ガールズトーク
ジャズリー展から数日後、キルアに手紙を出し、今日の夕方に会う約束をした。ルイとジンのことを言ったら少し嫌がっていたけど、結局オッケーしてくれたようだ。やっぱり初対面だと嫌なのかなぁ。ここは私がしっかり会話を回さないと!
夕方までは暇ということで、今日は一人で市場に来ています!なにせ着ていたサロペットの紐のボタンが取れてしまい、着られなくなってしまったのだ。当然ルイとジンという男しか住わないカイドウモン家の洋館に裁縫道具があるわけがなく、メリさんに直してもらいにきたのだ。国からもらおうか?ってルイさんが言ってたから頼んでおいたけど、そこまで待てないしカルロの実も食べたいので市場に来てしまった。
一応外に出るってことでベレー帽に髪の毛をしまい、男装ぽくする。前はサラシを巻いていたけどもうやめた。意外に大丈夫そうということに気づいてしまったから…。
一人で借馬車で直接メリさんの店に来た。
「こんにちは〜!メリさんいますか?」
「あらぁいらっしゃいミリアちゃん!ごめんね、ちょっとお得意様がもうすぐで来るから相手ができないかもしれないわ!ドレスの注文かしら?」
「あ、そうですか。ドレスではないです!このサロペットのボタンが取れちゃったんで、直してもらえないかなって」
「あら、取れちゃった?ごめんね。すぐに直すわ!」
「ありがとうございます」
相変わらず色んな服がたくさんある店だ。店内をしげしげと物色していると突然入り口の方から声がした。
「メリさん、失礼します。注文の品はできてますか?」
「あら!早かったわねアクサスちゃん。ちゃあんとできてるわよ。取ってくるから待っていて頂戴」
入ってきたのは背が高くて清潔に整えられた黒髪をもつ男の人。ジンの黒髪とは訳が違うわね…。こいつ、どこかで見たことあるような…ってアクサス・モルガイトじゃない!なんでこんなところに?!見たところ注文した服を取りに来たってとこか?アクサスはこちらをちらりと見ると少し微笑んできた。一応微笑み返しておく。う、うまく笑えてるかな。確かこの人は、王子の親友でありライバルの人だったっけ。王子とは幼い頃から仲良くて、表向き一番繋がりの強い家だったかな。勿論裏はカイドウモン家ね。でも何もかも完璧な王子には叶わなくて、いつも万年二位君なのが有名だった。うん、可哀想な人。
「メリさんの服、とても良いですよね」
げ、話しかけてきた。一応男装してるけど声を出したらさすがにバレるよ!どうしよう。でも答えない訳にはいかない。
「良いですよね」
ミミリアの声で出せる一番低い声で答える。一瞬訝しげな視線を感じたが、次見たときは先ほどのように微笑んでいたからまあ大丈夫だろう。曖昧に微笑み返してる間にメリさんがたくさんの服を抱え戻ってきた。
「はいお待たせ。これで全部よ」
「やはり、出来が良いですね。ありがとうございます」
「アクサスちゃんにぴったりに作っておいたからねぇ。こんなにあると作り甲斐があったわ〜!また来て頂戴ね」
「はい、ではまた」
丁寧な言葉遣いに爽やかな笑顔。ふむ、俺様タイプのカイルとはいい釣り合いが取れているのかもなぁ。私へのお辞儀もしてくれて、印象としては良い人だなぁって感じ。まぁミミリアはこの人にも嫌われたんですけどね?!すごいねミミリア!才能だよもはや!尊敬してる!
「ほら、できたわよ。今度は取れないはず」
「あ、ありがとうございます!」
「ところでさっきの男の子どう?」
「ど、どうって?」
「やだぁミリアちゃんだって女の子でしょう?!興味無いとは言わせないわよ!」
「ま、まあかっこいいと思います」
「まあミリアちゃんにはルイちゃんもジンちゃんもいるものねぇ。特にルイちゃんなんて見てたらそこら辺の男がジャガイモに見えるわよね」
「いやそこまでは!」
でも確かにそう言われるとこの世界は顔面偏差値が極めて高い。ルイとジンも客観的に見て間違いなくイケメンだし、ミジュアもルイお兄様もキルアも今のアクサス・モルガイトも…。ゴンゾーさんは髭こそ生えてるものの、彫りは深いしイケメンな方だと思う。すごいな…私の周りイケメンばっかりじゃないか。こんなイケメンパラダイス夢には見てたけど、実際なると彼女になろうなんて夢にも思えないわ…。
「ミリアちゃんもね、親御さんに勝手に結婚決められちゃうかもしれないけどね、本当に好きな人がいるなら従う必要なんてないのよ」
「はぁ、」
そうか、メリさんは私がまだミミリア・ルーヴェルトンだと思っているのか。騙そうとしてるのは私だけどなんか心が痛い。
「ワタシもね、本当は親に相手を決められていたんだけど断ったの。本当に好きなカレがいてね?二人で家を飛び出して駆け落ちしちゃったのよ!」
「え、ええ?!駆け落ち?!」
「そう。だって、お金のためにカッコよくもなければ優しくもない脂ぎった人と結婚なんて耐えられなくて!カレが勇気付けてくれて、逃げ出しちゃったのよ。それで、このお店は主人とワタシでやりくりして生活してたの」
「二人で…大変そうですね」
「いいえ、楽しかったわ!ワタシも裁縫とかお洋服が大好きでね。それはそれは夢中で働いていたわ」
私は気づいてる。全部全部過去形なことに。顔をして多分メリさんの夫はもう…この世にいないんだ。それでいてこんなに明るくみんなに元気を振りまけるメリさんはすごいと思った。メリさんは、お母さんみたいな暖かさをもった人。私が訪れることでメリさんの寂しさが少しでも和らいでくれたらいいな…。
「メリさんは、ご主人のことが大好きだったんですね」
「ええ!大好きだったわ」
少し切なそうな顔で言うメリさんは、どれほど悲しんできたんだろう。こんなに若いのに好きな人と離れ離れになってしまって、どれほど辛かっただろう。メリさん、もう私がいるからね…!
「あらぁミリアちゃん!どうして泣いているの?!」
「…っ、辛かっだでずね…!メリざん…!ご主人がいなぐでも私がいますがらぁ!」
嗚咽で上手く話せない。でも伝えたい。あなたは一人じゃないということを!
「ミリアちゃん…」
「ワタシの夫、死んでないわよ?」
「えっ?」
「ちょっと出張に行ってるのよ」
「…え?」
「今度帰ってきたとき紹介するわね」
「……。」
飛んだ拍子抜けだぁ!絶対死んだと思った!だってそんな言い方だったんだもん!
「ふふ、泣いてくれてありがとう。ミリアちゃんは優しいのね」
「い、いえいえ。早とちりしただけです…」
「でも、嬉しかったわ!」
笑顔で言うメリさんは本当にそう思っているんだなと思った。
「で、結局だれがタイプ?!ルイちゃんは間違いなく紳士よね、顔も完璧だし!ジンちゃんは変なところもあるけど優しいし…さっきのアクサスちゃんだってジェントルマンだしかっこいいでしょう?ミリアちゃんもっと女の子の格好したら可愛いのに!やっぱり、ドレス作りたいわぁ…」
「も、もう、そんなんじゃないですってばー!用事あるので私もう帰ります!失礼します!」
「ふふ、照れちゃって。また来て頂戴ね」
カルロの実を買って帰ってからは、ルイとジンの顔を見れなかった。メリさんがあんなこと言うから、変に意識しちゃったじゃないか!
「ミリアお前なんかあったのか?」
「なんもない!ほら、早くキルアん家行くよ!」
「そう?ちょっと顔赤いし…熱でもあるの?!」
「その乙女ゲーム並みのスキルや!め!ろ!」
「おとめげえむ?」
「なんでもない!ほら、行くよ!」
もう、変なこと言っちゃったじゃないか!
でも、本当にこの世界、乙女ゲーム並みにイケメン揃ってるなぁ。




