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サンシャワー  作者: おにぎし
15/22

お引越し

スーパーリッチな小柳家の人々とわたしは赤の他人だ。お母さんと小柳さんが愛し合っていることは祝福するけれど、わたしは彼らとは一緒に住めない、そう思っていたのだけどーー。


「慈ちゃん、お願いだから一緒に来てよう!グスグス......。わたしたち、ふたりっきりの親子でしょ?逸郎さんだって、慈ちゃんに来てほしいって......。慈ちゃんと離れたくないぃ〜!」


五十路のお母さんが駄々をこねた。


青葉くんを痴漢と間違えたうえ、彼を全力で投げたわたしは気まずくて仕方がないし、図々しいにも程があるが、このオコチャマお母さんと離れて暮らすとなるととても心配だ。お母さんはわたしがいないとダメな子だから。


わたしは決めた。存在をなるべく消しながら、小柳家でひっそりと生活させていただこう。








「慈ちゃん、待ってたよ」


ドア口にて笑顔でお母さんとわたしを出迎えてくれた小柳さんは、もう仕事に行かないといけない時間らしい。社長業はとても忙しい。


「本当にごめんね、手伝えなくて。代わりに柿田さんに引越しの手伝いを頼んであるから」


小柳さんはそう詫びてから、広いガーデンの緑の海のなかに飛びこむ。


「......二人が来てくれて、とても嬉しいよ」


にこっと笑ってから敷地外までの小道を歩いていった。




柿田さんによる部屋の案内で、引越し業者さんに荷物を運び入れてもらった。


「......慈様、荷物はこれで全部なのですか?」


段ボールの数が涼子様のものと違いすぎるのではーーとこぼす柿田さん。


「わたしあまりモノを持ってなくて......」


「......まあ、引越し作業が簡単でいいですね」


では、涼子様と慈様それぞれのお部屋に案内いたしましょう、と柿田さんが言ってくださるので彼についていく。




「......慈様のお部屋は、こちらでございます」


わたしたちが案内された部屋とはーー。


「まっ!広くて綺麗ね〜!」


わたしは絶句した。「広くて綺麗」......。


わたしの部屋は、部屋というよりリビングのような広さだった。おまけに天井もものすごく高い。そのうえ汚れひとつなく床も壁もピカピカだ。日当たりも良く、南側の壁であるはずの部分が全面大きな窓になっており、小柳家の庭が一面に見渡せる。


わたしは焦って言った。


「こ、こんな部屋、使えないです!」


「なぜですか?どこか気に入らないところが?」


「広すぎて綺麗すぎて、わたしが使うにはちょっと......」


「旦那様はぜひこの部屋を慈様にとおっしゃっているのですが......」


「そうだよ〜旦那様命令だよ〜!」


いつのまにか出現し会話に入ってきたのは、小柳家の次男坊である遥斗くんだ。なぜか柿田さんを後ろからハグしている。


「あら遥斗くん!今日からお世話になります〜!」


お母さんが挨拶した。


「こちらこそ、今日からよろしくお願いします」


遥斗くんは柿田さんから離れてお辞儀すると、にこっと愛想よく笑った。わたしも慌てて挨拶する。


「今日からお邪魔させていただきます」


「慈さん、僕の部屋隣だし、この部屋で決まりね!」


「え、えぇ?」


戸惑っていると、遥斗くんの顔が近づいてきて、こっそり耳打ちされた。


「毎晩、恋バナで盛りあがろうねっ」


キョトンとしていると「誰の恋バナか分かってるでしょ?」というようにウインクされる。


わたしはひとつ頷いておいた。


「......二人はいつのまに仲良くなったの?」


お母さんが不思議そうにわたしたちを見ている。


「ふふ、内緒です!......ってか、慈さんの荷物これだけ?」


「それさっき柿田さんにも言われた」


この何十畳とありそうな部屋のまんなかにぽつんと段ボール数個が置かれている。




広すぎて、慣れるまで落ち着かないだろうなあ、と思った。

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