第11話「お金って本当にいいものよ」
◇
「アリス、お金って本当にいいものよ。お金があればなんでも出来る、ってマフラーを巻いた為政者も言っていたわ」
むぅちゃん、ジャクバでする話じゃないよ……と思ったけれど、活き活きしてる彼女の話に水を差すことは出来なかった。
土曜の午後、異世界のジャクバじゃなくて、あたし達の暮らす尾井萩市にある店舗にむぅちゃんと来ていた。
むぅちゃんこと赤瀬川葵。赤いんだか青いんだかわからない、紫色で「むぅちゃん」だ。呼び名が気に入っているのか、この頃はよく紫色の小物を身に付けている。例えば、今日はヘアピンとか。
「この道を行けば着くのさ銀行へ! でしたっけ?」
「うーん、色々と間違ってるけどその通りだよむぅちゃん。ポテト美味しいねー」
「そうね、原価率から考えてもとっても美味しいわねぇ」
微妙に噛み合わない会話だった。むぅちゃんの家はいくつかのアミューズメント施設を経営しているとのことで、いわゆる普通のお嬢様なのです。
お金持ちであることを隠そうとせず、けれど友達にお金をばらまいたり奢ったりはしない所があたしは好きだ。
「いらっしゃいませー!」
新しい客が入店して、店員さんが笑顔を振りまいている。あたしはそれを見てくすくすと笑った。
「笑ったら可哀想よ」
「ごめん、でも……ふふふ」
「店員さん」こと最近バイトを始めたヒビィは、あたし達を完全に無視してマニュアル通りの接客に勤しんでいた。
◇
「あー、面白かったー」
日の暮れてきた街をむぅちゃんと歩く。お母さんには連絡を入れておいたから心配はしていないけれど、心配されている可能性は大ありだ。花の女子高生、いつどこで誰に襲われるかわからない。……あたしに限って言えば襲ってる側なんだけどね。
「日々子さんも大変ね。お金のためとは言え、休日に労働なんて」
「いや、バイトしてる人はたくさんいると思うよ……」
世俗に疎いというか、いつでもマイペースなむぅちゃんだった。大仰に溜息をついて、
「それでもやっぱり、お金のためですものね。店舗の利益を上げるためにもまた行きましょう。ね、アリス?」
「そうだね。ヒビィは嫌がるかもしれないけど……ふふっ」
入店した時のヒビィの引きつったような笑顔を思い出す。からかいに来たクラスメイトへの対応なんて、マニュアルには書かれてないからねー。
駅近くの踏切を通り過ぎた所でむぅちゃんとは別れた。軽く手を振って、背を向けて家へと歩き出す。
弟も妹もちゃんとした保育施設に預けることが出来たし、お母さんも仕事の数を減らしてから顔色が良くなってきている。
「ジャッキー様様、だなー」
ふと振り返ってみたけれど、むぅちゃんの姿はもう見えなくなっていた。
むぅちゃん、お金はすごいけど、やっぱり怖いよ。あたしはお金を貰う代わりに、人をたくさん殺めてるんだよ。
心の中で声を掛けながら、あたしは誰かに裁かれたいのかな、なんて思った。せんちめんたるー。
◇
げんぶつしきゅ~!
「ひぃふぅみぃ、わーい!」
チート討伐、順調だね~。たくさん倒せば倒した分だけ、お金あげるからね~。アリス、お金は好き~?
「好き! お金好き! ラブアンドマネー!」
裁かれたいのかな、なんて思ったことは数時間でどこかへ飛んで行った。
むぅちゃん、お金って本当にいいものだねっ!
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何卒っ。




