第3章 : 絶望の中で結ばれた契約 (4)
エイナルは、核が崩れ去った場所へ視線を落とした。
木の残骸や魔力の残滓があると思っていた。
だが、そこにあったのは不自然な虚無だった。
レスェンの死によって影が散ることはなかった。
影は、集中していた。
警告を叫ぶより早く、休息の時間は破られた。
不気味な姿が暗闇から現れた。
誰かがやって来たというより、最初からそこにいて、静寂を待っていたかのように。
その動きは物理法則に逆らうほど速かった。
黒い瞬きが、開けた空間を横切った。
その人物の手がゾルベルの手を掴んだ瞬間、若きエルフは鋭い呻き声を漏らした。
それは唐突に途切れた。
まるで肺の中の空気まで、その異形に吸い取られたかのように。
凍りついた一拍の中で、彼のトリケトラの輝きが消えた。
残ったのは、肌に刻まれた灰色の死んだ印だけ。
その目から知性が失われた。
二つの目は濁ったガラスの井戸へと変わり、身体が凍った地面へ鈍く、決定的な音を立てて叩きつけられた。
ミサオは叫ばなかった。
咆哮した。
その突進に技術はなかった。
古い本能だけだった。
人間のものとは思えない怒りで、その姿へ駆けた。
衝突は凄まじかった。
力と力がぶつかり、柱が震える。
衝撃が雷鳴のように響いた。
ミサオの身体が吹き飛ぶ。
石へ叩きつけられ、そのまま音もなく倒れた。
指の間から命がこぼれ落ちていく。
次の瞬間。
仮面の人物がカルドロスの目の前に現れた。
近すぎる。
その指が彼の首へ食い込み、吸収が始まる。
静寂は、叫びに喰われた。
だが、その叫びさえ、自らの力の中で飲み込まれていった。
エイナルは凍りついた。
追うことができない。
まるで時間そのものが、その異邦人の通過に合わせて屈し、歪んでいるかのようだった。
そして、彼は動いた。
恐怖に突き動かされ、ミサオへ向かって駆ける。
彼女は膝をつき、息を切らしていた。
エイナルが彼女に触れる。
彼女が顔を上げた。
二人の目が合う。
その瞬間、空気が濃密になった。
淡い霧が地面から湧き上がり、二人の足首を包む。
ゆっくりと上昇していく。
まるで石の下で何かが目を覚ましたかのように。
空気が震えた。
張り詰めている。
まるで世界の糸が限界まで引き伸ばされているかのようだった。
岩と霜の柱がぼやけ始めた。
もはや廃墟ではない。
目の前で組み替えられていく織機の一部のようだった。
天井が消える。
その代わりに、虚空に吊るされた糸が現れた。
そのうちの一本が輝き始める。
赤。
ため息のように細く、約束のように張り詰めた糸。
それは二人の間へ伸びていった。
まるで世界が、二人を選んだかのように。
赤い糸が、もう一度震えた。
そして、エイナルが消えた。
その場所に、みおがいた。
霧が彼女たちの周囲で渦巻く。
世界が息を止める。
ミサオはみおの目を見つめた。
「私たちの魂を結びつけなければならない。今すぐに。もし受け入れてくれるなら……これから来るものに立ち向かうために、まだ立っていられるかもしれない」
みおは迷わなかった。
記憶を覆う混乱の薄い膜があったとしても。
策略も、説明も考えなかった。
彼女の魂は、心が理解し終えるより先に、すでに選んでいた。
「うん」
彼女は囁いた。
手を伸ばす。
ミサオがその手を取った。
ミサオが短い詠唱を漏らした。
古い言葉が、見えない糸のように震える。
空気が張り詰めた。
みおは核の中に激しい脈動を感じた。
自分のものではない存在。
それなのに、今は彼女の内側で燃えている。
二つの魂。
一つの繋がり。
部屋が震えた。
師の目が閉じられる。
突然、みおは自分自身の皮膚の内側で、もう一人きりではなくなった。
それは詩的な融合ではなかった。
ミサオが彼女の領域へ侵入していた。
魂の結び目は契約ではない。
生身の肉へ施された移植だった。
それは、純粋な恐怖だけで彼女を震えさせた。
炎のような髪を持つ若きエルフの心臓は、まるですでに始まってしまった戦いを告げるかのように轟いていた。
彼女はその場へ現れた。
感覚を研ぎ澄ませて。
その場所について何も知らない。
ただ、空気に漂う消えない恐怖だけを感じていた。
視線を巡らせる。
共鳴に任せ、あらゆる異変を捉えようとする。
眼の円環の中で何かが震えていた。
濁った、溢れ出すような深紅の輝き。
彼女は {サスペンデッド・ビジョン} を発動しようとした。
濃密な闇の中と、その前に輪郭を現し始めた仮面の人物を見分けようとする。
世界を引き伸ばそうと力を込めた。
だが、乾いた衝撃の方が先に届いた。
転位によってまだ噛み合っていなかった身体が、マナの命令へ遅れて反応する。
一つの手が、氷河の氷よりも冷たく、彼女の左腕を掴んだ。
古く、貪欲な冷気が骨の中を這い、彼女自身の血流を凍らせていく。
みおは、自分の生命力が制御不能な奔流となって空になっていくのを感じた。
まるで一秒ごとに、異形が彼女の魂を一片ずつ引き裂いているかのようだった。
核が指の間からこぼれる水のように逃げていく。
そして、それとともに立ち続ける力も失われていく。
膝が床へ叩きつけられた。
世界が暗くなり始める。
<やれ!>
ミサオの声が、迷宮そのものの反響のように彼女の精神を貫いた。
最後に残された本能を呼び起こす。
みおは迷わなかった。
右手が激しく震えている。
黒い金属のウルフベルフトが肉へ食い込み、嫌悪を催すような音を立てた。
筋肉が抵抗するのを感じる。
刃が骨を擦る。
痛みが爆発した。
それは戦士のような綺麗な斬撃ではなかった。
生き延びるため、身体から魔法の繋がりを無理やり引き裂く、絶望的な裂傷だった。
突然、粘ついた熱が裸の肌を伝った。
腕を激しい赤へ染めていく。
少女の絶叫は、窒息して死なないために自らの魂を引き裂く者のものだった。
隠された処刑人が止まった。
指先には、まだ深紅の雫が滴っている。
仮面の裂け目から覗く、感情の一切を欠いた目。
その目が、石の上で血を流す彼女を見つめていた。
逃走に焦りはなかった。
ただ、恐ろしいほどの静けさがあった。
周囲の光を飲み込み、柱の影と一体化する。
そして、最後の嘲笑のような囁きを残して消えた。
みおはその場に残された。
よろめきながら、傷ついた腕を抱える。
心臓が不規則な痙攣となって胸を打つ。
冷たい汗が髪を顔へ貼りつかせ、鉄の臭いが空気を満たしていた。
生きている。
それでも、二度と何も同じには戻らない。
そんな苦い確信だけが残っていた。
部屋の空気は、今や、はるかに冷たかった。




