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第六十六話 騎士団入隊試験


騎士団本部。


広い訓練場には、多くの受験者が整列していた。


今月の騎士団入隊試験受験者は八十六名。


張り詰めた空気。


セイル達も列へ加わる。


レナは受験者達を見渡した。


(女の子……もう一人いる。)


少し離れた場所。


同年代くらいの少女が静かに前を向いていた。


その表情はどこか緊張しているようにも見える。


---


やがて、一人の試験官が前へ出た。


「これより騎士団入隊試験を開始する。」


訓練場が静まり返る。


「第一試験は体力試験。」


「騎士団本部外周を五周。」


「砂袋を背負って走れ。」


「実際の行軍を想定した試験だ。」


受験者達が少しざわつく。


「二時間で通過できなければ脱落だ。」


「だが、通過順位での脱落は無い。」


「ただし、通過順位が早いほど個人戦初戦の組み合わせが有利となる。」


試験官は一拍置いた。


「第二試験は個人戦。」


「三勝で第一選抜突破。」


「三敗で脱落。」


それからも説明は続いた。


個人戦は最大五試合。


初戦は通過順位が早いと有利。


二戦目以降は同戦績同士で戦う。


勝ち抜け四十名に達した時点で第一選抜終了。


個人戦の結果を考慮して集団戦の隊が編成される。


人数による端数が生じた場合は、それまでの試験の成績を参考にしつつ、試験官が独断で判断する。


セイルは頭の中で整理する。


(なるほど。)


(一度負けても終わりじゃない。)


(三勝すればいい。)


(単純なトーナメントより、実力が反映されやすい。)


(……三勝するのが目的ってとこか。)


試験官が受験者達を見渡す。


「体力試験を開始する。」


受験者達は砂袋を受け取る。


思ったより重い。


背中へ背負うと、ずしりと肩へ食い込んだ。


セイルは本部外周へ視線を向ける。


(重りが無ければ一時間くらいか。)


(順位は少しでも上げたい。)


(でも飛ばし過ぎれば個人戦に響く。)


開始の合図。


一斉に走り出す。


アッシュは迷わず前へ飛び出した。


先頭集団にアッシュが加わる。


先頭はルークのようだ。


セイルは数を数える。


(四十五番か…)


周囲の速さを見ながら、自分の位置を確認する。


---


レナは後方にいた。


体力試験の順位で脱落は無い。


無理に順位は上げない。


余力を残す走りだった。


ふと視線を向ける。


さっき見かけた少女も後方を走っている。


走りながら、


手の中で握った何かを見つめていた。


---


一周。


二周。


集団は少しずつ縦へ伸びていく。


三周。


四周。


前も後ろも苦しそうな呼吸が増えた。


順位争いが激しくなる。


先頭が通過する。


アッシュは無理して一位は狙わない。


アッシュが通過する。


受験者達が次々と通過する。


セイルは試験官の言葉を思い出していた。


通過順位は個人戦の組み合わせに反映する。


「…あと少し抜いておこう。」


セイルは最後の力を振り絞った。


セイルが通過する。


試験官達が順位を確認していく。


通過者には首から下げる木札が渡された。


「木札は以降、常に身につけておけ。」


木札には受験番号が刻まれている。


アッシュは五番。


セイルは四十番。


レナはまだ通過していない。


試験官が告げた。


「最下位通過次第、個人戦を開始する。」


「上位通過者は位置についておけ。」



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