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炎の赤

遅れてすいません!夏の休暇を使い長期旅行に行ってきました。


また更新頑張ります!




と、意気込んだものの、そもそも未来予知って万能じゃない。私が未熟だからなのか分からないけど、うんと先のことを視ることができない。それこそ戦いの時とかは無意識に次に起こることを予想することはできるんだけど、危機を感じてないときの予知は力がいるし、もっと先のこととなると集中力を高めているうちに疲れてしまって、ぼやけた映像ぐらいしか視えないのだ。私の才能が無い訳ではないと思うんだけどね?!いや全然チートじゃなくね?って言ったそこの君!文句は神様に言ってね!?


馬車の中で考え込んでいる間に着いたようだ。ジンは寝ていたのか涎が付いてて汚かったけど、あえて言わなかった。



「おいゴンゾー、帰ったぞ」

「来ると思ってたぜ!ジン、涎汚ねえな!」

「ああ?!じゅるっ…うるせえ!綺麗だ!」

「急にすいませんゴンゾーさん」

「いいんだぜミリア、ミリアが来るならいつでもウェルカムだぁ!がっはっはっ!」


相変わらず勢いがすごいな…。


「で?手短に頼む。この後でっけぇヤマが待ってんだ」

「ヤマ?まさかもう最後の一つまで潰したのか?」

「がっはっはっ!まあ俺の弟子は何もお前らだけじゃねえ!雑魚な家はチョチョイと倒しちまったぜ。強い奴も一人入ったしな」


ヤマってなんだろう?多分話してるのはドバル家に繋がる違法薬物の摘発のことだと思うけど。今日が最後の一つってことかな?


「違法薬物所持の最後の家を潰す日が今日ってことですか?」

「ああ、そういうこと。お前らにも来てもらうからな。今までさぼってた分として」

「まじかよ…まあしょうがねえか。最後くらいやってやらぁ」

「はぁ…。ミリア、そういうわけだから、頑張ろうね」

「え?!私も行くの?!」

「当たり前じゃん。何のために修行してるの?」


ルイのきょとんとした顔もイケメンなのがまた腹がたつ。私女の子なんですけど?!ミジュアがいたらきっと言う、女の子にそんな危ないことさせられないって!くそ…この傷を癒すためにも今度ルーヴェルトン家に行くしかない。


「はいはい、頑張りますとも。じゃあなおさら急いで話します」


私は三人にリリーが誰かの指示を受けて動いていること、黒い本を探していることを話した。リリーも別の世界の人で、ここがゲームの中というのは言わなかった。自分の生きてる世界がゲームだなんて言われたら、やっぱりなんか嫌だと思うから。それに、そのゲームの内容を知ってたら力になれるけど、私は題名さえ知らないし…。なにも知らない世界に投げ込まれたも同然なのだ。


「黒い本には何が書いてあるんだっけ?ジン」

「禁忌の魔法だ。例えば悪魔を呼び出す魔法が最も禁忌とされてるな。他には人を操る魔法、未来を予知する魔法、様々なことが書いてある。ただこれらの魔法について多くの争いが起こったため、全て禁じられるようになった。どの魔法も鍵が掛かっているようにできなくなってるんだ。やり方を知っていたとしても」

「じゃあリリーはその本を持つ王家の子であるカイル・K・マーツォリアを最終的に狙ったのね。その鍵の付いた黒い魔法を解くためのキーを探すために」

「それもあるだろうが…他にも目的があって王家に近づいたんだろうな」


独り言ように呟くゴンゾーさんに聞く。


「他にも?」

「ミリア、この前俺は言わなかっただろ?アイツを救うためには俺がなんとかしなきゃってな」

「ああ、王様の…」

「そうだ。だけどな、アイツの心、もうボロボロなんだよ。俺だけの力じゃどうしようもねぇ。本当はアイツ、あんなヤワじゃなかったはずなんだ。俺はそこにその女の魔法が関わってんじゃねえかって思ってる」


その女の魔法…あの精神魔法のこと?確かに王様なんてやる人が奥さんを亡くしたからってあんなにも鬱ぎ込むかな…?最愛の人を失うのは悲しいことだけれど、彼にはそうしてられない地位がある。


…一理あるかもしれない。リリーが王様にそう思わせるような精神魔法を使っているのかもしれない。事実、彼女に惚れていた人たちは皆そんな状態だったんだから。



「王は引きこもりを始めている。王宮はこれを隠してはいるが、王宮内でも混乱が起きてるみたいだ。この俺でさえ会えるかわからねえ。いいか?ルイが王宮に行ったときリリーと怪しげなフードが話してたのを覚えているか?」

「ああ、あの全部は聞き取れなかったやつか。黒魔法っていうヒントは得られたけど」

「あの会話、俺はルイに集中してたからその近くにいたアイツらの会話も聞こえてたんだ」

「はあ?!そういうのはあの時言ってよ」

「わりぃな。俺一人でどうにかするつもりだったんだが…そうもいかなくなっちまってよ」

「ゴンゾーさん、教えてください」


困った顔をして頭を掻くゴンゾーさん。多分この人は、本当に自分だけで助けようとしてたんだ。だけどわかるでしょう?ルイもジンも貴方の味方ってこと。


「あの時の会話はこうだ。」



『黒魔法を偽造?』

『そうです。それを私が王に言い伝えます』

『うまくいくんでしょうね?』

『ええ、王は今妻を蘇らせることで頭がいっぱいですから』

『わかったわ。とにかく今は様子見ね』



蘇らせる…?悪魔を呼び起こして願いを叶えるってこと?


「…王は…妻を蘇らせるための方法をそそのかされている。その悪魔を呼ぶ黒魔法を使って」

「でも、なんで偽造する必要があるの?悪魔の魔法を教えるのに、リリーになんの利益があるの…?それに、王様だって知ってるんじゃない?悪魔を呼び起こす魔法には生贄がいるって」


悪魔の魔法を教えることで王様はそれを使ったりするのかな?でも奥さんが死んじゃって悲しいなら、生き返ってほしいよね。でも、生贄を差し出してまで生き返ってほしいものなの…?っていうか、“偽造する“”っておかしくない?ふつう隠すって言うと思うんだけど…。


「それは……わからない。確かにあいつなら生贄が必要なことを知っているはずだ…」


やっとわかってきたと思ったらなおさら疑問が増えてしまった。リリーの目的は…一体なに?



「なあ、俺がずっと気になってたことがあるんだ。黒い本を読んだとき、あるページがすでになくなっていた。それは黒魔法を発動する方法だ。あれは王家が隠していたのかと思ってたが、違うのかもしれない。そのフードの奴が、なんらかの形で隠している可能性がある」

「ジンが読んだときにはもうリリーたちの計画は進んでたってこともあり得るのね…」

「黒魔法のやり方はなにかを生贄にして発動すればできるものと思ってたけど、もしかしたら違うのかもしれない。でないとわざわざ偽造なんてするか?」


偽るという行為は、およそ自分に利が向くときに行うことだ。もちろん人のため、善の心の行為にもあるかもしれないが、ここでは自己利益のための仮定しよう。だとしたら、この黒魔法を偽造するって行為は、リリーとフードの奴になんらかの利益をもたらすってことだ。あれ?待って、なんだろうこの違和感。



「あ」



そうだ、リリーは王様に黒魔法を唆してるって言ってた。それっておかしくない?黒魔法を起こしたいなら自分で起こせばいい。生贄を用意するなりなんなりして。むしろフードの奴がやり方を知っているなら…なんで自分たちで悪魔を呼ばないんだろう。それとも、悪魔を呼べない理由でもあるの…?



「まあ今は情報が少なすぎるな。ミリアの魔法でなんか視れりゃいいんだけどなぁ」

「うう…お役に立てず申し訳ないです…」

「がっはっはっ!なーに、焦んなよ!問題は他にも山積みだからなぁ。その1つはもうすぐ片付くが」


ゴンゾーさんがそう言ったと同時に、茶色の大きなドアが突然大きな音を立てて動いた。


バン!


「ゴンゾーさん!バフェリア家が奇襲に気づいて逃げようとしているようです!」


いきなり部屋に現れた赤い人物に驚く。はあ、心臓が飛び出るかと思った。…って、あれ?この人どこかで…。


「なんだ、レッグス。すぐ慌てるな。俺は耳がいいんだから全部聞こえてるさ」

「し、しかし…」


レッグス…?レッグスって聞いたことある…。えーっと、あ、そうだ!リリーに惚れていた一人、レッグス・モートンだ!赤い髪の毛に赤い眼、間違いない!悪魔の子として小さい頃から虐められてたんだけど、自分が強くなることで見返そうとしたんだっけ。自分を怖がらないで歩み寄ってくれるリリーが好きになったみたいだったっけな。ミミリアが小言を言ってリリーに突っかかってるときにすごい形相で『愛しい彼女から離れろ!』なんて言われちゃって。ミミリアもレッグス・モートンを怖がってた一人だったから、何よこいつ!悪魔の子のくせに!って思って退散したみたい。完全に負けてるよミミリア…。


こいつにも話が聞きたかったんだ。でもなんで、ゴンゾーさんの元に?


「レッグス、こいつらも連れて行く。お前の先輩だからな!がっはっはっ!前話したルイとジンだよ」

「ルイさんとジンさん?!は、はい!レッグス・モートンです。このようなナリですが、よろしくお願いします!」


勢いよく直角に腰を曲げお辞儀をする彼は完全に体育会系だ。赤い髪の毛に鋭く尖った赤い眼。確かにこれでこの図体のデカさはちょっと怖いな。本人は睨んでるつもりないのに、特徴的な形の眼のせいでそう思われがちなんだろう。


「ルイ・カイドウモンだ。よろしく、レッグス」

「ジン・カイドウモンだ。お前珍しい色してんのな」


その一言に明らかにビクつく彼。相当この見た目にコンプレックスがあるようだ。


「す、すいません、俺なんかが…!」

「あー!赤って、強そう!いい色じゃん!ね?ね?!ジン!」

「あ?ああ、まあ俺の魔法も炎だしな」

「でしょでしょ?!赤っていいよね、情熱の色!私はミリアだよ!よろしく!」


お、おーし!なんとか話題を逸らしたぞ!なんて天才なの私。そして本当無神経なジン。


「ミリアさんは…女なのに、行くんすか?」

「そう、女なのに行くの!戦えるからね」

「本当ですか?」

「本当だってば!」

「レッグス、ミリアは強いから心配ないよ」

「ル、ルイさんが言うなら」


怪しげな目でこちらを見てくるレッグス。この様子じゃまさか私がミミリアとは全く気付いてないみたいだね。まあ仲良かった訳じゃないし、当然か。そこまでミミリアに注目してたわけじゃないだろうし。せいぜい小うるさい縦ロールって感じだったろう。ミミリア、貴女のアイデンティティってそれだけなのね…。


「でもなんでレッグスがレジスタントに参加してるんだ?ゴンゾーとどういう関係?」

「まあ、ちょっとした出会いがあったんだよ。んなもん、暇なとき話してやらぁ!とりあえずバフェリア家を追う」

「おい待て、情報が少なすぎる!教えてくれたら俺が作戦を練るから!ゴンゾー、てめぇはいつも適当すぎんだよ!」

「ジンこそいつも細かいぞ。正面からぶつかっても勝ちゃいんだろーが!なぁルイ」

「ま、まぁ勝てればね。でもゴンゾー、楽に勝てるならそれに越したことはないよ」

「うぐっ…。特に大した情報はねえよ。王から潰す家の一覧が届いたから弱いとこから潰してったんだ。最後に残ったのがバフェリア家だよ。ノーブロリア二等級だからな。そんくらいだ!なぁ、早く行こうぜ」

「ノーブロリアもやっぱ参加してたんだな…バフェリア家の情報は?」

「ジン!くどい!バフェリア家は普通のノーブロリア二等級の家だ!ただ魔法を使える傭兵を多く雇ったらしい」

「それさえわかりゃいいぜ。おいレッグス!お前はなんの魔法が使える?」




「…すいません、ジンさん、炎魔法です…」




その場にいたゴンゾーさん以外が固まった。え…被ってる!被ってるよ!しかもレッグスの方が相当炎魔法が似合う外見だし…ジンの立場がなーい!


「……ふっ、そうか。まあ、いいだろう…」


ああジン、そんな虚ろな目をしないで!大丈夫!あなたには治癒魔法っていうものがあるじゃない!


「俺は、治癒に、専念するから……」

「す、すいません…」





「ジンもおとなしくなったとこだし、行くか!」


沈黙はゴンゾーさんの言葉で破られた。ジンはもう、何も言わなかった。

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