第4章 : 小さな手、大きな仕草 (1)
みおは柱に身体を預けるように崩れ落ち、動かすことのできる唯一の手で腕の傷を押さえた。血はもう噴き出してはいなかったが、引き裂かれた肉の空洞が、彼女を眩暈に襲わせていた。震える指で、歯も使って栓を引き抜き、傷口に中級治癒ポーションを注ぎ込んだ。
効果は即座に、そして激しく現れた。出血は収まったが、露出した筋肉に液体が触れた瞬間、彼女は痛みに息を漏らした。
それは、焼けつくような応急処置だった。
見えない魔力の糸が内側から皮膚を縫い合わせ、傷口の縁を結びつけ、粗く熱を持った傷痕へと変えていくのを感じた。
安堵は訪れた。
だが、それは脆い均衡だった。
本当の治癒ではない。
ただ純粋に耐えているだけだった。
今のみおの身体は、立ち続けるためだけに施された継ぎ接ぎの地図になっていた。
<あなたが、みおなのね>
ミサオが言った。
その声は今や柔らかな囁きで、共有された記憶から生まれているようだった。
みおは戸惑いながら瞬きをした。
ここ数分の出来事は、ぼやけた染みになっていた。
禁じられたドンが、炎が紙を焼き尽くすように、彼女自身の記憶を食い尽くしたのだ。
彼女のアイデンティティ――自分が何者であるかという核だけは、まだ無傷だった。
だが、かつてそこにあった名前や顔は、消え去っていた。
<エイナルがあなたのことを話してくれた。あなたの名前を私に教えてくれたのも、彼だった>
ミサオの確かな声が、みおの内側の冷気へ、温かな熱となって染み込んでいった。
<私がしたのは、あなたの核に私の魂を絡ませること。今、あなたの生命力とマナは広がっている……たとえ、かつての私があなたの中で消えていくとしても>
みおは息を呑んだ。
エイナルという名前が、あの奇妙な存在の口から発せられた。
その言葉は、温かな糸のように彼女の中を貫いた。
どういうわけか、その共鳴が、ポーションが腕を繋ぎ合わせたよりもはるかに深い場所で、彼女の胸の内側を縫い合わせているように感じた。
知らない。
その名前にまつわる記憶はない。
それでも、彼女の内側の何かが、その言葉には無視することのできない重みがあるかのように震えていた。
<どうして……ここまで来たの?>
ミサオが尋ねた。
その声には、かすかな困惑の糸が混じっていた。
みおは視線を落とした。
迷っているからではない。
その問いが、彼女の記憶がほつれていく場所に触れたからだった。
「指輪……テンセル」
みおは囁いた。
それを身につけている指を、かすかな熱が走った。
「武器を投げると、それと私を繋ぐ糸が限界まで張り詰めて、世界が瞬きをする……そして、気づいたときにはそこにいる。あの場所に」
親指で金属に触れた。
「私のことを認めてくれる……まるで、最初から私のものだったみたいに」
わずかな間を置いた。
「でも、それがいつから私のものだったのかは、思い出せない」
「でも、その力を何の代償もなく与えることは決してない」
息を止める。
その声の調子が、より重くなった。
「別の誰かと自分の場所を入れ替えるには、血の代償が必要なの。指輪は危険に、絶望に応える……そして、その奇跡の代わりに、私の記憶に住んでいた人たちの痕跡を消していく。私のドンも、その使い方も消さない。ただ、人だけを……そして、その人たちと私を繋いでいた糸を。誰かが、私を渡らせるほど大切だった。その確信だけが残る」
部屋の沈黙は重くなった。
息をするだけでも痛む真実を、その静けさが抱え込んでいた。
やがて、内側でミサオを感じながら、みおは低い声で言った。
「それから、もう一つ知っておいてほしいことがある」
彼女は胸に手を置いた。
まるで、見せることのできない何かに触れるように。
「ここに欠片が埋め込まれて、それ以来、私にドンを与えている」
そして、教訓などを許さない真実を明かす者のように、静かに語った。
「私の視界も同じ仕組みなの。眠ることのないドンで、世界の亀裂がどこにあるのかを囁いてくる。私がそう決めたとき、現実に息を止めさせることができる」
短い間を置いた。
「私の目の中の円が回る……すると、時間が明瞭になる。ほとんど触れられるほどに。数秒の間だけ、私はすべてを見ることができる。すべてに触れることができる」
その唇が、ほんのわずかに震えた。
「そのあと、闇が戻ってきて、私を連れ戻す」
ミサオはすぐには答えなかった。
<そこまでとは思わなかった>
みおの言葉が、空っぽの部屋に残る反響のように、彼女の中でまだ響いていた。
一つの境界を越えていた。
そして今、ここにいる。
<私……あなたがここまで来ていたなんて、知らなかった>
その残響が震えた。
恐怖ではない。
驚きだった。
そしてミサオは、明白なことを理解した。
みおが話しているのは、人物ではなく、繋がりについてだった。
誰と場所を入れ替えたのか、彼女は覚えていない。
禁じられたドンは、名前以上のものを消していた。
彼女の繋がりそのものを引き裂いていた。
その空白の中で、ミサオは理解した。
自分が、みおにはもうない記憶にならなければならない。
<エイナル……>
その声は途切れかけた。
それでも、確かな一本の糸に支えられていた。
<あなたが忘れた名前は、エイナル>
<彼は、あなたを待っている>
その名前は、再び燃え上がる傷痕のように、みおの中へと道を開いた。
どこから来るのかも分からない痛みを、思い出させるように。
彼の記憶は残っていない。
それでも、彼女の内側の何かが、否定することのできない強さで震えた。
<そして私には……もう身体がない>
<残っているものだけ>
<一つの反映。一筋の意識>
ミサオは、まるで自分自身も何かを思い出しているかのように、間を置いた。
<あなたを助けられる。力ではなく、封印でもない>
<でも、感じ取ることはできる>
<あなたが届かない場所を、あなたの代わりに感じ取ることができる>
その言葉は、石の間を流れる水のように滑り込んだ。
<あなたがダンジョンに入ったのなら……そこから出るのを、私に手伝わせて>
二人の間に沈黙が降りた。
それは、休戦のようだった。
そして、声ではなく意思だけを使った囁きとともに、ミサオはみおを導き始めた。
二人はダンジョンを出て、宿営所へ向かった。
そこなら、ポーションがかろうじて保っている身体を回復させることができる。
空気は静止していた。
まるで世界そのものが息を止めているかのようだった。
みおは進んでいた。
だが、もう歩いてはいなかった。
折れた意志だけで、身体を引きずっていた。
失った腕。
一日の重み。
不在。
そのすべてが、彼女を地面へと押しつけていた。
そして、彼女は倒れた。
その内側には、ミサオがいた。
身体ではない。
ただの残響として。
それを聞けたのは、みおだけだった。
「置いていかないで……」
<決して置いていかない>
ミサオは言葉を使わずに答えた。
それでも、みおには、包み込まれたかのように感じられた。




