50、ノヅチの来襲
50、ノヅチの来襲
「ピイィィィーーーッ 」
・・・ナアマ、ランスロット、ノヅチの足止めを アリス、あの魔法を…… シモンは村の人たちの安全を確保っ ・・・
「少年 私の強さをよく見ておけ イブリースよりも上だと感じるだろうよ 」
ナアマがコリンに一声かけると飛び出していく。他のみんなも私の指示で、一斉に動き出していた。ノヅチを前にしても怯む者など誰一人もいない。私も爪楊枝の剣に魔力をエンチャントする。
・・・ユダが裏切って、アリスが氷付けにしたノヅチを自由にしたのかな ・・・
私は状況を確認する。ナアマとランスロットはノヅチの足止めに成功している。さすがの二人だよ。そして、アリスの周囲にダイアモンドダストがキラキラと輝きだしていた。
・・・ギュスターヴ、みんなのサポートお願いね ・・・
「任せて下さい、キノコさん シモンさんのおかげで、すっかり回復しました 」
ギュスターヴがリュートを奏でると、全員の身体に力がみなぎってくる。
「これが、吟遊詩人の力なのか 体に力が溢れてくる 」
「魔力がアップしたみたい シモンのバフとは違う感じ 吟遊詩人の人とは組むの初めてだけど、これは凄いね 」
ランスロットもアリスも驚いているけど当然だよ。ギュスターヴは、ただの吟遊詩人じゃない。一流の吟遊詩人だ。そして、吟遊詩人はサポートジョブとしても優秀なんだよ。もっと評価されて良いジョブなんだけどね。私は、これなら大丈夫と思いシモンに声をかける。
・・・シモン、悪い ちょっと一緒に来てくれる 通訳をお願いしたいんだ ・・・
私は、シモンと一緒に転移していた。
* * *
ユダは、ナアマが置いていってくれたテーブルで悠々とコーヒーを飲んでいた。
「なんだ、小動物 慌てて出ていったけど、もう用事は済んだのか 」
私は、ユダの背後で氷付けになっているノヅチを見ていた。
・・・ノヅチはここにいる ユダが裏切って逃がした訳じゃないんだ ・・・
私は、その点についてはホッとしたけど、それならノヅチは何体もいる事になる。もし、まだノヅチがいるとしたら……。
「ピイィィィーーーッ 」
「ノヅチについて知っている事を教えなさい、ユダ 」
私の言葉をシモンが通訳してくれる。
「知っている事? 蛭のでかい化け物で、人の命を吸わないと消えない不死身の魔物という事か? まあ、厄介な化け物であるのは間違いないな 」
「このノヅチという化け物は何体もいるものなのですか? 」
「さあ、それは知らんが十二使徒の一人フィリポがノヅチの細胞を増殖させていたな そこからクローンを創るつもりだったのかもな 」
「フィリポが…… なぜ、あなたがフィリポを知っているのです 」
「なんだ、フィリポを知っているのか 」
シモンとユダの間に不穏な空気が流れている。お互いの顔を確かめあっているようだったけど、お互い知らぬ顔で戸惑っているようだった。
・・・ゴルゴダの十二使徒 ユダはその仲間のようだけど、シモンも十二使徒なんでしょう ・・・
「はい、さすがキノコ様です 何でもお見通しですね 私はゴルゴダの十二使徒でしたが、意見が合わず今は袂を分かっております 私が抜けた後に、この男は十二使徒に入ったのですね 」
・・・シモン、十二使徒について教えてくれる ・・・
「もう私が抜けてかなり経ちますので現在の状況は、あの男の方が詳しいでしょうが、十二使徒は、この世界を平和にするために集まった者たちです 元々はマタイの書いた預言書が発端でした その預言書に危機感を持った者たちが十二使徒です 」
マタイの福音書の事かな。私はそれにそんな危機的な事があったっけと思い出してみるが、浅学な私の頭ではとても思い出せなかった。それに、この世界の預言書なら内容も異なっているに違いないよ。
「預言書には近い未来、悪魔が人類を滅ぼすと記載されていました その人類を滅ぼす悪魔の名は魔王サタン 」
サタン……。サタンは、本当に恐ろしいのは人間だと言っていたけど……。でも、それならサタンと十二使徒で話し合って貰えば解決するんじゃないの。私には、この世界の悪魔も人間も悪いようにはみえないよ。もちろん中にはおかしな悪魔や人間がいるのは認めるけど、それは私の元の世界でも同じだよ。どの世界にも変な奴は一定数必ずいる。自分の事しか考えず、思いやりにかける人はうちの会社にもいた。けっきょく、もっと条件のいい会社が見つかりましたと退職していったけど、会社を条件でしかみられないなんて寂しいよね。私は久しぶりに課長の顔を思い浮かべていた。仕事には厳しいけど、人間的には良い人だよ。顔が怖いから誤解されるけど、部下にもけっこう気を使ってくれるんだ。
「そのサタンを倒して人類滅亡を防ごうというのが当初の目的です ですが、それが自分たちがこの世界を支配するという考えに変わっていったのです 私は、そんな彼らの考えについていけず使徒を離脱しました 私の他にも、その時に何人かの仲間が使徒を抜けましたね 」
・・・ふうん、それでフィリポって人が、ノヅチの細胞を培養していたの? ・・・
「いえ、私のいた頃にはそのような事はしていませんでした だけど、彼は自分の事を”科学者”と呼んでいました その”科学者”というのが何か関係あるのかも知れません 」
・・・科学者…… ・・・
「おい、小動物 お前も転生者なら意味が分かるだろう 俺たちの世界には科学者は普通にいるだろう もしかしたらフィリポも転生者なのかも知れんな 」
ユダが私とシモンの会話に割り込んでくるけど、確かにそう考えれば、この世界にドローンがあるのも納得出来るよ。それに、ノヅチがまだいる可能性もあるんだ。私は急いで村に帰らなければと思っていた。




