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第十七話 冒険者


ギルドへ戻る。


受付嬢が採取物を確認する。


青葉茸。


薬草。


依頼達成。


「問題ありません」


そう言って報酬袋を差し出した。


アッシュの顔が明るくなる。


「おお」


初めてのまとまった金だった。


アッシュは袋を開ける。


そして。


固まった。


「半分ねぇ」


隣でダグが手を出していた。


「契約だからな」


当然のように言う。


アッシュは渋い顔をした。


「やっぱ高ぇ」


「そうか?」


ダグは平然としている。


「高ぇよ」


「命拾っただろ」


「それとこれとは別だ」


ダグは笑った。


セイルも少し笑う。


確かに高い。


だが高くない気もした。


岩甲亀の姿が頭を過る。


あれを思い出すと文句は言いにくかった。


---


その夜。


少しだけ豪華な夕食になった。


肉。


スープ。


白いパン。


村では滅多に食べられない。


アッシュは幸せそうだった。


「冒険者最高だな」


「昨日も同じ事言ってたな」


「昨日より旨い」


セイルは呆れた。


食事が終わる。


宿を出る。


アッシュが立ち上がった。


「ダグ」


「おう」


「模擬戦だ」


ダグは即答した。


「嫌だ」


あまりにも早かった。


アッシュが固まる。


「何でだよ」


「金にならねぇ」


「そればっかだな!」


「当たり前だ」


ダグは酒を飲む。


「冒険者だからな」


アッシュは諦めない。


「一回くらいいいだろ」


「嫌だ」


「ケチ」


「違う」


ダグは少しだけ真面目な顔になる。


「お前は何も学んでねぇな」


アッシュが眉をひそめた。


「何だよ」


「放っといてもお前は俺より強くなる」


ダグは言う。


「だから剣なんか振ってねぇで依頼受けろ」


「は?」


「何より依頼受けねぇと金にならねぇ」


結局それだった。


アッシュは不満そうだったが、それ以上は言わなかった。


---


数日が過ぎた。


荷運び。


倉庫整理。


掃除。


畑の柵修理。


冒険者らしくない依頼ばかりだった。


アッシュは毎回文句を言った。


「つまんねぇ」


「金になる」


ダグは毎回同じ事を言った。


そして手を抜かせてくれない。


荷物運び。


適当に積む。


「崩れるぞ」


案の定崩れる。


やり直し。


倉庫整理。


適当に置く。


「探す時間が増える」


やり直し。


掃除。


隅を残す。


「虫が湧く」


やり直し。


アッシュが叫ぶ。


「うるせぇ!」


「生き残る為だ」


ダグは平然としていた。


セイルは少しだけ分かる気がした。


ダグは仕事を教えている訳ではない。


考え方を教えている。


雑な仕事。


雑な確認。


雑な判断。


そういうものが積み重なる。


そしていつか死ぬ。


ダグはそう考えているのだろう。


---


最終日。


ギルドへ向かう。


同行契約も今日までだった。


「最後だな」


ダグが言う。


掲示板を見る。


アッシュも横から覗き込んだ。


「最後なら魔物討伐がいい」


「そうか」


ダグは一枚の依頼書を指差した。


『兎角鹿討伐』


耳の長い鹿の絵が描かれている。


「鹿か」


アッシュが言う。


「簡単そうだな」


ダグの口元が少しだけ上がった。


「そう思うだろ」


嫌な笑い方だった。


セイルは依頼書を見る。


農作物被害。


討伐数一頭。


報酬は悪くない。


ただ。


一文だけ気になった。


『警戒心が強く、追跡困難』


セイルがそれを読んだ時。


ダグはもう受付へ歩いていた。


「行くぞ」


「もう決まりかよ」


「決まりだ」


アッシュはため息を吐いた。


それでも顔は嬉しそうだった。


初めての討伐依頼だからだろう。


セイルは依頼書を見つめる。


簡単そう。


だが。


ダグが選んだ依頼だ。


簡単ではない気がした。



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