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最強の魔法使いに転生したいとお願いしたのに小動物になっていた私  作者: とらすけ
二章 冒険の始まり

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44、迫り来る災悪


44、迫り来る災悪



 私たちは、氷詰めにした”ノヅチ”の前で、まだテーブルを囲みコーヒーを飲んでいた。紅茶党のイブリースと、日本茶党のナガトがいないので揉める事なく和気あいあいと話が弾んでいたよ。そうそう、誤解なきよう言うけど、私たちは遊んでいる訳ではないよ。”ノヅチ”が動き出さないか、しばらく監視していようという事になったんだ。


「キノコちゃまぁ、私もう魔力尽きてふらふらです キノコちゃまに乗っていいですか 」


「ピイィィィッ 」


・・・ちょっと、馬鹿なのアリス 今の私が乗せられる訳ないでしょ ・・・


 ジリスの私が憤慨していると、シモンが呆れたような顔をアリスに向けていた。


「アリス、キノコ様を困らせてはいけませんよ 」


 シモンは、コーヒーカップを置くと軽く呪文を唱えていた。そして、アリスに向かって魔法を浴びせる。


「うぴっ…… 」


 私たちが目を丸くしていると、魔法を浴びたアリスの体はどんどん縮んでいき、私と同じくらいの大きさになると、テーブルの上にちょこんと立っていた。縮小の魔法……。これは、敵を弱体化させる魔法の一種だ。シモンは簡単に唱えていたけど、この魔法かなりレベルの高いもので、それこそ最上級のプリーストでなければ唱えられないし、そんなプリーストでも失敗する事が多々ある。それをシモンは簡単にやってのけていた。


「しばらく、その姿で反省していなさい 」


 シモンはアリスに告げるけど、むしろアリスは嬉しそうに私に抱きついてきたよ。


「キノコちゃまぁ、これなら乗れますよ 」


 アリスは私の背中に跨がってきた。すると、不思議な事に私は無性に走りたくなってウズウズしてきたんだ。


「ピイィィィッ 」


 私は、アリスを乗せてテーブルの上を走り回っていたら、ナアマに怒られた。


「こら、キノコ みんながコーヒーを飲んでいるテーブルの上で走り回るなんて行儀悪いぞ 」


「ピイッ 」


 ごめんなさい。ナアマの言う通り、これでは静かなレストランで奇声を上げて走り回っている子供と一緒だよ。私は、反省したけれど、アリスを乗せていると何故かまた無性に走りたくなってくる。すると、ナアマは空間から回し車を取り出していた。


「ほら、ここで走っていろ、キノコ 」


「ピイッ 」


 私は、回し車に乗るとアリスを乗せたまま爆走していた。


・・・なに、この爽快感 お馬さんも、こんな気持ちなの ・・・


 私は、止まる事なくアリスを乗せてクルクル回っていた。そして、初めはそれを笑いながら見ていたナアマだったけど、そのうち真剣な表情になってシモンの手をがっしりと握っていた。


「シモン、私もアリスみたいに小さくしてくれ 」


「えっ…… 」


 けっきょく呆れたシモンにナアマも小さくして貰って私の背中に乗っていた。


「いくぞ、キノコ 突っ走れっ 」


「ピイィィィッ 」


 私は、ナアマとアリスを乗せて、回し車を爆走していた。



 * * *



 ギュスターヴは村の中央の広場でコリンの相手をしていた。


「いいか、コリン 下級の魔物は主に物理攻撃だけだが、魔物も上級になっていくにつれ魔法を使ったり、ポイズンやパラライズの状態異常の攻撃をしてくる それに、炎を吐いたり、冷気を吐いたりの特殊攻撃も加わる まずは一目見てその魔物の特性を見抜く事が肝心だ 君のお父さんが、この村を襲ってきた魔物の特性をしっかり書き残してくれている まずは、それを見てしっかり知識を蓄えなさい 腕力だけでは魔物に勝てないぞ 」


「へえ、おじさん、冒険者だけあって物知りだね そういえば、クロ兄もトレーニングばかりじゃなくて勉強もしてた そうか、体だけ鍛えてもダメなんだね 僕は絶対に、父さん母さんクロ兄の仇をとる だから悪魔に勝てるようにならないといけないんだ よ~し、今日は勉強だ 父さん母さんの残してくれた資料を探さなきゃ おじさん、ありがとう 」


 コリンは、目を輝かせて駆け出していた。


・・・コリン、私は思うよ 君がこのままこの村で平穏に暮らしていて欲しいと…… それが、この村を命をかけて守った両親の願いなのではないかと…… 私が見る限り、この村の周辺にはそれほど強力な魔物は見当たらない よほど群れをなして襲ってこなければ、コリンと大人たちで何とかなるだろう それで私が急いで首都に戻って警備隊の派遣を要請する そうすれば、コリンたちは平穏に暮らせるだろう コリン、魔王はとても人間の力の及ぶ存在ではないんだ 私は、このままコリンとイブリースさんが出会わない事を祈るよ ・・・


 ギュスターヴは腰を上げると、ノアの家に向かっていた。この村を離れる挨拶をする為だった。ノアとソフィーは笑顔で迎えてくれた。


「ギュスターヴさんが羨ましいですよ 自由に旅して新しいものにも出会えるのでしょう 毎日が新鮮で、刺激がある生活 私なんかは憧れてしまいますね 」


「こんな事、言ってますけど、この人弱いですからね この村を出たら、あっという間に魔物にやられてしまいますよ 」


「いや、私にしてみれば、こうして落ち着いて暮らしていける方が幸せだと思いますよ だから、この村の人たちには、このまま幸せに暮らして欲しい それに、私が旅しているのは、個人的な詰まらない理由ですから…… 私は、今日この村を発って首都に向かいます そして、警備隊の要請をしますよ この村は今は地図に載っていない状態なんです これが地図に載れば、行商の商人などもやってくるでしょう 」


「それは、有難いですが、以前いらした調査隊の方はどうされたんでしょう 私は、てっきり首都からは見捨てられたと思っていたのですが…… 」


「おそらく、この村に来る時はアレンさんが中心に魔物を倒しながら訪れたのでしょう ですが、戻る時はアレンさんはいなかった それで、力及ばず魔物にやられてしまったのではと思います 」


「そうですか みんな、良い方たちでしたのに残念です 」


「あまり悲観なさらずに、私の恩人であるキノコさんが、この世界を争いのない世界にしてくれます それまで、私たちも頑張りましょう 」


「それは、あなたが唄っていた英雄キノコの…… 」


「そうです 私はキノコさんのおかげで希望を持つ事が出来ました キノコさんなら必ずこの世界を平和な世界にしてくれます 」


 その時、何か音楽が聞こえてきた。


・・・ホルストの”惑星” しかも、これは”火星、戦争をもたらす者” ・・・


 ノアとソフィーが強張った顔で立ち上がっていた。


「この曲は、最大級の警報の音楽です ギュスターヴさん、万が一があるといけません 早くこの村を発った方が良いでしょう 」


 しかし、ギュスターヴはこの村を離れる気はなくなっていた。


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