第5話〜視線
第5話をお読みいただきありがとうございます。
ついにやってきた登校日。性別も立場も逆転した二人に、学校という名の巨大な戦場が襲いかかります。果たして初登校を無事に乗り切れるのか? お楽しみいただければ幸いです。
朝。アラームの音で目を覚ました航(中身:結衣)は、天井を見上げて三秒で現実に引き戻された。
「……夢じゃなかった……」
隣の部屋から聞こえる「航、起きなさい!」という母親の声。慌てて飛び起き、鏡を見る。そこには、短髪で、肩幅が広くて、そして寝癖がひどい「加害者」の顔があった。
一方、結衣の家では、航(中身:航)が史上最大の難問に直面していた。
「おい、嘘だろ……。これ、どうやって着るんだよ……!」
目の前には、チェックのスカートと、それから——女子の「下着」という名の鉄壁の要塞。
指を震わせながら、彼はスマホをひっ掴んだ。
【メッセージ画面】
結衣(中身:航):
「緊急事態! ブラジャーのホックが留まらない! 助けてくれ、これ詰んだ!!」
航(中身:結衣):
「落ち着いて航くん! 前で留めてから後ろに回せばいいの! あと、スカート履く前にちゃんとストッキング履いてね。伝線させたら許さないから!」
結衣(中身:航):
「無理無理無理! 指が太くてホックが掴めねえ! あと髪の毛! なんでこんなに絡まるんだよ! 誰か助けてくれー!!」
朝から命を削るような準備を終え、二人は学校近くの公園で密会することにした。
お互いの姿を見て、二人は言葉を失った。
「……航くん、猫背すぎる。もっと胸を張って」
「無理言うなよ。結衣こそ、内股で歩くな。航(俺)はもっとガサツなんだよ」
しかし、見た目の違和感以上に、二人を襲ったのは「社会的な視線」だった。
校門が見えてくると、登校中の生徒たちの視線が突き刺さる。
「おい、見ろよ。あれ、昨日の……」
「痴漢したってマジかな?」
「信じらんない。航ってああいう奴だったんだ……」
航(中身:結衣)に突き刺さる、氷のような冷笑と侮蔑の眼差し。結衣は思わず足がすくんだ。自分ではない誰かが犯した罪。それを、今は自分が背負わされている。
その時、隣にいた結衣(中身:航)が、航(中身:結衣)の大きな手をギュッと握った。
「……あ」
「いいか、結衣(中身:俺)。下を向くな。お前は何も悪くない。俺が……俺の体が、お前を守るから」
女子の体になった航の、必死に勇気を振り絞った言葉。
だが、その握った手を見て、周囲のざわめきはさらに大きくなった。
「うわ、被害者の子、あいつに捕まってる?」
「脅されてんのかな……。かわいそう」
「(逆効果だよ航くん!!)」
結衣は心の中で叫びながら、地獄の門——もとい、校門をくぐった。
入れ替わった二人の、本当の戦いはここからだった。
ついに学校へ入った二人。周囲の誤解と、肉体の違和感というダブルパンチが彼らを待ち受けます。次話は、教室での「正体バレ」の危機!?
感想などいただけると励みになります。よろしくお願いします!




