表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
42/49

第四十一話 ランス


翌日。


王都郊外の訓練場。


レナは腰の小袋を軽く叩いた。


中には昨日集めた砂鉄が入っている。


「持ってきたんだ」


セイルが言う。


「せっかく集めたしね」


レナは笑った。


「また集めるの面倒そうだし」


「それは分かる」


アッシュが頷く。


エルザは既に紙とペンを準備していた。


「では始めましょう」


研究者の顔だった。


---


最初は収集量の確認だった。


砂鉄を出す。


集める。


広げる。


戻す。


その繰り返し。


地味だった。


アッシュは途中で飽きた。


「いつ戦うんだ」


「研究です」


エルザが即答する。


「模擬戦もします」


「よし」


単純だった。


しばらくして。


レナは砂鉄を細長く伸ばしていた。


昨日見つけたやり方だ。


細い線。


それを何本も作る。


だが弱い。


簡単に崩れる。


「もっと太くしたら?」


アッシュが言う。


レナは少し考えた。


そして砂鉄を集める。


さらに集める。


今度は棒状になった。


先端だけ細い。


「お」


アッシュが声を上げる。


「槍じゃねぇか」


確かにそう見えた。


レナも少し笑う。


「槍だね」


そのまま前へ突き出す。


砂鉄の槍が飛ぶ。


木杭へ突き刺さった。


全員が見る。


思ったより深い。


「強くない?」


レナが言った。


少し驚いている。


「強いな」


アッシュが頷く。


「普通に武器だろ」


エルザも記録する。


「貫通力は高そうですね」


セイルは木杭を見る。


一点集中。


だから刺さる。


分かりやすかった。


「投げ槍ですね」


セイルが言う。


レナは少し考えた。


「名前いるかな」


「いるだろ」


アッシュが即答する。


「格好良い方がいい」


「そこ重要?」


「重要だ」


重要らしかった。


レナは砂鉄の槍を見る。


少し考える。


そして言った。


「ランス」


アッシュが笑う。


「そのまんまだな」


「分かりやすいじゃん」


セイルも頷いた。


確かに分かりやすい。


エルザは紙へ書き込む。


『ランス』


最初の研究成果だった。


---


その後。


模擬戦も行われた。


ただし今回は研究優先。


ランスを作る。


投げる。


崩れる。


また作る。


繰り返す。


レナの操作は少しずつ上達していた。


アッシュは木剣で迎撃を試す。


二回失敗した。


三回目で叩き落とした。


「よし」


嬉しそうだった。


「普通に危ねぇなこれ」


「褒めてる?」


「褒めてる」


レナは少し満足そうだった。


---


昼休憩。


木陰。


四人で座る。


アッシュは肉串を食べていた。


二本目だった。


「結局」


アッシュが言う。


「ティアの話って何だろうな」


手紙のことだった。


三日後。


大切な話。


それだけしか書いていない。


レナは少し考える。


そして笑った。


「結婚じゃない?」


アッシュが真顔になった。


「聖女って結婚できるのか?」


レナが吹き出した。


「そこ?」


「気になるだろ」


アッシュは本気だった。


セイルも少し考える。


「どうなんだろう」


「制度としては禁止されているんですかね」


レナはさらに笑った。


二人とも思った以上に真面目だった。


「いやいや」


「私も知らないけどさ」


「まずそこ気にする?」


アッシュは肉を食べながら答える。


「大事だろ」


セイルも頷く。


「大事かもしれませんよ」


レナは笑い続けた。


何だかおかしかった。


---


午後も研究は続いた。


ランス。


それが今日の成果だった。


まだ粗い。


まだ未完成。


でも。


昨日まで存在しなかったものだ。


レナは砂鉄の槍を見る。


少しだけ誇らしかった。


そして。


少しだけ楽しそうだった。


三日後のことは。


まだ誰も知らなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ