カレンの冒険
「じゃあ、それじゃみんな頼むぞ」
「なんで私まで…」
カレンは最後までドラゴン討伐を渋っていたが、逃げることも難しそうなので嫌々協力することになった。
「……カレンさん……大丈夫です……私の言ったタイミングを守ってくれたら……」
「ほんと頼むわよ!あんたの計算が頼りなんだから!」
必死の形相でカレンがくるみにすごむ。確かに今回の作戦はくるみの計算ありきなところがある。
「くるみ、俺たちはいまから準備に入る。それが終わったら合図をいつでも出してくれ」
「……分かりました」
久東たちのドラゴン討伐作戦が始まった。
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「なんで…•私が…こんな事を…」
カレンは今、ヒナタによってコピーされたもう一つの岩石の後ろに隠れながら【歩いている】。そうコピーされたもう一つの岩石にはジンが付与されているのだ。
「しゃーないやろ、ネーチャン。久東かネーチャンかってなったらネーチャンの方が小さくて隠れやすいんや。作戦成功の確率を上げるにはネーチャンが動くのが一番やで」
「分かってるわよ!分かってるから、協力してるんでしょ」
カレンはジンによって動く岩石の後ろに隠れながら、ドラゴンの目の前を移動する。作戦の第一ステップはヒナタ久藤くるみ達と今移動しているカレン側でドラゴンを挟む位置取りをする事であった。
「あんた、もうちょっと早く動けないの?今この状況で攻撃されたら私たち終わりよ」
「早よぉ、動いたらドラゴンにバレるやろがい。ネーチャンはせっかちすぎるねん。ここは慎重に行こうや」
ドラゴンが少しづつ動く岩石をギロリと睨む。
「ほら!ネーチャンが騒ぐからドラゴンちょっと怪しんどるやないかい!」
「あんたが話しすぎなのよ!黙っといて!」
いったん動くのをやめ、二人はドラゴンが興味をなくすのを待った。長い首を押し曲げて岩石に鼻を近づける。
「ふ……ふぇ、えらいくすぐったいわな」
「声出したら殺すわよ」
「……はい」
数十秒の間、ドラゴンは岩石の匂いをクンクン嗅いでいたが、次第に飽きたのか元の位置へと戻っていった。
「…た、助かったわ」
「今のうちに進んどこうや」
その後もカレンとジンは少しづつダルマさんが転んだのようにドラゴンの目を盗みながら移動を繰り返した。
そして、とうとうカレン側と久東側でドラゴンを両サイドで挟む事に成功したのだった。
「よし!よくぞやってくれた。カレン!」
あとはくるみが作戦開始を見極めるだけになった。
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