第四十一話 ランス
翌日。
王都郊外の訓練場。
レナは腰の小袋を軽く叩いた。
中には昨日集めた砂鉄が入っている。
「持ってきたんだ」
セイルが言う。
「せっかく集めたしね」
レナは笑った。
「また集めるの面倒そうだし」
「それは分かる」
アッシュが頷く。
エルザは既に紙とペンを準備していた。
「では始めましょう」
研究者の顔だった。
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最初は収集量の確認だった。
砂鉄を出す。
集める。
広げる。
戻す。
その繰り返し。
地味だった。
アッシュは途中で飽きた。
「いつ戦うんだ」
「研究です」
エルザが即答する。
「模擬戦もします」
「よし」
単純だった。
しばらくして。
レナは砂鉄を細長く伸ばしていた。
昨日見つけたやり方だ。
細い線。
それを何本も作る。
だが弱い。
簡単に崩れる。
「もっと太くしたら?」
アッシュが言う。
レナは少し考えた。
そして砂鉄を集める。
さらに集める。
今度は棒状になった。
先端だけ細い。
「お」
アッシュが声を上げる。
「槍じゃねぇか」
確かにそう見えた。
レナも少し笑う。
「槍だね」
そのまま前へ突き出す。
砂鉄の槍が飛ぶ。
木杭へ突き刺さった。
全員が見る。
思ったより深い。
「強くない?」
レナが言った。
少し驚いている。
「強いな」
アッシュが頷く。
「普通に武器だろ」
エルザも記録する。
「貫通力は高そうですね」
セイルは木杭を見る。
一点集中。
だから刺さる。
分かりやすかった。
「投げ槍ですね」
セイルが言う。
レナは少し考えた。
「名前いるかな」
「いるだろ」
アッシュが即答する。
「格好良い方がいい」
「そこ重要?」
「重要だ」
重要らしかった。
レナは砂鉄の槍を見る。
少し考える。
そして言った。
「ランス」
アッシュが笑う。
「そのまんまだな」
「分かりやすいじゃん」
セイルも頷いた。
確かに分かりやすい。
エルザは紙へ書き込む。
『ランス』
最初の研究成果だった。
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その後。
模擬戦も行われた。
ただし今回は研究優先。
ランスを作る。
投げる。
崩れる。
また作る。
繰り返す。
レナの操作は少しずつ上達していた。
アッシュは木剣で迎撃を試す。
二回失敗した。
三回目で叩き落とした。
「よし」
嬉しそうだった。
「普通に危ねぇなこれ」
「褒めてる?」
「褒めてる」
レナは少し満足そうだった。
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昼休憩。
木陰。
四人で座る。
アッシュは肉串を食べていた。
二本目だった。
「結局」
アッシュが言う。
「ティアの話って何だろうな」
手紙のことだった。
三日後。
大切な話。
それだけしか書いていない。
レナは少し考える。
そして笑った。
「結婚じゃない?」
アッシュが真顔になった。
「聖女って結婚できるのか?」
レナが吹き出した。
「そこ?」
「気になるだろ」
アッシュは本気だった。
セイルも少し考える。
「どうなんだろう」
「制度としては禁止されているんですかね」
レナはさらに笑った。
二人とも思った以上に真面目だった。
「いやいや」
「私も知らないけどさ」
「まずそこ気にする?」
アッシュは肉を食べながら答える。
「大事だろ」
セイルも頷く。
「大事かもしれませんよ」
レナは笑い続けた。
何だかおかしかった。
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午後も研究は続いた。
ランス。
それが今日の成果だった。
まだ粗い。
まだ未完成。
でも。
昨日まで存在しなかったものだ。
レナは砂鉄の槍を見る。
少しだけ誇らしかった。
そして。
少しだけ楽しそうだった。
三日後のことは。
まだ誰も知らなかった。




