思い切り噛みついていた。
「いてえぇぇーっ 」
ユダは飛び起きると、私をぎろりと睨みつけていた。
「なんなんだ、小動物 その女と俺に対する態度の違いは…… 失礼にも程があるぞ 」
「私に言わせれば、キノコ様に対するあなたの口調こそ失礼に値すると思うのですが…… あまり無礼が過ぎると許しませんよ 殺されたいのですか 」
シモンが恐ろしい眼でユダを見つめている。
・・・シ、シモン 怖いよ ・・・
私はプルプル震えていた。すると、ようやく気がついたアリスが私を抱っこしてきた。
「キノコちゃまぁー あれ、キノコちゃま震えてますけど…… 」
「ピ、ピイィィッ 」
・・・ちょ、ちょっと寒くて…… ・・・
シモンが通訳してくれるのに、シモンが怖いからとは言えないよ。私は咄嗟にごまかしていた。
「そうか、リスちゃんは寒さが苦手だもんね。キノコ様も冬眠しちゃうの? 」
・・・私は冬眠はしないから大丈夫だよ でも、この体だから寒さは苦手かな ・・・
「プルプルしてるキノコちゃまも、可愛いですぅ 」
アリスは私をローブの中に入れて暖め始めてくれた。まあ、嬉しいんだけど、ちょっときつく抱きしめ過ぎだよ。アリス、意外に胸が大きくて、私は谷間に挟まれてジタバタしていた。
・・・ぐるじいーーっ ・・・
私が、死に物狂いで暴れていると急に息が楽になった。
・・・ぷうぅぅーーっ ・・・
私がアリスのローブから顔を出すと……。
・・・なに、これ…… ・・・
信じられない光景が広がっていた。凍りついたノヅチの他に、新たなノヅチが数体現れていた。そして、巨大な体で襲いかかってくる。ナアマとランスロットとクレアは剣を構えて立ち上がっている。ナガトも聖刀”蛍丸”を手にノヅチに向かっていった。イブリースは呪文を唱え、ギュスターヴの旋律は癒しのメロディから、戦いのメロディに変わっている。そして、シモンは素早く全員にバフ掛けをしていた。だけど、ただ一人、ユダだけは口許に笑みを浮かべているように感じる。
・・・まさか、こいつが何か企んでいる? ・・・
私は、ユダを問い詰めようとしたけれど、その前にノヅチを何とかしないといけないよ。アリスは私を抱っこしたままヨロヨロと立ち上がっていた。
「ピイィィィーーッ 」
・・・シモン、アリスを押さえていて。これ以上、アリスに無理はさせられない。ノヅチは私が何とかするから ・・・
私はアリスの胸から飛び出すと、ノヅチに向かって走っていった。そして、走りながら爪楊枝の剣に魔力とイメージをエンチャントする。ノヅチはナアマを始め、ランスロットや私の頼もしい仲間たちに進路を阻まれている。本当にみんな頼りになるよ。ノヅチに、あの巨体で動き回られては私が剣で凍らせるのも難しい。私は呪文を唱えられないから、爪楊枝の剣で直接突かなくてはいけないんだ。でも、私の仲間たちが動きを止めてくれている。これなら、前のノヅチと同じ様に動きを封じられるよ。
「ピイィィィーーッ 」
・・・第四の円”ジュデッカ” ・・・
私は、ノヅチを端から凍らせて動きを封じていった。
* * *
「いったいなんだ、あの小動物は…… 信じられん どういう事だ あれだけの超上級召喚魔法を連発して、なぜ魔力が尽きない 女魔法使いの方は魔力が尽きて、もうふらふらじゃないか それなのに、あの小動物は小さい身体で、どれだけの魔力を持っているというのだ 」
「いや、どれだけの魔力があろうとも魔力は有限 いずれ底をつくはずだ フィリポ、それまでノヅチを送り続けるんだ 」
「くくく、問題ない 前にも言ったがノヅチは培養して、いくらでもスペアがある あの小動物の魔力が尽きるまで送り込んでやるさ 覚悟しろっ小動物 」
異空間で機械の作動音が高まり、目も眩むばかりの光が溢れる。
「終わりだ、小動物 」
異空間で笑い声が木霊していた。
* * *
ノヅチを全て凍らせた私は、さすがに少し疲れが出ていた。
「大丈夫か、キノコ 」
「これだけ魔力を放出しては、僕でも耐えられないで倒れていますよ 」
ナアマとイブリースが私を気遣ってくれる。そして、ナアマは私を肩に乗せ、お前もあまり無理するなと言ってきた。
・・・大丈夫だよ、ナアマ これくらい それより、みんなの方が心配だよ こんな化け物と休む間もなく連戦なんて ・・・
「私たちの心配はいらない 私たちはキノコの為に戦うのが使命だからな 」
ナアマの言葉に、イブリースもナガトもクレアも頷いていた。
・・・違うよ、ナアマ 前にナアマがシャーロットに言ってたじゃない カースト制の頂点に立つのは守護者だって 私が、その頂点に立っているなら、私はみんなを守る責務がある だから、私は必ずみんなを守るよ ・・・
私は、任せなさいと胸を叩いていた。すると、その時、また邪悪な気配が溢れる。
「なにっ…… 」
ナアマを始め、みんな絶句していた。そこには、新たなノヅチがまた現れていた。




