第六十二話 親友
「うぎゅ〜……」
レナはその場へ倒れ込んだ。
エルザは慣れた様子でレナを抱え上げる。
「アッシュ。」
「何だ?」
「目的は見つかりましたか?」
アッシュは腕を組み、少しだけ考えた。
「……わかんねぇ。」
エルザは小さくため息を吐く。
「では質問を変えましょう。」
「何かコツは掴みましたか?」
「えーっと……。」
アッシュは頭を掻く。
「円を丸くしてみた。」
「伸びてたから。」
エルザは首を傾げる。
「円?」
セイルも聞き返した。
「丸?」
「おぅ。」
そう言ってアッシュはセイルへ拳を突き出す。
「境界線だ。」
セイルはアッシュの清々しい笑顔を見る。
朝練で見た違和感。
あの一瞬だけ消えたような動き。
セイルは拳を合わせた。
「……そうか。」
エルザは二人を見た。
少し考える。
そして。
理解を諦めた。
「レナを休ませてきます。」
「怪我をしない程度に模擬戦を続けていてください。」
そう言ってレナを抱えたまま訓練場を後にした。
静けさが戻る。
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アッシュは木剣を肩へ担いだ。
「八割でいいか?」
「五割。」
「七割。」
「じゃあフェイント無しな。」
「どうせ効かないくせに。」
「そうか?」
二人は向かい合う。
互いに本気ではない。
軽く体を動かす程度の模擬戦だった。
ヒュン。
ヒュン。
ヒュン。
乾いた風切り音が訓練場へ響く。
やがてアッシュが口を開く。
「なぁ。」
「ん?」
ヒュン。
ヒュン。
「ティア……元気かな。」
シュン。
シュン。
あれからティアからの手紙は来ていない。
セイル達も会いに行く余裕はなかった。
「何かあればオズワルドさんから連絡あるだろ。」
「そうだけど……。」
ブン。
ブン。
セイルは少し笑う。
「ティアが元気なら前線行くの辞めるか?」
「辞めねぇ!」
コツ。
セイルは木剣の先をアッシュの胸へ軽く当てた。
アッシュは少し目を丸くする。
「……気ぃ抜いた。」
「お互い様だ。」
セイルは木剣を下ろした。
「強くなろう。」
少しだけ間が空く。
アッシュは静かに頷いた。
「……おう。」




