第8章 : 鉄の疫病
二日目、風向きが変わった。
湿り気と、緑と……そして、金属の疲弊を運んできた。
最初に足を止めたのはヤルンだった。
目にしたもののためではない。
噛み合わないもののためだった。
谷は肥沃で、その緑は頑ななまでに濃かった。川は氾濫の兆しも、干ばつの兆候もなく流れている。畑には今も種が蒔かれていたが、その様子は不規則だった。
まるで、どの畝も過剰な労力を費やして初めて開かれたかのように。
まるで、大地が耕されることと引き換えに、余分な代償を求めているかのように。
ヤルンは、荷車も使わずに手で穀物袋を下ろしている農夫の一人に近づいた。
「道具に問題があるのか?」
そう尋ねながら、作業を指し示す。
男は驚いたように顔を上げた。
一瞬、ためらう。
「それだけじゃない」
ゆっくりと身を起こし、鍬を見せた。
柄はしっかりしていて、手入れも行き届いていた。木にはまだ新しい油が残っている。
だが、接合部――金属が木を抱え込むはずの場所は……まるで開いた傷口のようだった。
鉄は壊れていない。
薄くなっていた。
層を一枚ずつ消費されたように、まるで誰かが無限とも思える忍耐で削り続けたかのように。
そこに残されていたのは、打撃よりも痛ましい静寂だった。
「疫病があるんだ」
男は続けた。
「鉄のシロアリだ」
ヤルンは慎重に道具を手に取った。
顔へ近づけ、一度、息を吸う。
そこにあった。
「そう呼ばれているのか」
呟きながら、鍬の金属の細くなった線を目で追う。
「腐食させるんじゃない……食い尽くしている」
「金属喰らいだ」
そう言って、ヤルンは視線を上げた。
彼らは水車へ向かって進み続けた。
遠目には、無事に見えた。
木造の構造はまだ立っている。羽根も、その接合部にしっかりと収まっていた。
水を滑り台のように水車へ導く、葦と固く締まった土でできた水路も、その形を保っていた。
川の水圧を車輪へ送り込む準備は、まだできている。
何も、壊滅的な被害を受けたようには見えなかった。
近づくまでは。
問題は、目に見える場所にはなかった。
車輪の回転を内部の機構へ伝える金属の軸――水車の心臓部が、跡も、轟音も残さず消えていた。
かつては頑丈で精密だった頭部は、不規則な円筒へと縮んでいた。
使える歯は一つもなく、水の動きを噛み取ることすらできない。
暴力の痕跡はなかった。
激しい錆もない。
ただ、物質だけが失われていた。
ヤルンは慎重に軸を調べた。
その目は、鉱物の疲れ切った線、不規則な円筒、水車の軸が力を失っていった形を追っていく。
「重要なものだけを食われた」
ようやく、そう言った。
そのとき、彼らはそれらを見つけた。
金属の残骸に付着した、小さな黒い形。
どこを見ればいいのか知らなければ、ほとんど見えない。
群れを成してはいない。
襲ってもいない。
働いていた。
鈍い光沢を持つ小さなシロアリたちが、不気味なほどの執拗さで鉄を顎で削っている。
まるで、彼らにとって時間など何の意味もないかのように。
「柔らかな金属を探しているんじゃない」
ヤルンは続けた。
「張力を探している」
羽音は一つも聞こえなかった。
音は、別のものだった。
乾いた、絶え間ない擦過音。
金属板の間で砂が砕かれているような、ほとんど聞き取れない音。
低く、規則的な軋み。
立ち止まって耳を澄ませたときにだけ、それははっきりとした。
みおは、それを理解するより先に感じ取っていた。
耳ではない。
骨を走る、ひやりとした痛みとして。
あの鈍い震動は、空気ではなく物質を伝わっていた。
金属と大地を通して伝わる、低い音のように。
「いつから、こんなことが?」
リエルが空気を測るように尋ねた。
「何度も月が巡ったころから」
谷の女が答えた。
「最初は鋤だった。それから、もう一つ。その後は、水車が一つずつ回らなくなった」
「修理しようとするたびに、あいつらはさらに寄ってくる」
老人が一歩前へ出た。
「百年に一度だ」
そう言った。
「昔の者たちは、そう語っていた。そして、いつもグリモワールが一冊あった……まだ流域を救えるうちのために」
「琥珀色の目をしたエルフが、それを渡してくれた。静かな眼差しの者だった」
ヤルンは顔を上げ、影までの距離を測った。
「なら、まだ余地はある」
それは、皆に聞かせるというより、自分自身に言うような声だった。
「鉄のシロアリは、気まぐれに現れるわけじゃない」
老人が割って入った。
昼の空に浮かぶ月々の淡い痕跡から目を離さない。
「三つが重なったときにだけ現れる。地域を傷つける……だが、生かしておく」
「だから、誰も開き方を覚えていない」
リエルが苦味を含んだ声で付け加えた。
「必要な時が戻ってくるころには、記憶はもう塵になっている」
グリモワールは、ルーンや目に見える呪文によって封じられていたわけではなかった。
その表紙には、大きな硬貨ほどの金属製の円盤が取り付けられていた。
ためらいがちな幾世代もの手に触れられ、使い古された円盤。
そこには、四つの方角を示す矢印が刻まれていた。
円盤の下。
外装にわずかに埋め込まれるようにして、小さな円形の押しボタンがあった。
滑らかで、刻印はない。
「力を求めているんじゃない」
ヤルンは身を屈め、それを見ながら言った。
「耳と……時間を求めている」
「公平な謎解きは、昔から好きだったからな」
ほとんど独り言のように付け加えた。
ライラは外側の機構を、必要以上に長く見つめた。
そして、微笑んだ。
機構は内部のばねによって反応していた。
間違った手順を一つ行うたび、円盤は乾いた、決定的な音を立てて最初の位置へ戻った。
谷の誰も、それを無理に開こうとはしなかった。
文字を読めない者にさえ、警告は明白だった。
封印を壊せば、グリモワールそのものが魔力によって消費される。
ヤルンはそれを両手で取った。
一回目。
空振り。
二回目。
何もない。
四回目。
何かが違うと感じた。
より深い、ほとんど敬意すら感じさせるクリック音。
開いたわけではない。
だが、拒絶でもなかった。
「そこにいるのか……」
ヤルンは呟いた。
機構は容赦しなかった。
ヤルンが正しい方向を一つ見つけるたび、円盤は短く、ほとんど聞き取れないクリック音を立て、すぐに最初の位置へ戻った。
進行は保存されない。
道筋だけが正しいと認められる。
新しい動きを一つ加えるには、それまでの連続した操作を、一度の間違いもなく最初から繰り返さなければならなかった。
問題は、手順ではない。
時間だった。
五秒ごとに、グリモワールは生命力を吸い取っていく。
一気にではない。
暴力的でもない。
最初に訪れたのは、重く、濃密な疲労だった。
その後、彼の手の血管が暗くなり始めた。
ゆっくりとした毒性によって、浮かび上がるように刻まれていく。
一分を目前にして、意識が曇り始めた。
まるで、思考から鋭さが失われていくように。
五回目。
六回目。
……八回目。
ヤルンの肺は焼けるようだった。
それでも、その指は金属から離れなかった。
十二回目。
前腕の腱が、今にも切れそうな縄のように浮かび上がった。
十三回目。
求めている音が、かろうじて聞き分けられる程度になった。
誰であっても、本を手放していただろう。
ヤルンは違った。
十五回目。
ヤルンは目を閉じた。
もう、手が何をすべきか知っていた。
上。上。
下。下。
左。右。
左。右。
ダイヤルの下にある押しボタン。
一度。
何もない。
歯を食いしばり、もう一度、押しボタンを押した。
封印が、澄んだ正確な音を立てて外れた。
まるで、精巧に作られた錠前が、ようやく自分を理解する者を認めたかのような音だった。
ヤルンはグリモワールを手放した。
そして膝から崩れ落ちた。
視界が霞み、胸は激しく上下していた。
内臓を焼くような疲労が、全身を駆け抜けていた。
ライラが反射的に彼へ一歩近づいた。
指が助けようとする仕草の中で強張る。
だが、肩から数センチのところで止まった。
生命力は準備されていた。
内に抑えられ、許可を待っている。
ヤルンは顔を上げないまま、首を横に振った。
ライラは手を下ろした。
必要なかった。
ヤルンは、自分のやり方で勝ったのだ。
運で勝ったのではない。
必要なだけ耐え抜いた。
本は開かれた。
力は、そのまま残っていた。
まだ、それを手に取る勇気のある者の手を待っている。
そして、この谷もまだ救える。
ライラは深く息を吸った。
そしてためらうことなく、目の前に現れた光る封印へ両の手のひらを伸ばした。
グリモワールは儀式を実行するのではない。
ただ、それを明らかにするだけだった。
だが、彼女の手は、内を流れる魔法に導かれ、正確な術式を通してマナを流し込んだ。
マナは、絶え間なく、目に見える安定した輝きへと変わった。
光は攻撃しなかった。
鉄のシロアリが集まっている場所へ集中し、その振動によって、彼らを結びつけていた共鳴を断ち切った。
方向を失った生物たちは散り、金属の張力が集中する場所から離れていった。
儀式が終わると、鉱物には残留する輝きが染み込んでいた。
数十年にわたって新たな群れを妨げる、ほとんど感じ取れない残響。
永遠の解決ではない。
勝ち取った時間だった。
封印の最後の線が消えると、谷は息を潜めたように静まり返った。
しばらくの間、誰も動かなかった。
やがて、ゆっくりと。
川は、新たな障害もなく流れを取り戻した。
シロアリは、もういなかった。
死骸も、逃げた痕跡も見つからない。
ただ群れることをやめ、加工された鉄が彼らを呼び寄せない場所へ散っていっただけだった。
金属には淡い光が残っていた。
ほとんど気づかないほどの光。
まるで、起きたことを覚えているかのように。
水車は静止したままだった。
だが、もう開いた傷口ではない。
水は流れ続けている。
あとは、再び役に立つ時を待つだけだった。
ヤルンは鋭い目で軸を調べ、頷いた。
「これなら」
「手入れをすれば、また回る」
谷の鍛冶職人の肩が、ようやく沈んだ。
何度も月が巡る間、背負い続けていた重荷から解放されたのだ。
「部品を交換できます」
男は答えた。
「そして、次の季節が戻ってくる前に、新しいものを補強します」
「それで十分だ」
ヤルンは言った。
「残りは仕事だ」
老人は頷いた。
それ以上の説明を求めることはなかった。
ヤルンは仕事を終える者のように慎重にグリモワールを閉じ、長い水車小屋の机の上へ置いた。
「これは武器じゃない」
そこにいる者たちを見ながら言う。
「記憶だ」
二人の若者を指し、それから谷の鍛冶職人へ視線を向けた。
「覚えろ」
「羊皮紙を持ってきてくれ」
そう付け加える。
「俺が手順を書き留める。何十年もの間、誰もこの本を開いていなかった。自分たちだけで覚えようとすれば、まるで空気そのものを肺から引き抜かれるように、生命力を吸い取られる」
「もう一度、緊急になる前に教えるんだ」
風に向けた約束はなかった。
ただ、鉄のように重い頷きだけがあった。
彼らは夜明け前に出発した。
土地がまだ眠っているうちに、北の道へ入った。
痕跡も、印も、名前も残さなかった。
残したのは、一つ減った問題と、彼らに依存しない一つの教訓だけだった。
ヴィンドダルルを離れるとき、みおは一瞬、足を止めた。
それは思考ではなかった。
直感だった。
見えない一本の糸が張り詰めるような感覚。
低地から来たものではない。
直近の過去から来たものでもない。
北からだった。
そして、それは小さなものではなかった。
みおは霧に覆われた丘陵へ顔を上げた。
「リョーセング」
小さく呟く。
リエルは尋ねなかった。
エイナルは歩調を整えた。
ヤルンとライラは並んで進んでいた。
首都へ向かう道は、まだ開かれている。
だが今は、それとは別の何かが、彼らを待っていた。




