陽動
作戦の準備は全て整った。久東はヒナタの背中を押す。
「じゃあ、ヒナタ頼んだぞ。俺たちも後から続くからな」
「くーちゃんが出てこなくてもいいように、私が倒してあげるよ!」
「それが出来たら一番だ」
ヒナタは再びドラゴンの前へと駆け出した。
「もーいっかい、勝負!」
【第一のスキル 火砲】
【第四のスキル 火動】
再びドラゴンとヒナタの激しい撃ち合いが始まった。さっきまでの静寂はどこかへ。ドカンドカンと攻撃がぶつかり合う音が響き渡る。
「くるみ、後はお前が合図を出してくれ」
「……はい」
ドラゴンとヒナタは休む事なく攻撃を続ける。3首を器用に操り攻撃してくるドラゴンから、やはり火野の最強技、巨大な火の玉を作る時間はなかった。
「……もうすぐ……もうすぐ来ます。ですので……あと13秒後です。久東さん、カレンさんの出るタイミング……真ん中ドラゴンが光線を口の中に溜め始めたくらいのタイミング……です……」
「分かった」
久東はドラゴンを挟み向こう側にいるカレン達に手で合図を出す。
「あ〜もうすぐ私行かなくちゃダメなのね」
「くるみの計算が間違ってた事はないから安心せぇや」
「今日初めて会ったのよ。私は」
時間は経過する。くるみの言っていた久東とカレンの役目を果たす時が来た。
「今です……久東さん……」
「オッケー!!!」
久東はその瞬間、岩石から飛び出し、ドラゴン横を一気に駆け出した。と同時に反対方向でカレンも飛び出し、ドラゴン横を走る。
ドラゴンの両サイドを久東とカレンが走っている形だ。
「ホントにダイジョーブなんでしょーね!!くるみーー!!」
久東、カレンは全力で走る。それに当然気づいたドラゴンは両サイドの首がそれぞれ久東、カレンの方を向き、攻撃を始めようと動き出す。
「やっぱり、やばいじゃないのよー!!」
左右のドラゴンが久東、カレンをそれぞれ攻撃しようと動き出した時だった。
{ズドォォォォン}
左右のドラゴンの首元がそれぞれ反対方向に同時に動こうとしたため、ドラゴンは左右に引っ張られる形となり腹を地面に思いっきり打ち付ける形でこけてしまった。
「よし!やっぱりそうだ!三首それぞれのドラゴンは独立している。だから、それぞれ格好の獲物が目の前に現れたらそちらを優先してしまう」
久東の作戦は、左右から同時に陽動者が現れる事でドラゴンの動きを一時的に止める事だった。
「これで10秒以上の隙が作れるぞ!」
ドラゴンが倒れる。おそらく体制を整えるまで数十秒、そしてその後、くるみの計算の隙が10秒くるようになっている!
くるみと久東はおよそ30秒ほどドラゴンから無防備な状況を作り出すことに成功した。
「ヒナタ後は頼んだ!」
後はヒナタが攻撃するだけ、そう思われた矢先、ギリギリの所で、カレンを狙ったドラゴンの攻撃が発射されていた。その光線の規模自体は今までのものと比べて小さいものではあったが。
「ち……ちょっと攻撃きてるんですけど!くるみの計算どうなってんのよ!」
「しまった!ドラゴンのやつ、あまり力をためていない光線でも、カレンなら倒せると思って発射しやがった」
知能があるドラゴンはカレンならこの程度の力で倒せると思い短いインターバルで攻撃を発射したのだった。
くるみの計算では攻撃はこない予定だったが、臨機応変にドラゴンが対応してきたのだ。
「死ぬー!!!」
光線がカレンの目の前に広がる。
【第三のスキル 火壁】
寸前のところでヒナタの防御スキルが発動した。
「危ねぇ!……ナイスヒナタ!」
「し……死んだかと思ったわよ……」
カレンはなんとか急死に一生を得た。
「みんなー、ありがとう!後はヒナタに任せてね!!」
ヒナタは巨大な火の玉を作り始める。ドラゴンは倒れたまま動かない。
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