Deveでの生活1
実験台になる。そう聞けば、なんとなく真っ白な部屋に閉じ込められて、1日3回自動で食事が配膳され、そして一日中何かしらスキルを発動させられる。
今が昼か夜か分からない。今が何時何分何秒なのか分からない。そんな生活を強いられるものだとジンは覚悟していた。カレンのためにできるだけ長く化けていようと決意していた。
しかし、なんだこれは。
ジンは今、温かい紅茶とサクサクのクロワッサンを片手にテレビを見ていた。リビング横にある大きな窓からは健康的な太陽の日差しが差し込む。
「どこから来たのか知らないが、その顔は日本人だな?わしと同じだな」
ラドンが笑いながら向かいの席に座る。おじいさんの匂いがする。決して嫌な匂いではない。
「あの……私はどうすれば?何かこの後やるのでしょうか?」
ジンは恐る恐る聞いた。
「ははっ。なんだい?ラグラスのやつに何か言われていたのか?」
「実験台だと言われてここに来ました」
「ハハッ。あいつ、そんな事を言ったら実験にならんだろうが」
ラドンは笑いながらズレた丸メガネをもどす。ジンは緊張を解かずにいたがこのラドンという人物と話していると自然と力が抜けてしまう。
「実験にならんだろう……ということはやはり私は実験台なのでしょうか?」
「そりゃそうだがな。君には普通に生活して欲しいんだ」
「それはどういうことでしょうか?」
「わしらは今スキルの発令条件について調べてるんだ。第一、第二、第三の術がどういう理由で出現してくるのか。それを調査するために君にも協力してもらうことになる」
「……はい」
「だが、それを調べるためには君に普段通りの生活をしてもらう必要があるんだ」
「それはどうしてでしょうか?」
ラドンは読んでいた新聞をたたみ、優しい口調で説明した。
「条件を揃えたいんだ。例えば君がストレスがかかる環境でたくさんご飯を食べさせられる。そして仮に新しいスキルが発令したとしよう。するとどうだろう?新しいスキルは「強いストレス環境で発令する」のか「たくさんご飯を食べたから発令する」のか分からなくなってしまうだろう?」
つまり特別なことを実験でしてしまったら実験がうまく行えない。だから、カレンには普段通り生活してほしいとの意見であった。
「それでいいのでしょうか?」
「それがいいんだ。頼むよ。カレン。紅茶は苦手だったかな?飲み物なら世界中古今東西いくらでもあるぞ」
ラドンは冷蔵庫から牛乳やらぶどうジュースなどを取り出してきて笑顔で見せてくる。
この男が嘘をついているようにジンには思えなかった。
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