第六十四話 積み重ね
バドウィン魔法屋。
訓練前。
セイルが口を開いた。
「ティアに手紙を書こう。」
アッシュとレナが顔を上げる。
「ティアの決断を応援してることは、ちゃんと会って伝えたい。」
二人は静かに頷いた。
三人で短い手紙を書く。
元気にしているか。
応援していること。
一度会って話がしたいこと。
少し悩んだが、会う日は騎士団試験の翌日にした。
騎士団試験のことは書かない。
三人とも、その方がいいと思った。
---
数日が過ぎた。
魔法屋で訓練をする。
討伐依頼を受ける。
また魔法屋で訓練をする。
また討伐依頼を受ける。
そんな毎日を繰り返していた。
セイルは朝の走り込みを毎日続けた。
今日もアッシュは剣を振る。
今日もレナは魔法を練る。
気付けば、それが当たり前になっていた。
---
ある日。
三人は再び風針鼠討伐の依頼を受けた。
以前とは違う。
焦らない。
迷わない。
アッシュが前へ出る。
セイルが状況を見る。
レナが支える。
自然と役割が決まる。
危なげなく討伐は終わった。
風針鼠が弱かったわけではない。
役割を理解し、
地道に力を積み重ねれば、
十分勝てる相手だった。
三人は確かに強くなっていた。
---
数日後。
バドウィン魔法屋。
エルザが一通の手紙を差し出した。
「ティアさんから返事ですよ。」
三人で封を開く。
返事は短かった。
『お昼でしたら、少しだけ時間を作れます。』
アッシュが笑う。
「よかった。」
レナも小さく笑った。
セイルも静かに頷く。
エルザは三人を見回した。
「明日は休息日にする事をお勧めします。」
騎士団試験まで、
あと一日。




