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銀の糸  作者: Sato Tekawana
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第5章 : 汚染された核 (2)

ネットワークの脇へ視線を向けたとき、彼女はその姿を見た。

まるで、虚無そのものから現れたかのようだった。

ひとつの人影が、こちらとは反対の方向へ進んでいた。

静寂に生じた歪み。消し去られることを拒む記憶のような存在だった。

そのスーツは、深い鉛色をした第二の皮膚のように身体に密着していた。

緑色の線が淡い輝きを放ちながら脈打ち、ネットワークの光を吸収していた。

長い髪は黄金の糸となって流れ、動くたびに赤いオーラを放っていた。

その姿は、あらゆる論理に逆らうほど正確に宙を漂っていた。

ひとつひとつの仕草が計算され尽くしているかのようで、現実離れしていた。

みおは、その姿を目で追うことさえ、ほとんどできなかった。

そして、瞬きをする間に、その人影は光の糸へと分解された。

ネットワークに取り込まれ、やがて沈黙へと変わっていった。

みおは、共鳴の広域層を後にした。

意識のすべてを、腐食を内包する特定の焦点へと集中させていく。

遠くで脈打つ、病んだ太陽のような存在。

それは、注意を向けるよう彼女に迫っていた。

みおは理解した。

ただ封じ込めるだけでは足りない。

歪みの中心そのものへ、さらに深く入り込まなければならない。

そして、それを浄化できるのか。それとも、内側から破壊するしかないのかを決断しなければならなかった。

みおは核にたどり着き、手を伸ばした。

触れた瞬間、光が檻のように開いた。

その内側にあったのは、清らかで調和の取れた空間ではなかった。

あらゆる方向へ張り詰めた、結び目だらけの糸の塊だった。

ある糸は自分自身に絡まり、別の糸は暗闇の中へ消えていくほど遠くまで伸びていた。

多くの糸が不規則な脈動に震えていた。

まるで、それぞれが、もはや元には戻せない何かの断片を支えようとしているかのようだった。

それは壊れた織物だった。

どんな運命の力をもってしても解きほぐせない、ひとつの毛糸玉だった。

その混沌のただ中、結び目の間から、半透明の霊的な存在が浮かび上がっていた。

その顔には、郷愁と、どこにも属せない感覚が滲んでいた。

まるで、自分が人生のどこにいたのかさえ忘れてしまったかのように。

無数の糸がその存在を縛りつけ、逃げることを許さなかった。

同時に、それらは光の牢獄の中で、その存在を生かし続けてもいた。

みおの周囲に、ひとつの存在感が広がった。

ミサオだった。

そのエネルギーがみおのものと絡み合い、ネットワークの不規則な脈動が、次第に和らいでいった。

存在を縛っていた糸は、互いに反対の方向へ張り詰めることをやめた。

初めて、それらはひとつのリズムに応えるかのように見えた。

みおは近づき、その存在を両腕で包み込んだ。

ネットワークの冷たさが、人の温もりへと変わった。

鋭く、壊れそうな温もりだった。

それは別れの抱擁ではなかった。

最後の交わりだった。

みおは自分の静けさを差し出し、その代わりに、あまりにも長い間、誰かを待ち続けていたため息の重みを受け取った。

糸が緩んだ。

霊的な存在は光のきらめきとなってほどけ、ついに解放された。

歪みが消散し、光は自らの内側へと収束していった。

部屋では、みおが核へ入り込んだ瞬間、アルカナ・ログの表示値が混沌としたパターンを描きながら急上昇した。

共鳴の波形が、あり得ない規模の地震を測定しようとするかのように広がった。

あらゆる記録を超えるエネルギーの急上昇。自らの上へ折り返す波動。測定尺度そのものを破壊するかのような周波数。

アレクサンドラは拳を握りしめ、息を殺していた。

一方、ゾヤは図表から目を離さなかった。

そして、少しずつ、測定値が下降し始めた。

波動は安定し、ピークは和らぎ、中心にあった歪みが消えていった。


「成功した……」


ゾヤはささやき、切断作業を開始した。

パルスケーブルが一本ずつ消灯し、みおが目を開いた。


「ひとつ、仮説があるわ」


ゾヤは記録を見つめたまま言った。


「ミサオが、あの存在の霊的な周波数と、あなたの周波数を同期させる手助けをしたのかもしれない。その調和が、あの存在を孤立させていたパターンを崩したのでしょう」


彼女は口を閉ざし、しばらくしてから続きを話した。


「以前、ひとりの科学者が姿を消したの。痕跡は何ひとつ見つからなかった。私たちが見たものが彼女の魂だったのか、意識の残滓だったのか、それともネットワークが保存していた何かだったのか、私にはわからない。でも、もし何らかの関係があるのなら……」


ゾヤは言葉を止めた。

記録を見ても、もはや答えは得られなかった。

ミサオが、みおの心に語りかけた。


<歪みがあなたを超えるとき、私はそこにいる。あなたを安定させるために>


<だから、前へ進める。あなたはひとりで背負わなくていい>


胸を打たれたみおは、ただ答えた。


「ミサオ……そばにいてくれてありがとう。自分をどう支えればいいのかさえわからないときも。過去が消えてしまっても、私の心はまだ、誰かのために鼓動を刻めるのだと教えてくれる。千の命をあなたに負っているわけじゃない。私が前へ進む勇気を、あなたに負っているの」


「あなたが私のためにしてくれること……それは、どれほど測ろうとしても測りきれない」


その後、みおは声に出して言った。


「ゾヤ……あなたの言ったことは正しいわ。ミサオが一緒にいてくれた」


その夜、三人は質素ながらも、安堵に満ちた夕食を共にした。

笑い声や、途切れ途切れの会話を交わしながら、彼女たちは見つけたものと、力を合わせて成し遂げたことを祝った。

もう、通路を徘徊する構造体はいなかった。

そこに残っていたのは、長い間忘れられていた、穏やかな場所の沈黙だけだった。

初めて、その場所は平穏を取り戻したように思えた。

食事の間、アレクサンドラは何の遠慮もなく笑うことができた。

ゾヤは相変わらず控えめだったが、その眼差しには誇らしげな輝きが浮かんでいた。

みおはといえば、身体が軽くなったように感じていた。

同期の重圧が、新たな安らぎへと変わったかのようだった。

一週間が過ぎた。

アルカナ・ログの測定結果は一貫していた。

みおの脈動は安定しており、接続ノードにも、もはや歪みの兆候は見られなかった。

すべての結果が、彼女の帰還の準備が整ったことを示していた。

右手の指輪が、淡い光を放ち始めた。

最初はひとつの小さな閃光だった。

やがて、それは空中へと伸びる赤い糸へ変わり、目に見えない鼓動に合わせて、穏やかに震えた。

赤い糸は、贈り物でも、物体でもなかった。

それは、みおの一部が後に残るということだった。

二人だけが感じ取り、つなぎ留めておくことのできる絆だった。


「これで、私たちは同じ周波数にいるわ」


みおは言った。


「もし理由もなく寒気を感じることがあったら、それは私の魂が、境界の向こうからあなたたちを呼んでいるということよ」


みおは頷き、涙をこらえた。


「ありがとう、ゾヤ。ありがとう、アレクサンドラ。ここまでたどり着くまで、本当に素晴らしい旅だったわ」


彼女は、震える笑みを浮かべながら言った。

その言葉は、最後に交わした抱擁のように、空中に残り続けた。

みおは目を閉じ、ヤルンと自分を結ぶ糸を引き締めた。

それは目には見えない一本の糸だった。

彼女の呼びかけに応え、指先の下で目覚める弦のように震えた。

空気が震撼した。

部屋は奇妙なざわめきに満たされた。

まるで、世界の目に見えない糸が、一斉に張り詰めたかのようだった。

周縁から光がゆっくりと消え、空間は深く、静かな黒い虚無へと沈んでいった。


「どうやら、お別れの時間のようね」


ゾヤは穏やかな笑みを浮かべて言った。


「さよならじゃないわ」


みおは答えた。


「またすぐに会いましょう」


やがて、虚無が開いた。

みおは一歩を踏み出した。

その名を必要としない何かを、胸に抱いて。

そして、約束が霧の中へ溶けていく一方で、別の場所では、アイナルの運命が新たな糸を紡ぎ始めていた。

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