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第14話「認められざる魔女」⑧


「ルネッタ、というより、お爺さんの方ね。お爺さんは優秀な薬師の方だったから、その技術を知りたくて引き取ると言ったそうよ。師匠は研究の魔女だった、ってさっき言ったけど、特に――この空間を見れば分かると思うけど、草花から何かを作ることがとても好きだったの」


 だからね、とその説明はそこで区切られる。


 ブリジットは、ルネッタが「薬草の魔女」と呼ばれる理由の一端が分かったような気がした。薬師の祖父に、草花の研究をしていた師匠。なるべくしてなった在り方なのだろう。――もちろん、本人の才能や気質もあってこそ、だろうが。


「私――それとキャシーがこの空間に来たのは、それから3年後ね。私は1年前にグレース様の空間にいたけど、キャシーは直接ここに来たの。だから、弟子になったのは同期ってことになるわね。ちなみにルネッタは6歳で弟子入りしたから、私たちの方が姉弟子なの」


 同期、という単語に、ブリジットはつい「楽しそうだな」と思ってしまう。年の近い同期がいたら互いに励まし合って高め合えるだろう、とつい妄想してしまった。


 そしてすぐに、自分の考えに自分で否定してしまう。


(――いや、駄目かも。()()()に同期がいて、その子の方が優秀だったら、私嫉妬と自己嫌悪でめちゃくちゃ迷惑かけそう……)


 すでに自身への情けなさに少しばかり気持ちが重くなったブリジットは、心を落ち着かせるためにようやくカップに口を付けた。ルネッタが自信満々だっただけある味のおかげで、「美味しい」が心を占める割合の一番上に立つ。 


「……当時はまだ、この空間には師匠やお爺さんと同じように植物や薬が好きな人とか、研究をしたい人がたくさん集まっていたわ。弟子も弟子じゃない人も」


 集まって〝いた〟。レナが懐かしむように口にした言葉は、期せずしてブリジットが少し前に抱いた疑問への明確な答えになる。


「やっぱり、こちらの空間、人がいないんですね。気配がないなとは」


 思っていました、という言葉まで告げずとも、レナは肯定を示すように頷き、こめかみを揉み解した。


「ここからがあなたの質問への明確な回答ね、ブリジット。話は2年前、師匠が病気で亡くなった時のことよ。当時師匠は病気がちで、いつ体調を崩すか分からない状態が続いていたわ。……キャシーが随分心配していてね、どこに行くにもずっと師匠の後をついて回っていたわ」


 両親がついて来てくれたレナと違い、キャシーは一人で魔女の空間に入っている。両親は彼女が魔女と分かった時に殺されてしまった、と当時涙ながらに語っていた。


 そのため師匠のことは、第二の母くらいに思っていたのだろう。


 それでも、運命は残酷だ。


「でも、師匠が倒れた日キャシーはこの空間にいなかったのよね。他の空間の友達に遊びに誘われててね、師匠が心配だからって断ってたけど、師匠がたまには遊んできなさいって言ってきたから、渋々出かけて行ったの。……帰ってきた時に師匠の訃報を聞いた時の取り乱しようは、酷かったわ」


 どうして、何でこんなことに、出かけたりしなければ良かった。


 そんなことを叫んで、髪を振り乱しながら狂乱していたキャシー。その痛ましい姿に、流石にレナも何も言えずそっとしておくしか出来なかった。


「その日、師匠は朝から今日は調子がいい、って言ってたのに、出先の薬草畑で急に悪化しちゃったみたいなのよ。それで、そんな師匠のそばに偶然いたのがルネッタだった。いつもなら誰かしら他にもいたのに、その日は本当にルネッタしかいなかったの。だから、ルネッタが魔女を継いだ。――師匠も苦渋の決断だったんでしょうね。あの子昔からあんな性格だったから。……今の方がひどいけど」


 疲れた、本当に疲れた溜め息を吐くレナ。そんな彼女を労いつつも、ブリジットは1点増えた気になったことについてを問う。


「あの、ルネッタ様のお爺様は今……?」


「ああ、亡くなってるわ。ルネッタが8歳の時だから、今から5年前くらいかしらね。ルネッタにはもちろん、私たちにも優しい人だったわ。――本当に、優しい人ほど早く亡くなるのよね」


 寂しそうな眼をするレナの表情から、本当に優しい人だったのだなとブリジットは予測した。


 そして、そんな優しい唯一の肉親を、ルネッタは8歳という甘えたい盛りに亡くした。ブリジットは自身の、「ルネッタは寂しいからあんな態度になっている」、という推測が正しいことを確信しつつある。


「まあそんなわけで、ルネッタを止められる人が誰もいなくてね。魔女としての勉強は芳しくない、魔力操作も出来ない、しかも弟子の階級も七級のまま。もちろん反対する人は大勢いたわ。でも、『この魔女はあたしの! 絶対譲らないから!』って癇癪起こしてね。他の魔女様たちも何人かは否定してたけど、25人には至らなかったから今に至っても魔女のままなのよ」


 その後、ルネッタを魔女と認められない、もしくはルネッタの態度が気に入らない、と出て行った者が多く出た。


 結局、最後にこの空間に残ったのはレナとキャシーだけになったのだ、と述べ、レナは説明を終える。


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