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閃光の理(ことわり) 〜生活魔法だと蔑まれた【光】は、世界の闇を焼き切る神の火だった〜  作者: フカミ


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第9話:最初の依頼・枯れた水源の再起動

 1. 訪れた最初の客


 ギルド『プリズム』の看板を掲げて数日。


拠点である塔の防衛システムを調整していたレイの元に、近隣の農村の村長が訪ねてきた。


「……水源が止まった、ですか?」

 レイは、村長の差し出した古びた地図を広げた。


「そうなんです。山の上にある聖なる泉から水が引けなくなりまして……。魔導士様方は『地脈の枯渇だ』と諦めておいでですが、このままでは村が干上がってしまいます」


 レイは地図の等高線と地脈の歪みを指でなぞり、首を傾げた。


「地脈が枯れる……。エネルギー保存の法則から考えれば、供給源が消えることは稀だ。おそらく、どこかで流れが滞っているか、物理的な閉塞が起きている可能性がある……と思う。」


「……と思う?」


 聞き慣れない不確かな言い回しに、エレナが隣で不思議そうな顔をした。


「エレナ、僕の知識はこの世界の『魔力』という変数ルールを完全には網羅していないんだ。前世の物理学をそのまま当てはめていいのか、正直、まだ五分五分だと思っているよ」


 2. 荒ぶる水源の洞窟


 一行は、山頂付近にある水源の洞窟へと向かった。


洞窟の奥からは、水音の代わりに不気味な魔力の唸り声が響いている。


「レイ、なんか変だぞ。この先の空気が、重くて震えてやがる」


 バルカスが反射板を構え、警戒を強める。


 洞窟の最深部にあったのは、枯れた泉ではなく、氷のように固まった「魔力の結晶」に閉じ込められた水流だった。


「……過冷却ならぬ、過魔力状態か。地脈が何らかの理由で急激に圧縮され、水流を物理的に凍結させている。……多分、だけどね」


 レイは眼鏡の度を合わせるように目を細めた。


「どうすればいいの? 壊しちゃって大丈夫?」


 リィンが手を差し出そうとするが、レイがそれを止める。


「待って。迂闊に刺激すると、閉じ込められた圧力が一気に解放されて、洞窟ごと吹き飛ぶ恐れがある。……正直、僕の計算機(脳内)でも、この魔力結晶の硬度は正確には予測できないんだ。……やってみるしかないな」


 3. 試行錯誤の熱核


 レイはバルカスに指示し、反射鏡を特定の角度で配置させた。


「リィン、魔力を『点』ではなく『面』で供給して。結晶の表面を一気に温めるんじゃない。……おそらく、内部の歪みに合わせた周波数で振動を与えれば、砕けるはずだ。……理論が正しければ、だけど。」


 レイの指先から、これまでの鋭い光線ではなく、細かく震えるような淡い光が放たれた。


 ――キィィィィンッ!


 不快な高音が洞窟に響く。しかし、結晶に変化はない。


「……計算違いか? 浸透率をあと15%上げる……いや、波長をずらすべきか……」


 レイの額に汗が滲む。彼は無敵の天才ではない。


未知の現象を前に、必死に「正解」を探り当てようとする、一人の不器用なエンジニアだった。


「レイ君、落ち着いて! 失敗したって、私たちが守るわ!」


 エレナの励ましに、レイはふっと息を吐いた。


「……そうだね。予測が外れたなら、外れたなりの次の手を打つまでだ」


 4. 再起動と、新しい確信


 レイはリィンの手を強く握り、同期のパターンを「乱数」に切り替えた。


「リィン、僕の合図で一気に出力を。……バルカス、鏡を少しだけ揺らしてくれ。均一な光じゃダメだ。この未知の結晶を揺さぶるための『ノイズ』が必要なんだ」


「……よし、今だ!」


 不規則に明滅する光が結晶を叩いた瞬間、ピキッ、と乾いた音が響いた。



 次の瞬間、巨大な結晶が細かな光の粉となって霧散し、閉じ込められていた大量の水が轟音と共に溢れ出した。


「やった……! 水が、戻ったわ!」


 エレナとリィンが手を取り合って喜ぶ。


 レイは溢れる水に濡れながら、自分の手を見つめていた。


「……成功だ。どうやらこの世界の魔力にも、共振現象の法則はかろうじて通用するらしい。……一つ、勉強になったよ」


「なんだよレイ、お前でも不安になることがあるんだな」


 バルカスに背中を叩かれ、レイは苦笑した。


「当たり前だ。僕は神様じゃない。……ただ、みんなの力があれば、その『おそらく』を『確信』に変えていける。……そう思っただけだよ」


 村に戻った一行を待っていたのは、涙を流して喜ぶ村人たちの姿だった。


 それは、破壊の光ではなく、誰かの生活を救うための「新しい光」の初めての勝利だった。


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