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第五十八話 ボックス


同じ朝。


レナは魔法屋の裏庭へ向かっていた。


革袋を持ち上げる。


少しだけ重い。


レナは小さく笑った。


革袋を開く。


黒い砂鉄がさらさらと地面へ広がる。


---


昨日の風針鼠戦を思い出す。


最大出力。


精密操作。


あの時の自分は、間違いなく限界を超えていた。


忘れたくない。


あの感覚を。


レナは静かに息を吸う。


魔力を流した。


「……ボックス」


砂鉄が形を変える。


角のない箱。


もう一つ。


二つのボックスが並んだ。


反発。


瞬間。


二つは離れようとする。


レナは歯を食いしばった。


反発を抑え込む。


震える。


砂鉄が軋む。


魔力も震える。


「……今!」


解放。


ヒュン。


ボックスが勢いよく飛んでいった。


「わっ」


思わず声が漏れる。


想像以上だった。


レナは少し目を輝かせる。


---


「じゃあ……」


今度はランスを整形する。


根元をボックスへ当てる。


反発。


解放。


ランスの先端が鋭く飛び出した。


速い。


だが。


少しだけぶれる。


狙った場所から外れた。


「うーん」


レナは首を傾げる。


もう一度。


今度はランス全体を飛ばす。


途中で先端だけを分離。


威力はさっきより高い。


けれど。


やっぱりぶれる。


狙いが安定しない。


「違うなぁ」


レナは小さく呟いた。


---


ランスを散らす。


黒い砂鉄が宙へ舞う。


指先を動かす。


砂鉄は静かに集まり、革袋へ戻っていく。


上手くはいかない。


それでも。


楽しかった。


セイルは砂鉄という選択肢をくれた。


アッシュは反発という発想をくれた。


二人が可能性を広げてくれた。


その可能性を形にするのが楽しかった。


「もっと色々試そう」



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