第六十七話 個人戦
セイルはゆっくりと息を整えた。
体力試験を終えたばかりの熱気が残っている。
目の前には十区画に分けられた訓練場。
どうやら十試合同時に進めるらしい。
アッシュは第五区画へ向かった。
木札には五番と刻まれている。
訓練用の剣を手に取り、静かに構えた。
やがてレナも通過する。
試験官から木札を受け取る。
六十二番。
首へ掛けると、まだ少し息を切らしながら二人の方へ歩いてきた。
その後も受験者達が次々と通過していく。
そして最後の一人が通過した。
試験官が前へ出る。
「個人戦を開始する。」
訓練場が静まり返る。
「勝利条件は四つ。」
「戦闘不能。」
「降参。」
「場外。」
「あとは試験官の判断だ。」
「訓練用武器のみ使用を許可する。」
「魔法の使用も認める。」
「故意に相手を死傷させる攻撃は禁止。」
「それ以外は自由だ。」
訓練場の一角には剣、槍、盾などの訓練用武器が並べられていた。
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試験官が右手を上げる。
「第一試合、開始。」
第一区画。
体力試験一位。
ルーク。
相手は最下位通過者だった。
まだ息も整っていない。
数合。
剣が弾かれる。
対応が追いついていない。
「そこまで。」
「勝者、一番。」
順当だった。
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第五区画。
アッシュは相手の構えを見ていた。
(強い。)
足運びも悪くない。
(……でも、まだ息が整ってない。)
迷いは無かった。
踏み込む。
一撃。
二撃。
三撃。
相手も食らいつく。
しかし。
数合後。
アッシュの剣が首筋で止まった。
「そこまで。」
「勝者、五番。」
アッシュは剣を下ろす。
転がった剣を拾い上げ、相手へ差し出した。
「次は、万全な時にやろうぜ。」
相手は少し驚いた表情を浮かべる。
「あ、ああ」
そして小さく笑い、剣を受け取った。
アッシュは剣を肩に担ぎ、その場を後にした。
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第十区画。
第四試合。
「始め!」
セイルは相手を見る。
(踏み込みが上手い。)
相手が踏み込む。
初撃。
避ける。
(呼吸……少し荒い。)
二撃目。
(振りが少し大振り。)
相手が剣を引く。
(……アッシュがよくやるフェイント。)
セイルは警戒した。
だが。
相手はそのまま踏み込んできた。
違和感。
セイルは訓練場の隅まで追い込まれる。
(横薙ぎなら少しまずい。)
だが剣は振り下ろされる。
(違う。)
一歩。
脇を抜ける。
仕切り直し。
周囲の受験者がざわついた。
「あれ……。」
「全部避けてるよな?」
「四十七番の攻撃も速いぞ。」
相手は再び踏み込む。
追う。
追い込む。
また隅。
「追い込んだ!」
「……いや、また抜けた。」
「何で当たらない?」
セイルは相手を見る。
(呼吸が荒い。)
(足。)
(肩。)
(次は大振り。)
相手が大きく踏み込む。
その瞬間。
セイルは剣の切っ先を静かに差し出した。
首筋で止まる。
「そこまで。」
「勝者、四十番。」
相手は肩で大きく息をしていた。
周囲が小さくざわめく。
「一発も当たってないぞ。」
「打ち合ってすら無い。」
「何なんだ、あいつ……。」
セイルは剣を下ろした。
(アッシュの六割くらいかな。)
(多分、体力試験の疲れのお陰だな。)
少し考える。
(……体力試験で順位を上げておいて正解だった。)
木札を見つめる。
一勝。
あと二勝。




