第12話「ずっと友達だよ」
◇
いいね、いいね、チートを倒してくれた分だけ世界は美しくなっていくよ~。
「万能」「最強」吐き気がするよね~。なーにが「俺TUEEEE」だよ! スローライフが何なんだよ! 追放されたからどうしたって言うんだよ!
……ふぅ、まぁいいや。
あの二人は今の所うまく動いてくれてるし、このまま行けば……「世界平和」まであと少しだ。
この薄汚いピエロのぬいぐるみとも、そろそろお別れだね~。
……おお、やっと来たね「雌豚」。そっちはうまく行ってるかい?
◇
土日は異世界に呼び出されない決まりなので(おお、バイトっぽーい)、むぅちゃんとデートした翌日はのんびりと家で過ごした。
明けて月曜日、一限目から模試でしたー!
「のんびりしてた昨日のあたしを殺したい……」
「こっちの世界で物騒なこと言うなよお前」
机に突っ伏したあたしの呪いの言葉が聞こえたらしく、クズ村が冷たい声音で諭してきた。
「すみません、鈴村くん」
顔を上げて謝りながら睨みつけると「おー怖っ」と言いながら立ち去った。
学力はねー、「高くはない」ってレベルなんですあたし。ちなみにクズ村はなぜか成績優秀だ。「教科書とか読んでりゃ大体わかるだろ」と言われた時は目眩がした。それなのに、なんで普段はあんなに馬鹿っぽいのあいつ。
「成績はお金で買えないから、嫌いよ」
「勉強……なんて、世界から……消えてしまえばいいのにね……」
むぅちゃんとヒビィが暗い顔をして近付いてきた。あたしは頷いて「ずっと友達だよ」なんて、安い学園ドラマみたいな言葉を吐いた。
三人、手を重ねて微笑み合う。ズットトモダチ! あぁ、舐め合う傷ってあまーい。
「ちょろいよねー! ね!」
明るい声が聞こえてそっちに目を向けると、立ち去ったクズ村の肩をばんばん叩きながら佐伯さんが満面の笑みを浮かべていた。学年トップクラスの才女は、今回もどうやら手応えがあったらしい。
学年トップクラスの才女とは思えない明るい茶髪にツッコミを入れている人を見たことはない。「地毛なんですー」で通してるらしいけど、流石に無理があるでしょー。
ちなみに灰崎くんは模試の途中で保健室に行ったまま、まだ帰ってきていない。真っ青な顔をしていたけど、いつものことなので完全にスルー。「ことわざだったら……、全問ことわざだったら……」と譫言のように言ってたけど、うん、無理だよそれは。
「どうしたんですか? 浮かない顔をして」
いつの間にかそばに来ていたサギーが、お通夜のような表情をしたあたし達の顔を覗き込んでくる。
「いいんですー。勉強なんて、意味ないんですー」
馬鹿な女子高生を演じてみたけれど、
「そんなことはありませんよ。無駄なことなんて、何一つありません」
「ご、ごめんなさい……」
謝ってしまった。現実世界ではとことん弱いあたしだった。
◇
チートスキル「雌豚」を持つ少女、佐伯ルナはその日も「チートスレイヤーズ」鈴村龍之介と影島アリスの観察を続けていた。
二人が「ジャッキー」と呼ぶ思念体の命じるままに、二人の一挙手一投足に目を光らせる。
チートスキル「雌豚」。「愛を得て、愛を失う」その能力はしかし、この教室に於いては通用しない。
「ねぇ、龍之介ー」
絡ませた腕を鬱陶しそうにほどく鈴村龍之介の「静」の力は、この世界でも確かに発揮されていた。
◇
重ねた手が温かい。
迷い込んだこの世界で、初めて「生きる」ことの意味を感じた少女は薄く微笑む。
小森日々子と名乗るその少女は、一人の少女を守ることを自身に誓っていた。
「必ず誰かが助けてくれる」というチートスキル「マリオネットワーク」。
例えその力が使えなくても、私は彼女を--影島アリスを守る。
「ずっと友達だよ……アリスと私は、ずっと……」
◇
模試の出来に一喜一憂するあたし達だけど、それも含めて教室はいつも通り、って感じだった。
「ずっと……ずっと……友達だよ……」
うっとりとした微笑を浮かべて重ねた手を見つめるヒビィは今日も少しおかしくて、可愛かった。




