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銀の糸  作者: Sato Tekawana
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第4章 : 忘れられた武器たちの歌 (1)

ディープヘラルは旅人を迎え入れる場所ではなかった。旅人を試す場所だった。低地の空気は重く、あまりにも狭い峡谷に閉じ込められていて、太陽がそこに触れるのは正午だけだった。一歩ごとに石壁へと足音が響き、古き戦いの残響を増幅させる。今なお錆びた剣の金属の中で震え続ける、遠い戦いの記憶。その剣々は岩の裂け目から突き出していた。ここに棲む小さな獣たちは、もはや動物ではない。待ち伏せに適応した捕食者だ。足場から足場へ跳び移り、ひとつ足を踏み外せば、深い盆地の忘却へと落ちることになる。

みおは慎重に進んでいた。その身を導いている本能は、彼女だけのものではなかった。ミサオは第三の目のように、ほんのわずかな予兆の震えだけで、みおが死を避けるのを助けていた。それは視覚ではない。絆だった。ときには声なき囁きだけで十分だった。胸に触れるかすかな圧力。説明することのできない確信。みおの身体は、まるでもうひとつの意識が自分の内側で呼吸しているかのように反応した。そして毎晩、火を灯すたびに、誰かが自分の傍らを見守っているように感じた。上からでもない。遠くからでもない。ただ、内側から。

夜は澄み渡っていたが、みおは火を見ていなかった。星を見ていた。答えを探す者のようにではなく、口にすることのできない記憶を予感する者のように。

ミサオの気配が、みおの核の中で震えた。静かに、そして注意深く。ふたりは旅の日々を共有してきた。簡単な決断を、心地よい沈黙を。親密なものではない。痛みを伴うものでもない。だが、その夜、何かがほんの少しだけ、本来あるべき場所からずれていた。みおが息を吐くと、空気まで彼女とともに止まったように思えた。

そして、胸の内側で、ミサオの声が古い真実のように響いた。


<みお、力だけでは足りない。帰る場所が必要なの>


みおは答えなかった。まだ地面に触れていない雪のように、その言葉がゆっくりと降りていくのを受け入れた。少しして、今度はもっと近くで、その律動が戻ってきた。


<エイナルはあなたのことを心に留めている。思い出しているんじゃない。待っているの>


みおは胸に手を当てた。自分の内側と、寄り添う気配をつなぐ鼓動を感じながら。


«どうしてエイナルは私を心に留めているの? 私は彼にとって、何なの?»


答えは静かに届いた。音もなく。顔を必要としない微笑みのように。


<私の小さな子……彼自身に言ってもらったほうが、もっと面白いとは思わない?>


みおは微笑んだ。あからさまな喜びではない。長い間忘れていた何かが、初めて「ここにいたい」と思わせてくれるときに生まれる、そんな種類の幸福だった。

夜明けは乾いた風と、ミルヘルの屋根々から聞こえるざわめきを伴って訪れた。家々は低く、黒い石と風に晒された木で造られ、風によって形を変えられていた。

みおは村の境を越えた。広場では、ひとりの老人が石のベンチから彼女を見つめていた。その歩き方に何か奇妙なものを読み取ろうとするように、眉をひそめている。老人の目は、若い女の右手に必要以上に長く留まった。暗い爪。自然な長さよりわずかに長い。そして、完全には人間のものではないかのように光を捉える、かすかに鱗立った皮膚。

みおは建物の輪郭を目で追いながら、周囲の様子を慎重に測った。


「誰かを探しているのか?」


老人は掠れた声で尋ねた。


「ヤルンを探しています。ここに住んでいると聞きました」


みおが答えた。


「ヤルン、か?」老人は、あの奇妙な腕を横目で見続けながら、地平線を指した。「苔すら生えなくなった崖の縁に住んでいる。騒がしいのは嫌いだが、何か直したいものがあるなら……あいつなら、どうすればいいか分かるだろう」


炭で汚れた手をした若者が近づいてきた。彼もみおの手に気づいたが、それについて口にしない礼儀を持ち合わせていた。


「ヤルンは武器を鍛えるだけじゃない。武器の声を聞くんだ。あいつは、どんな刃にも記憶があり、金属もまた忘れることができるって言ってる」


みおは小さく頭を下げて礼を言った。だが、その瞳には希望に似たものが宿っていた。

ふたりは崖へ向かって歩いた。そこでは石がより冷たく、空気が古い槌音の残響で震えていた。

突然、扉が勢いよく開いた。まるで小屋の刃そのものが、みおの携えている本質に応えたかのようだった。

玄武岩のように黒く粗い髭には古い灰が筋となって走り、長い三つ編みを垂らした魔法使いのドワーフが出てきた。その姿には、歩くことを決めた山のような揺るぎなさがあり、まるでその振動に呼び出されたかのようだった。瞳は電光のような青に輝き、みおの腰帯に向けられた。その瞬間、冷たいエネルギーの脈動が腕の毛を逆立たせた。あの金属を、ほかの何かと見間違えるはずがなかった。

ほんの一瞬だけ、彼の視線が色の変わった腕に触れた。皮膚は濃密な影へと溶け込み、その先は黒曜石のように暗く、硝子質の爪で終わっていた。

見た。

理解した。

そして、驚きの色ひとつ浮かべずに無視した。

彼もまたウルフベルフトを持っていた。そして彼の剣は、みおの剣を認識していた。あり得ない残響を認めた者の熱に、彼の瞳孔が輝いた。ひとつひとつの筋肉、ひとつひとつの動きが、鉱物の共鳴と重なっているようだった。ふたりの間の空気は固有の鼓動で脈打っていた。まるで小屋そのものが、彼らを結ぶ火花を前に息を潜めているかのように。


「それを見せてもらえるか?」


ヤルンが驚くほどの身軽さで前へ跳び出しながら求めた。

みおは剣を抜いた。空気が引き伸ばされたように感じられた。まるで、その瞬間の緊張を内包しているかのように。


「忘れられたすべての刃に誓って……これも祖代の一本か」


みおは一歩後ろへ下がった。刃の青い輝きが彼女の顔を染める。

そこで依頼を思い出し、陶器の瓶を両手で差し出した。


「ライラに、これをあなたへ渡すよう頼まれました」


ヤルンは挨拶すらしなかった。自分と同じ血の痕跡を嗅ぎ取った狼のように、みおの周囲を歩き回っていた。金属を見ているのではない。ふたりの間の空気を震わせる唸りを聞いていた。それは、自らの魂を呼び戻そうとする残響のようだった。

彼には分かっていた。みおが「あの者たち」のひとりだということは。だが、どの者なのかまでは分からなかった。

みおは新たな静けさを、ほとんど氷のような落ち着きをもって柄を握った。彼女の目は、それまで持っていなかった分析的な速さで室内を駆けた。


「これは知性のウルフベルフトです」


みおが告げた。その声は震えていなかった。


「これを握ると、戦場の混沌が頭の中で整列します。ひとつひとつの動きが、敵のひとつひとつの過ちが、糸のように見えるんです」


ヤルンはぴたりと動きを止めた。鍛冶の煙に鍛えられた瞳が、苦い理解の光を帯びた。


「見つけたのか……」


唸るように呟き、刃に触れることなく、その手を近づけた。

みおはゆっくりと瓶を下ろした。緊張が落ち着くのを待つように。


「助けてほしいんです。ライラが、この瓶に伝言を入れてくれました」


ヤルンは彼女をじっと見つめた。粗野な男ではあったが、その視線には静かな献身があった。彼女は、自分の秘密以上に彼が大切に守っている、唯一のものだった。


「瓶なんか持たずに来たとしても……俺は同じように助けていた」


そう呟いて背を向けた。


「彼女に頼まれたからじゃない。お前だからだ。それで十分だ」


ヤルンは古い書物の並ぶ棚へ向かった。強迫的なほど探し続けた末、手の下で脈打っているように見える革巻きを取り出した。粗く節くれだった手とは対照的な繊細さで、それを金床の上へ広げた。

みおは身を屈め、読み始めた。


⟦

意志のウルフベルフトは、握られた瞬間に{覚醒}へと到達する。

そのとき、持ち主の精神には、他者の影が入り込むことも、いかなる呪いがその心に根を張ることも許されない。

この刃は弱き者を守らない。絶対的な決意を求める。

だが、注意せよ。

ウルフベルフトの飢えは果てしない。

その光を与える代わりに、お前の息を飲み込むだろう。

ᚠ イヴァルディ

⟧


羊皮紙は、まるで秘密を守るかのように巻き戻された。

ヤルンはため息をついた。それは、何年もの疲労を引きずる重い音だった。


「この身体を見てみろ、小娘。あるはずのない傷跡でいっぱいだ。どんな呪いも俺を腐らせることはできなかったし、どんな影も俺の判断を砕くことはできなかったからな。意志の剣が俺を揺るがないままにしてくれる。空気が黒魔法で満たされ、他の者たちが恐怖や支配に膝をつくときもだ。何度も死の安息を拒まれてきた。もう自分が人間なのか、それとも闇に耐え続けるただの金床なのか、俺には分からん」


彼はみおへ近づいた。守る者としての温もりを帯びた気配で、彼女の領域へ踏み込む。


「ライラから、再生の薬と浄化の薬の作り方を教わった。それがなければ、二、三度戦っただけで剣に食い尽くされる。イヴァルディの鍛造は、お前を無敵にはしない。お前の本質と引き換えに、永遠にするんだ」


彼は黙った。自分の言葉の重みを測るように。


「エルドフィヤラの忘れ去られた一角で、それを見つけた。ひとりきりで、飢えていた。共にいた者たちと、それを回収したんだ。普通の剣と同じように使うことはできた。だが、誰にもその真の力を目覚めさせることはできなかった」


みおは黙って聞いていた。


それから、自分のドンを説明した。{サスペンデッド・ビジョン}。


「ヤルン。これは時間を引き伸ばせます」


みおが言った。


「世界が濃密になるんです。まるで水の中を歩いているみたいに。空気に走る亀裂が見える。現実が壊れようとしている場所が見える……そして、そのときは、ただ私が先に壊します」


さらに、テンセルの指輪と、胸に宿るその力の根である欠片についても話した。


「軽いドンじゃありません」


みおは重々しく付け加えた。

「どれも、まだ私が支払い方を学んでいる代償を求めます」

ヤルンはゆっくりと頷いた。口を開く前に沈黙がさらに濃くなった。まるで、言葉をひとつひとつ慎重に選んでいるかのようだった。


「もう一本、ウルフベルフトがある」


ようやく彼は言った。


「あの剣は……」


顔を上げる。その瞳を、古い影がよぎった。


「首都で保管されている」


ヤルンは確かな口調で続けた。


「何世代にもわたって、その血筋は散り散りになり、選ばれた血を見分ける者はいなくなった。剣はそこに残され、自分が所有していると信じる者たちの手に鎖で繋がれている。だが、正しい血統がなければ、ただの冷たい金属だ。それでも、あれを求める者たちは現れる。決して応えないと知りながらな」

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