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閃光の理(ことわり) 〜生活魔法だと蔑まれた【光】は、世界の闇を焼き切る神の火だった〜  作者: フカミ


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第10話:カイゼルの来襲、あるいは嫉妬の焦土

1. 牙を剥く「正義」


ギルド『プリズム』が水源を復活させたという噂は、瞬く間に近隣へ広まった。


それが面白くないのは、学園の後ろ盾を得て「正当な」魔導士として活動を始めたカイゼルだった。


ある日の午後、塔のふもとに馬の嘶きと鎧の擦れる音が響く。

「――生活魔法科の落ちこぼれ共! 出てこい!」


レイたちが塔の外へ出ると、そこには豪華な装飾を施した鎧に身を包み、私兵を引き連れたカイゼルの姿があった。


その目は充血し、かつての自信に満ちた輝きは、どす黒い嫉妬に塗りつぶされている。


「カイゼル……。何の用だい? 見ての通り、僕たちは忙しいんだ。塔の排熱処理が追いつかなくてね」


 レイは手に持ったままのスパナを回しながら、心底面倒そうに応対した。


「忙しいだと? 貴様らがやっているのは、学園の許可を得ない『違法な魔法行使』だ! 水源の件も、魔道具を悪用して地脈を汚染したという報告が上がっている。この塔を没収し、貴様らを拘束する!」


2. 歪んだ熱量


「没収?……おそらく、その『報告』とやらは君が書いたものだろうね」


 レイの冷めた一言が、カイゼルの逆鱗に触れた。


「黙れ! 俺は火魔法科の首席だ! 正しい魔法、正しい血筋……すべてを手に入れた俺が、なぜ貴様らのような日陰者に追い越されなければならない!」


カイゼルが杖を掲げると、周囲の気温が急激に上昇した。


「焼き尽くしてやる……! 貴様も、その忌々しい塔も!」


放たれたのは、学園で習う火球とは比較にならないほど巨大な火柱だった。



「危ないっ!」



 エレナが前に出ようとするが、レイが片手を挙げて彼女を止めた。


「エレナ、下がっていて。……バルカス、リフレクターの出力最大。リィン、同期を0.1秒刻みで変動させて。……たぶん、これでいけるはずだ」


3. 反射と相殺、そして絶望


レイは指先を火柱に向けた。しかし、放たれたのは破壊の光ではない。


 塔の屋上に設置された大型の反射鏡から、幾重にも重なった「透明な波動」が降り注いだ。


「冷却魔法……? いや、違うわね」


 リィンが繋いだ手から送り込む魔力を感じながら呟く。


カイゼルの放った炎が、レイの展開した「不可視の領域」に触れた瞬間、嘘のように勢いを失い、ただの温い風へと変わって霧散した。


「……な、なに!? 俺の最大火力が……消された!?」


「消したんじゃない。君の魔法の『熱エネルギー』を、別の方向に逃がしただけだよ」


 レイは額の汗を拭いながら、手元の数値をチェックした。


「正直、この規模の熱量を完全に転換できるかは五分五分だと思っていたけど……。バルカスの鏡の純度が、僕の計算以上の効率を出してくれたおかげだね」


「俺を……馬鹿にするな!」


 カイゼルは狂ったように連射するが、そのすべてが、バルカスの設置した鏡によって正確に弾き返され、周囲の地面を無意味に焼くだけに終わった。


4. 届かない言葉


焦土の中で、膝をつくカイゼル。


 レイは彼に歩み寄り、冷たく、しかしどこか哀れむような視線を向けた。


「カイゼル、君は『魔法は出力だ』と信じている。でも、僕にとって魔法は『変換』なんだ。君がどれだけエネルギーを注ぎ込んでも、僕たちの作ったこの『システム』を通れば、すべては無効化される。……それが、僕たちの出した解答だ」


「解答……だと……? ふざけるな……俺は、俺こそが……っ!」


カイゼルの私兵たちが、主人の負けを悟って彼を抱え上げる。カイゼルは去り際まで、レイたちを見つめ、呪詛の言葉を吐き散らしていた。


嵐が去った後の静寂の中で、バルカスがぽつりと呟いた。


「……あいつ、また来るぜ。目つきがヤバかった」


「ああ。次はもっと強力な、あるいはもっと卑怯な手段を使ってくる可能性がある」


 レイは空を見上げ、眼鏡をかけ直した。


「でも、その時はまた新しい計算式を用意するだけだよ。……リィン、エレナ。少し、塔の出力を上げる実験に付き合ってくれるかい?」


勝利の喜びはない。


ただ、自分たちの「自由」を守るための戦いが、これからも続くことを4人は確信していた。


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