最終話
お待たせいたしました。第3話 書き上がりましたのでお届けいたします。いよいよ ゆいと当たると 黒幕との戦いが始まります。白桃 が作ったプログラムを彼らは破壊できるのでしょうか?戦いが始まります。
放課後。結衣(中身:航)と航(中身:結衣)は、夕闇の迫る旧校舎の理科準備室にいた。
手元にあるのは、黒幕のアカウントから指定された「ゲームの終わり」を告げるメッセージ。
『18時までに来なければ、学校中の端末に「航の決定的な証拠動画」を一斉送信する』
ギィと錆びたドアが開き、姿を現したのは、生徒会副会長の神崎だった。普段の生真面目な表情からは想像もつかない、歪んだ笑みを浮かべている。
「本当に来たんだね。……いや、どっちがどっちって呼べばいいのかな?」
神崎の言葉に、二人は息を呑んだ。入れ替わりの事実を、この男は最初から知っていたのだ。
「お前が……あのアプリの管理者か。なんでこんなことをした!」
結衣の体で、航が鋭く睨みつける。神崎はスマホを弄びながら、冷淡に言った。
「退屈だったからさ。この『School Rumor』に少し悪意を注ぐだけで、誰もが簡単に踊らされる。君たちの入れ替わりだって、アプリのバグじゃない。僕が開発した『関係性操作プログラム』の実験さ。人間の絆なんて、デバイス一つで書き換えられるんだよ」
神崎の手元で、カウントダウンが始まる。あと3分で、航を完全に社会的に抹殺するデマ動画が拡散される。
「そんなの……絶対に許さない!」
航(中身:結衣)が叫び、神崎へ掴みかかろうとする。しかし、神崎はそれを嘲笑うようにかわした。
「無駄だよ。その体じゃ僕には勝てない。アプリの全データを消去できるマスターキーは、この僕のスマホの生体認証だけだ」
絶体絶命の状況。しかし、結衣(中身:航)は不敵に笑った。
「……なぁ神崎。お前、自分のアプリに自信を持ちすぎて、現実の『身体』の差を忘れてないか?」
「何……?」
「今、お前の前にいるのは、華奢な女子高生の『見た目』をした、元空手部員の俺なんだよ!」
結衣の身体が、目にも留まらぬ速さで神崎の懐に飛び込んだ。鋭い足払いが神崎のバランスを崩し、その手からスマホが宙を舞う。
「結衣、今だ!」
床に落ちる直前、航(中身:結衣)がスライディングするようにして神崎のスマホをキャッチした。しかし、画面はロックされている。神崎が慌てて起き上がろうとする。
「パスワードを入れる時間はない……だったら!」
航(中身:結衣)は、すかさずスマホのカメラを神崎の顔に向けた。
『顔認証に成功しました。管理者モードを起動します』
画面に表示された「全データ消去」の赤いボタン。結衣は迷わずそれをタップした。
その瞬間、学校中のサーバーから『School Rumor』の全データが消滅し、神崎のスマホが強制シャットダウンを起こす。
「僕の……僕の最高傑作が……!」
神崎が絶望に崩れ落ちると同時、二人の視界が急激に歪んだ。強烈な目眩が襲い、お互いの意識が引っ張られる感覚に襲われる。
「……あ、航くん……!」
「結衣……!」
二人は手を伸ばし、互いの手を強く握りしめた。
「……痛たた……」
次に目を覚ました時、そこはいつもの理科準備室だった。
恐る恐る自分の手を見る。骨太で、少し日焼けした、見慣れた男の手。
「あ……戻った……?」
目の前では、結衣が自分のスカートを整えながら、涙目でこちらを見ていた。
「戻った……戻ったよ、航くん!」
神崎はその後、スマホのログからこれまでの悪質なデマ投稿の証拠が発覚し、学校側から厳重な処分を受けることとなった。当然、航への痴漢の疑いも完全に晴れた。
翌朝。
爽やかな青空の下、航はいつもの通学路を歩いていた。前を歩く結衣の背中が見える。
「あ、航くん、おはよう!」
振り返った結衣が、眩しい笑顔を見せる。もう周囲から冷ややかな視線が注がれることはない。
「なぁ、結衣」
「ん?」
「……その、ブラジャーのホックの留め方教えてくれて、ありがとな」
航がニカッと笑うと、結衣は一瞬で顔を真っ赤にして怒った。
「もう! その話は禁止って言ったでしょ!!」
怒って駆け出す結衣の後を、航は苦笑しながら追いかけた。二人の本当の日常が、ようやくここから始まるのだった。
【了】
長い間を読みになっていただきました 誠にありがとうございました。よろしくお願い申し上げます。




