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無能と捨てられた令嬢は規格外の魔力持ち!?〜孤独な最強魔法使いに拾われて、なぜか異常なほど溺愛されています〜  作者: 黒崎隼人


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エピローグ「永遠の誓い」

 魔物の大群が消滅し、世界が再び元の静寂を取り戻してから数ヶ月の時が流れた。

 魔の森には遅い春が訪れ、厳しい冬の間は雪に覆われていた木々の枝には、柔らかな緑の若葉が一斉に芽吹いていた。

 澄んだ空気が肺を満たし、どこからか飛んできた小鳥のさえずりが心地よく耳に響く。

 リゼットとクロードの二人は、塔を離れて森の奥深くにある湖のほとりへと足を運んでいた。

 水面は鏡のように滑らかで、雲一つない青空と周囲の木々を完璧に映し出している。

 湖畔に咲き乱れる名も知らぬ青い花々が、風に揺れて甘い香りを運んできた。

 リゼットはクロードが魔法で仕立ててくれた、春らしい淡い水色のドレスを身にまとっていた。

 かつて屋根裏部屋で着古したボロ布をまとい、寒さに震えていた少女の面影は、もはやどこにもない。

 透き通るような白い肌には健康的な赤みが差し、自信と喜びに満ちた瞳は、穏やかな光を湛えて輝いている。


「クロード様、見てください。水面がとてもきれいです」


 リゼットが水際でしゃがみ込み、指先でそっと水面を撫でると、冷たく澄んだ水が心地よく肌を伝った。

 波紋が静かに広がり、光を乱反射してきらきらと輝く。

 少し離れた場所からその様子を見つめていたクロードは、ゆっくりと歩み寄り、彼女の隣で片膝をついた。

 彼の藍色の瞳は、湖の美しさなど全く目に入っていないかのように、ただリゼットの横顔だけを真っ直ぐに捉えていた。


「ああ、きれいだな」


 低く静かな声。

 その言葉が景色ではなく自分に向けられていることに気づき、リゼットは頬を薄く染めて彼を見つめ返した。

 クロードの視線は、出会った当初の氷のような冷たさが嘘のように、ひたすらに甘く、そして深い情熱を秘めている。


「リゼット」


 彼が真剣な声音で名前を呼ぶと、周囲の空気がわずかに変わった。

 風が止み、鳥のさえずりも遠のき、世界に二人だけが取り残されたような絶対的な静寂が訪れる。

 クロードはリゼットの小さな手を両手で包み込み、自分の胸元へと引き寄せた。

 彼の心臓の力強い鼓動が、手のひらを通してはっきりと伝わってくる。


「俺は長い間、誰とも関わらず、ただ魔法の深淵だけを覗き込んで生きてきた。他人は愚かで煩わしい存在だと見下していたし、この先もずっと一人で死んでいくのだと思っていた」


 彼は言葉を切り、リゼットの目を深くのぞき込んだ。


「だが、お前が俺の塔に来てから、すべてが変わった。お前が淹れる茶の温度、厨房から聞こえる足音、そして俺に向かって微笑むその顔。それが俺のすべてになった」


 クロードの指が、リゼットの薬指の付け根を優しく撫でる。

 その不器用で、けれど切実な愛情の伝え方に、リゼットは胸の奥が熱く締め付けられるのを感じた。


「お前の過去を奪った奴らを、俺は決して許さない。だが、あいつらがお前を捨てたからこそ、俺はお前と出会えた。だから……お前はもう、俺の手から絶対に離さない」


 彼はリゼットの手の甲に静かに唇を落とし、そのまま深い祈りを捧げるように目を閉じた。


「俺と、永遠の誓いを交わしてくれ。俺の生涯をかけて、お前を甘やかし、守り抜くと約束する」


 それは、世界最強と謳われた孤独な魔法使いからの、不器用で、けれど何よりも重い愛の告白だった。

 リゼットの目から、大粒の涙があふれ出した。

 それは過去の悲しみでも、自分の不遇を呪う涙でもない。

 ただ、これ以上ないほどの幸せに満たされた、純粋な喜びの雫だった。


「……はい。私も、クロード様のおそばで、ずっとあなたを支えたいです」


 震える声でそう答えると、クロードは顔を上げ、心底安堵したように目元を緩めた。

 彼は立ち上がり、リゼットを引き寄せてその細い体を強く、けれど壊れ物を扱うように優しく抱きしめた。

 森の木漏れ日が二人を包み込み、祝福するように淡い光の粒が空から舞い降りる。

 過去の鎖を完全に断ち切ったリゼットは、今、心から愛する人の腕の中で、永遠に続く温かな未来へと確かな一歩を踏み出したのだった。

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