第122話 クローバールへの帰還
零夜達はクローバールへと帰還します。
「ふう……ようやく落ち着いたわ……」
再会を果たしてから数分後、アイリン達は再会の涙を終えて零夜達に視線を移す。彼女達の目は真っ赤で、涙の跡も残っているのだ。
「ベティとメディだったな。アンタ等の噂は聞いているぜ。俺は東零夜。闇の珠を持っている」
零夜はバングルに付属している珠を見せながら、ベティとメディに対して自己紹介をする。自身もアイリンと同じく八犬士の一員である以上、珠を見せながらの自己紹介は欠かせないのだ。
「私は藍原倫子。水の珠を持っているわ」
「私は有原日和。雷の珠を持っているの」
「私はエヴァ。氷の珠の格闘戦士よ」
「私はマツリ。炎の珠の侍なの」
「私はトワ。風の珠の狩人よ」
「エイリーンです。土の珠の戦士です!」
「ハユン。サポートを担当しているの」
「ヤツフサだ。八犬士達の指導役をしている」
倫子達も同様に自己紹介をして、そのバングルを見たベティとメディは納得の表情をする。八犬士達の噂はAブロック基地内で聞いているので、ある程度の事は分かるのだ。
因みにハユンとヤツフサは零夜達のサポート役なので、普通に自己紹介をしていた。
「あなた達がアイリンの仲間の八犬士達ね。彼女を支えてくれてありがとう」
「困っている人をを放っておけないし、アイリンは俺達の大切な仲間だからな」
ベティが零夜に対して、お礼を込めながら一礼する。それに対して彼は笑顔で答え、倫子達も同様の表情を見せる。
「良かったですね、アイリン。こんなに良い仲間達と出会えて」
「ええ。皆は頼りになる存在だし、零夜に至っては新たな勇者候補となっているから」
「「勇者候補!?」」
アイリンの説明を聞いたベティとメディは、まさかの事実に驚きを隠せなかった。
零夜はアイリンから勇者の剣を受け取っていて、今ではそれを使いながら戦っている。しかし本来の力である武器変化を使えないので、真の勇者になるには時間が掛かるだろう。
「まさかあの男に勇者の剣を渡したのですか!?」
「ええ。彼はこの世界だけでなく、地球の勇者である可能性が高いからね。それに……ケンジだって零夜達と同じ地球出身だし」
驚きを隠せないメディとベティに対し、アイリンは笑顔で勇者の剣を渡した理由について説明する。
前勇者であるケンジも零夜達と同じ地球出身であり、前代魔王を見事撃破した実績を持つ。
更に勇者の剣は地球人しか使えないのだが、その理由は何でなのか未だに不明であるのだ。
「なるほどね……まあ、ケンジよりはまともそうだし、その証拠に多くの女性達が仲間にいるのが証拠だからね」
「ええ。取り敢えず彼を信じてみましょう」
「じゃあ、決定ね」
アイリンの説明を聞いたベティとメディは、零夜が勇者の剣を持つ理由に納得する。更に彼が勇者候補である事を一時信じる事を決断し、零夜達に視線を移す。
その表情は真剣な表情をしていて、まだ勇者とは認めない部分もある。しかしその可能性があるのなら、冷静に確かめる必要があると感じているのだ。
「取り敢えずだけど、あなたを勇者候補として認めるわ。けど、その剣を上手く扱えるのかはあなた次第である事を忘れないでね」
「ああ。肝に銘じておく」
ベティからの真剣な忠告に対し、零夜も真剣な表情で頷きながら返していく。
零夜自身も勇者の剣を上手く扱える為、毎日剣の特訓を欠かさず行っている。勇者としての自覚を持つだけでなく、二つの世界を守る事を心から決意しているのだ。
その様子を見ていたメディは納得の表情をした後、皆に対して呼びかけを始めた。
「さっ、取り敢えずはクローバールへ戻りましょう! プラムも心配していますし」
「プラム?」
「私達の仲間よ。後で紹介するから!」
メディの合図で全員がクローバールへと戻り出し、零夜達も後に続きながら歩き始める。メリア達が彼等の帰還を待っている以上、これ以上待たせてはいけないと感じているのだ。
フルーダス平原では穏やかな風が吹いていて、倫子達の髪を揺らしていたのだった。
※
クローバールに辿り着いた零夜達を待ち受けていたのは、最初に来たところと変わらない街並みだった。
大晦日による花火で大爆発事故が発生し、クローバールの街は荒れ果ててしまう事態に。その犯人であるファンキーは行方知れずで、現在は何処にいるのか分からない状態だ。
新年早々から大変な騒ぎとなってしまったが、一致団結してなんとか街を元通りにする事ができた。これに関しては見事としか言えないだろう。
「街並みが元のままになっている……」
「皆で力を合わせて完成したみたいだな……」
ハユン達がこの光景に驚きを隠せない中、メリアとプラムが笑顔で駆け付けてきた。零夜達が帰ってきたと直感的に感じたので、ギルドから飛び出さずにはいられなかったのだ。
「お帰りなさい、ブレイブエイトの皆さん! あなた達の帰還を待っていました!」
「只今戻りました、メリアさん。それにしても街がこんなに早く復興するなんて驚きました……」
メリアは零夜に抱き着き、彼等との再会を喜んでいた。目には涙が浮かべられていて、ようやく再会できたと感じているだろう。
零夜はメリアに対して笑顔で返した後、驚きの表情でクローバールの街並を見ていた。まさか一ヶ月ぐらいで、ここまで修復したのは凄いとしか言えないだろう。
「皆さんのお陰です! 私達クローバールの人達は、一致団結をモットーとしていますので」
「そ、そうなのですか……」
メリアの満面の笑みに対して、零夜達は苦笑いせざるを得なかった。これだけ聞けば十分だけでなく、これ以上は流石に勘弁と心から思っているだろう。
するとプラムが零夜達に気付き、彼等に近付いてきたのだ。憧れの戦士達が目の前にいるので、心の中ではドキドキしていた。
「初めまして。貴方方の噂は聞いています! 私はプラム。アルラウネと人間のハーフです」
「アルラウネと人間のハーフ……この様な種族は初めて聞いたな」
プラムの自己紹介を聞いた零夜は、興味深そうな表情で彼女に視線を移す。
エルフと人間のハーフであるハーフエルフについては知っているが、アルラウネと人間のハーフは初耳である。どの様な経緯で子供が生まれるのか気になるが、それに関しては今のところ不明である。
「ハルヴァスではハーフアルラウネが他にもいますからね。更にハーフの種族も沢山いますし」
「なるほど。この世界には様々な種族がいるみたいだし、興味深くなるかもね」
プラムの補足となる説明を聞いた倫子達は、納得の表情をしながら頷く。同時にハルヴァスではハーフの種族が沢山いるという事実を初めて知り、彼女達はますます興味を持ち始める様になったのだ。
ハルヴァスには様々な種族が沢山いるとなると、見た事のない種族を発見する事もあり得る。その時はその人達の特性を知るだけでなく、文化も学び通す必要があるだろう。
「取り敢えずはギルドに戻りましょう。皆さんが待っていますので」
「そうね。ギルドの皆も私達を待っているし、ここで立ち止まると迷惑がかかるからね」
メリアの提案にトワも同意しながら捕捉し、彼女達はギルドへ戻り始める。ギルドの皆が自分達の帰りを待っているとなると、ここでのんびりしている暇はないのだ。
上空ではファルコスの一羽が空を飛びながら、零夜達を上空から見ていた。そのまま後ろを向いたと同時に、何処かへと飛び去ってしまったのだった。
最後に出てきたファルコス。新たな波乱が起ころうとしています。




