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第五十六話 一撃


「今だ!」


セイルの投石が放たれる。


風針鼠は反射的に身を翻した。


石は当たらない。


だが、その回避で魔法は止まる。


三匹の連携が切れた。


「行っけ!」


レナは反発を解放する。


押さえ込まれていた力が一気に弾けた。


箱を蹴ったアッシュの体が一直線に射出される。


最初の一匹は反応できなかった。


アッシュの剣が一閃する。


風針鼠はそのまま地面へ落ちた。


勢いは止まらない。


近くの木へ着地すると、幹を蹴って向きを変える。


残る一匹が距離を取ろうと跳んだ。


だが遅い。


その距離なら、アッシュの方が速かった。


一気に踏み込み、二閃。


二匹目も地面へ落ちる。


最後の一匹が慌てて魔法を放とうとする。


セイルはすでに次の石を握っていた。


投石。


風針鼠は僅かによろめく。


その一瞬を、アッシュは見逃さない。


三閃。


最後の風針鼠が地面へ落ちた。


---


森は静かだった。


アッシュは肩で息をしている。


腕や頬には細かな傷が増えていた。


レナはその場へ膝をつく。


魔力はほとんど残っていない。


セイルも肩で息をしていた。


「アッシュ」


「周囲の警戒を頼む」


「ああ」


アッシュは剣を構えたまま周囲へ目を向ける。


セイルはその場へ座り込んだ。


---


荒い呼吸の中。


ダグの言葉が浮かぶ。


『目の前の事しか見えてねぇ』


あの時は分からなかった。


今も全部は分からない。


それでも。


少しだけ分かった気がした。


最初。


自分たちは強敵をねじ伏せようとしていた。


途中から。


依頼を達成するために戦った。


だから勝てた。


---


誰も何も言わなかった。


アッシュも。


レナも。


セイルも。


それぞれ思うことがあった。


やがて三人は黙々と風針鼠を回収し始めた。



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