↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

136/176

第17話 「ファーラちゃんの解決編」②


 鼻歌を歌いながら入ってきたのはキャシーの幻影。


 それはカウンターまで近付くと、キャビネットから布巾を数枚取り出す。そして、ルネッタが用意していた茶葉の容器をその上でひっくり返した。


 茶葉を見えないように布巾で包み込み、キャシーはそれを躊躇なくゴミ箱に捨てる。自然と寄った眉を解しながらファーラが様子を見守っていると、キャシーは今度はシンク下の戸を開き、奥から別の瓶を取り出した。


 入っているのは薬剤ではなく草そのもの。だが、貼られている赤いラベルには、腹部と守るように添えられた手のデザインが描かれている。紛れもなく、ルネッタの下剤の瓶だ。


 キャシーはその中身を茶葉の瓶に移し替えると、下剤の瓶を改めて戸の奥に隠した。


『うふふ、お邪魔虫達には舞台から降りてもらわないとね~』


 ニコニコしながら、キャシーは入れ替えたばかりの下剤の草をポットに入れて湯を足す。それから手早く他の準備を済ませると、ポケットに忍ばせてきたらしい浮遊の魔道具をティーカートの下に隠し入れた。


 準備は万端、といった笑顔で、キャシーは来た時と同じように鼻歌を歌いながらキッチンを出て行く。


 再び幻影が光の粒子に戻ったところで、ファーラは時計の右上部にあるボタンを押して魔道具を止めた。魔石の色を確認すれば、綺麗な青色をしていた魔石はほとんど透明になってしまっている。


「やっぱりリメンバー・イベントは魔力の消費が激しいですね」


 色が失せた魔石を外して、新しい魔石を込めてから、ファーラは再現の魔道具を再度ポシェットの中にしまい入れる。


「……それにしても……」


 こんなにあからさまなことをしてバレないと思っている、自分は賢いと信じているキャシーに、大きなため息をつきそうになった。


 魔力がない、魔道具を使えるだけのファーラですら、この短時間でこれだけの証拠を集められる。魔女当人ともなれば感情察知も含め朝飯前の事案だ。――彼女の妹弟子はさておき。


 漏れ出そうになるため息をぐっと堪え、ファーラはキッチンに近付く。シンク下の戸を開け、中に保全用の魔道具を被せた手を突っ込めば、奥の方にキャシーが隠した瓶をすぐに見つけた。


 布で包んで掴んで取り出し、ファーラはまだ動いている記録用の魔道具にそれを揺らして見せる。


 ポシェットにそれをしまってから、記録用の魔道具を持ち上げ、今度はゴミ箱に近付いた。そこにある布巾の塊を開けば、幻影が再現した通り、茶葉が中から顔を出す。ふわりと漂う芳香に、本当にいい茶葉だったらしい、と場違いなことを考えてしまった。


「キッチンでの証拠はここまでですぅ」


 誰にともなくそう告げ、ファーラは記録用の魔道具の記録をいったん止めてポシェットの中にしまい込む。


 脚立を元の場所に戻してから、今度こそ応接室へと向かった。


(さて、どうしますかね。今すぐ指摘してもいいんですが、他の人たちが戸惑っている間に上手いことかわされるのは癪ですし、何よりさっきポケットから魔道具を取り出していた辺り、多分ポケットに無限空間袋を縫い付けてますね。何出されるか分からないし、そもそも何がしたいかも分からない以上、お父さんが帰ってきてから見せる感じにしておきましょうかね)


 どこまでも冷静に、ファーラは次の行動を考える。


 その時だ。応接室の方から二重で駆ける音が聞こえてきた。何かあったのか、と、ファーラは急いで応接室に向かう。


 辿り着いた応接室はもぬけの殻だった。一瞬の思考の後、ファーラは状況把握のために再度再現の魔道具を取り出して稼働する。


 上部のつまみをカチカチと動かせば、出現した光の粒子は先程よりも早く部屋中を行き渡った。そして形成された幻影たちは、本来の速さの三倍ほどの速さで動き出す。


 再現速度を上げているので声はほとんど聞き取れないが、ファーラとキャシー、その後にレナが出て行ったあと、残されたブリジットとルネッタは会話をしていたらしい。


 何かに気付いてブリジットがルネッタに手を差し出し、ルネッタもそれに応じようとした。


(えっ、まさかルネッタの魔力動かそうとしてますブリジットさん!?)


 過去の幻影に慌てるが、速度を戻すより早くにレナとキャシーが戻ってくる。


 レナに怒られ、泣きながら出て行くルネッタ。


 それを追いかけるキャシー。


「……嫌なお顔ですねぇ」


 出て行く直前のキャシーは、やけに楽しそうな、しかし悪意に歪んだ笑顔を浮かべている。


 その後、ブリジットとレナは何事かしばらく話していたようだ。


 真剣に話をしている二人の横がを眺めながら、ファーラは再現と同じくらいの速度で思考を回す。


(キャシーさんの狙いは何ですかね。さっきはシーラさんと結託してブリジットさんを襲うつもりかと思ってましたが、さっきの顔、レナさんとルネッタが仲違いして喜んでましたよね? あれじゃむしろ狙いはルネッタなような――!)


 そこまで考えて、ファーラは頭を掠めた可能性に目を見開き固まった。まさか、そんな愚かな真似をするとは思いたくないが、ファーラが認識するキャシーという人物像が、その可能性を固定していく。


 そうしていると、ブリジットとレナの幻影が同時に何かに気付いて顔を上げた。すぐさま飛び出す二人。そこで再現が途切れる。


(僕がさっき聞いた走る音はブリジットさんとレナさんみたいですね。……で、この二人が同時に反応したってことは、魔力関係の何かがあったってところですかね)


 先程抱いてしまった可能性を後押しするような状況に嫌な感覚を覚えながら魔道具をしまい入れてと、ファーラはすぐさま外へと駆け出した。


「……ゴーレムが停止してる……! 確かここのゴーレムたちはまとめて管理していたはず……」


 記憶していた方向に顔を向けると、ちょうどレナが目的地から駆けて戻ってきているのが目に入る。



お読みいただきありがとうございました!


良ければ評価やブクマをお願いいたします<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。