第七十八話 きつい仕事
第一隊と第三隊が開始位置へ並ぶ。
ルークは胸元の木彫りの花をそっと触れた。
自分にもできることがある。
その想いが胸に満ちていく。
セイルはルークを見ない。
ただ、静かに拳を突き出した。
ルークは一瞬だけ目を丸くする。
そして、小さく拳を合わせた。
(できることをやろう。)
---
ローガンの声が響く。
「両隊、位置につけ。」
二十人が構える。
「始め!」
全員が一斉に駆け出した。
少しでも敵陣側でぶつかるため、誰もが前へ走る。
その中でも。
ルークだけは飛び抜けて速かった。
相手ではない。
高台だけを見て、一心に走る。
誰よりも先に辿り着く。
相手より三歩早い。
味方よりも三歩早い。
ルークは勢いのまま剣を振り上げた。
高所から低所への一撃。
戦いの基本だった。
相手は反射的に足を止める。
受けようと構えた。
その瞬間。
ルークは向きを変える。
再び走り出した。
入れ替わるように味方二人が高台へ駆け上がる。
たった三歩。
その差が、味方へ有利な陣形をもたらした。
ルークは止まらない。
狙いはブラム。
セイルの予想通りだった。
ブラムは中央へ向かう。
その圧倒的な力で、中央を突破するために。
やや遅れて隊列へ合流しようとしていた。
ルークは一直線にブラムへ駆け込む。
剣では敵わない。
だが。
一人でも多くの意識を集める。
「うおおおおおっ!」
雄叫びが戦場へ響き渡る。
---
ブラムは中央を見据えていた。
雄叫びに振り向く。
敵が一人。
こちらへ向かってきている。
本来なら。
中央の戦線が止まった瞬間に突っ込み、二、三人は倒すつもりだった。
そのために少し遅れていた。
そこを突かれた。
ブラムはルークへ向き直る。
「一対一なら勝てるとでも?」
---
一方。
セイルは戦場全体を見ていた。
北。
高台を確保。
優勢。
南。
レナ。
木剣を持った味方が上手く当たっている。
互角。
中央。
誰も勢いよく飛び込まない。
やはり皆、自分の花が可愛い。
様子見が始まっていた。
北も。
南も。
中央も。
人数は互角。
ブラムとレナ。
二人を抑えられている。
さらに。
ルークの雄叫びで、敵の意識は後ろにも向いている。
(ここだ。)
セイルは様子見の戦線から、一歩前へ出た。
当然。
三人が同時に斬りかかる。
だが。
意識はルークにも向いている。
連携は甘い。
セイルは三人の攻撃を紙一重で躱し切る。
そこは様子見だった戦線。
外した隙を、味方は見逃さなかった。
一人。
花が砕ける。
「脱落!」
試験官の声が響く。
第一隊。
人数有利。
セイルは大きく息を吸い込んだ。
「ルーク!」
ルークが振り向く。
「旗だ!」




