第17話「好きにすればいいだろ」
◇
誰にでも人に言えない秘密の一つや二つはある。
俺、鈴村龍之介はそう思っているし、俺自身についてもそうだと言える。
クラスの中でも大人しい方の女子、影島アリスと「チートスレイヤーズ」を結成してから三ヶ月ほどが経ち、季節は春から夏へと変わった。
◇
「『 自分のクローンを無限に生み出して、クローンにもその能力がある』ってことかー」
マッドサイエンティストっぽい風貌をしたチート野郎の説明を聞いて、アリスは頷いた。……頷くのはいいけど、理解してんのかこいつ?
「そのスキルであんなに増やしてたんだねー、その変な格好のクローン」
「変な、っ……!?」
愕然とするチート野郎。気に入ってたのか、その服装。
俺達が男の前に姿を現すのと同時に、クローンは全て消滅した。「あらゆるチートスキルを無効化する」俺の力によって。
「あたしもやってみよーっと」
アリスが特に楽しそうでもなくぼやくようにそう言うと、男は訝しげな顔をした。
「『パンデミック・マジョリティー』」
スキルの名前もダサいね、と唱え終わったアリスが呟く。そして、その呟いたアリスのクローンが次々に現れ、彼女達もまた詠唱し……。
「ほらほら、制服JKの集団だよ! ハーレムだよ! やったね!」
同じ笑顔の女子高生に囲まれ、男は狼狽えるばかりだ。自分と同じスキル、しかもアリスのクローンの方が明らかに質が良い。
「たくさんいるけど……どうしよっか?」
クローンを増やしたのはいいけれど、それでどうやってこの男を倒すのか、という所には頭が回らなかったらしい。
アリスの問いに、俺は答えを出す。
「殴るか、蹴るか……好きにすればいいだろ」
女子高生の群れに囲まれた男は、殴られ、蹴られ、生命を使い果たした。
そんな感じで、なりふり構わずに俺とアリスはチートスキル所有者を殺め続けている。
罪悪感を感じていないわけではないけれど、初めてチートを討伐した時と比べると心の動きが薄まってきているような気はする。
それがジャッキーの力によるものなのかはわからない。一度問うてみたけれど、はぐらかされてそれっきりだ。
◇
待機用異世界「バーガーランド」にあるジャクバで、ポテトをつまみながら俺達はジャッキーに任務遂行の報告をする。
一度の報告で俺達は二万円から五万円の報酬を得て、元の世界に帰還する。チート討伐の際に異世界に与えたダメージは、ジャッキーの「オート」の力によって修復される。
元に戻るから壊していいとジャッキーは言うけれど、それが本当なのか確かめる術はない。俺達は同じ異世界に二度行くことはないからだ。
ジャッキー。アリスが葵に貰ったジャクバのぬいぐるみに宿る思念体。
こいつが俺達を利用して何をしようとしているのかはわからない。
いいね、いいね~。どんどん殺って稼いじゃってね~!
けらけらと笑うピエロのぬいぐるみに相槌を打ちながら、俺は叶えたい理想について考えていた。




