12、黒幕
12、黒幕
コリンの周囲から一斉に剣を持った敵が飛びかかってきた。しかし、コリンは焔の剣を構えたまま微動だにしない。それを見て飛びかかった敵は、まだ子供といえるコリンが萎縮して動けなくなっていると思っていたが、コリンは冷静だった。
・・・先生が僕にこの剣を貸してくれたんだ 僕はこの剣を信じる ・・・
コリンは自分に話しかけた焔の剣の言葉を信じていた。
・・・ふふふ、良いぞ少年 見込みがあるな もっと引き付けろ ・・・
コリンの後ろでシャーロットは気が気ではなかった。しかし、シャーロットはコリンが動けないのではなく。機を待っているのだと感じていた。だから、笛を吹かずに待っていたのである。
「ふははっ、右腕いただき 」
「俺は左腕だっ 」
「足を貰おうか 」
敵が剣を振りかぶりコリンに斬りかかろうとした刹那、コリンの頭に声が響く。
・・・今だっ ・・・
次の瞬間、コリンの焔の剣が一閃され、その剣からは全てを焼き尽くす地獄の業火が噴き出していた。
「ごがあぁぁぁーっ!!! 」
まさに一撃。飛びかかってきた敵は、その一瞬で黒い消し炭になりボロボロと崩れていった。コリンもシャーロットも、焔の剣の破壊力の凄まじさに目を丸くしていた。
・・・良いぞ、少年 俺とお前はなかなか相性が良いようだ おかげで大量の経験値を得る事が出来た だいたい俺の主人は使い方が荒い上に、俺の言う事は聞きやしない それに、倒せないような敵にばかり挑んでいくから、経験値も貯まらず俺は成長出来ない状態だ 少年、お前が俺の主人になれ そうすればお互いWin-Winだろう ・・・
「そんなの勝手に決められませんよ あなたは先生の持ち物なんですから…… 」
「ほう、焔の剣と会話が出来ているようだな それに敵を倒すのにためらいがない まずは第一段階合格だ、コリン 」
いつの間にかヴァイオレットと共に戦っていると思っていたナアマが戻ってきていた。そして、コリンの頭を撫でていた。コリンも嬉しそうに笑顔を見せていたが、焔の剣はまだ成長過程みたいですねと言う。
「この剣がまだ成長するのも感じているのか やはりお前は素質がありそうだな 」
「この剣が自分で言っていたんですよ 先生は倒せない敵にばかり挑むから経験値が貯まらなくて成長出来ないと…… 」
・・・バカ、何言ってるんだ ・・・
焔の剣が慌ててコリンを叱りつけるが、もう遅かった。ナアマの額にピキッピキッと血管が浮き出ている。
「ほう…… ダンジョンの奥深くから外に出してやったのは誰かな…… 叩き折って誰も到達出来ないダンジョンの奥深くに置いてきてやろうか 」
・・・いえ、我が儘を言ってみただけです、ご主人様 ・・・
焔の剣から、どっと汗が吹き出し、まるで水竜の剣のように水が滴っているように見えていた。
「まあ、良いだろう それなら私に成長した姿と云うのを見せて貰おうか コリン、こいつを預ける 成長させてみろ 」
「えっ、良いんですか先生 こんな凄い剣を僕が持っていて 」
「ああ、こいつの経験値集めは、コリンの経験値にもなるだろう だから、しばらく使ってみるんだな ただし、レアな武器と云うのは狙われる危険がある 私が所持している分には問題ないが、子供が持っているとなると、良からぬ者が狙ってくるだろう いいか、そんな奴らに奪われるなよ 」
「はい、心してお預かりします、先生 」
コリンの元気のいい返事にナアマは、またコリンの頭をグシャグシャと撫でていた。その時、今までと違う気配が辺りを包んでいた。それは、コリンやシャーロットにも感じられた。
・・・空気が変わった ・・・
それは前線で戦っているヴァイオレットも瞬時に感じとり咄嗟に身をかわしていたが、ヴァイオレットの身体は炎に包まれていた。ヴァイオレットは、転がりながら近くの防火用の貯水池に飛び込むが、それを追って第二の攻撃がヴァイオレットを襲う。空が光ったかと思うと、幾つもの稲妻が池に落ちていた。その電撃と衝撃で池の水は干上がり、池の底は焼け焦げていた。
「なかなか良い護衛をお持ちのようですね、ヴァイオレット王 しかし、私が出てきたからには、もう終わりですよ 」
漆黒のローブを羽織り、禍々しい杖を持った男が歩み出てきた。ヴァイオレットは、クレアに助けられナアマたちと合流していた。
* * *
りんご飴やいろんな物を食べていたのに、小腹が空いた私たちは宿に帰る前に屋台で酢豚を食べていた。実は私、酢豚が大好物なんだよね。中華といえば酢豚が欠かせない。会社帰りに同僚とお酒を飲む時も、中華料理屋さんで酢豚をつまみに飲む事が多かったんだよ。それにこれパイナップル。最近、パイナップルが入っていない酢豚も多いけど、私は断然パイナップル派なんだよ。この屋台のは、きちんとパイナップルが入っていて嬉しいよ。ちなみにピザも、パイナップルがトッピングされているトロピカルが大好物なんだ。
・・・うぴぃ、美味しいねぇ ・・・
私がご満悦で酢豚を食べていると、いきなり街の外れの空が激しく光り、稲妻が何本も落ちていた。なんだろうと私が見ていると、アリスがガタンと椅子から立ち上がっていた。
「雷撃の魔法を、あんなに大規模に発動出来る者は一人しかいません それを街中で使うなんて…… まさか、あの方が…… 」
「ピイィッ 」
私はアリスの慌てぶりに驚いて、誰なの?お知り合い?と尋ねていた。
「私の師匠です…… 」
アリスは青ざめた顔で答えていた。




