ゴンゾー
次の日。
「よし!いざ温泉へ!」
「目的間違えてねえか?」
「んなことないですよぅ!」
お風呂だ、念願のお風呂!湯船に毎日浸からなきゃ気が済まない私はシャワーだけの生活に懲り懲りしていた。だってゆっくり湯船に浸かって疲れを取る時間が至福だったんだもの!
「ああ、一応言っておくけどその温泉ってのにあいつが入れてくれるかはわからねえぞ?」
「え、ええ?!意地悪な人なの?!」
「意地悪っつーか、変なとこ子供なんだよ」
「仲良くなればいいだけだ。僕の予想、ミリアのことを嫌うことはないと思うよ。ここまでなにも言ってこないわけだし」
「私のこともう知ってるの?その人」
「僕らは言ってないけど、恐らくもう知ってるだろうね」
「言っちゃえば会ったとき、始めから全部な」
どういうこと?こわいんですけど。何者だよ!
「な、なんで教えてないのに知ってるの?」
「まあ、言っちゃえば耳が利くんだよ」
「み、耳が利くで済まされる?!どんだけ遠くにいると思ってるの?!」
「まあ、魔法の一種だからな」
「な、なるほど」
なるほどで終わらせられちゃう私もこの世界に慣れてしまったものだな…とほほ。
っていうか、この会話とかも全部聞かれてるってこと?でもそんな耳が聞こえてうるさくないのかなぁ。と、会ったこともない他人の心配をする。一応温泉を借りる人だからね!仲良くしたい。
「着くぞ」
「おお…」
着いた所は普通の家よりも少し大きめなお屋敷。想像してたよりも小さかった。
「思ったより小さいなと思った?」
「え、あ、いえ!そんな!昔の私の家の倍くらいあるし!ミミリアの前の」
「はは、いいんだよ。一応ノーブロリアってこと隠してるし、家が広いの落ち着かない人たちが多いからさ。家自体は小さめなんだ」
「これ見てだれも国家に最も近い貴族がだれかなんてわかんねえだろ?カモフラージュになってんだこれ」
「そんなことも考えてあるんだ…すごい」
門番みたいなのもいないし、今まですごい豪邸にしか行ってなかったから少し親近感がわく。
「ただいまー」
「帰ったぞー」
「お、お邪魔します!」
シーンとする屋敷。
「あ、あれ?だれもいないの?」
「や、来るぞ」
ガタガタと揺れる照明。な、なに?!地震?!揺れと共に段々と近づいてくる地鳴り。やだ、なに?!なにが起きてるの?!
「ルイ!ジン!逃げよう!建物の中にいちゃ危ない!」
「大丈夫だよミリア」
なんでそんなに動じないの?!もしかしてここも日本と同じように地震大国だったりする?慣れてたりするのかな…。でも危ない!
「いいから出ましょ「ルイ!ジン!帰ったか!」
ドン!という音と共に現れたのは、2メートルを超える巨人の姿だった。目の前に現れたその人が止まると、揺れも地鳴りも収まった。…もしかしてこいつが走ってきた音だったの?髭も濃いし、なによりデカい。声もデカい!
「がっはっはっ!久しぶりだなぁお前ら!ルイ、ちゃんと会議やってきてろうな?!」
「うるっさいな。ちゃんとやったよ。その報告に来たんだろうが」
「偉いぞルイ!それで、どうだったんだ?!」
「ゴンゾーのことだから全部聴いてたんだろ?まんまだよ。潰す家についてはあとから手紙で届くだろうよ」
ルイの口が悪いってことはだいぶ心を許してる人なのかな?まあ確かに大口開けて唾飛ばして笑う彼は、悪い人には見えない。
「おいジン!お前は前会ったっけな?元気そうだなぁおい!」
「うるせえゴンゾー。てめぇあのイノシシちゃんと森に返しただろうな。屋敷で飼ってんじゃねえぞ」
「ああ、あれか!あれは鍋にして食っちまったぜ!お前も食いたかったか?」
「はあ?!てめえ本当クソ野郎だな!」
「がっはっはっ!うんまかったぜえ!今度は鹿でも食ってみようかと思ってんだ!」
「絶対付き合わねえからな」
「ツレないなぁジンは!相変わらず!ところで、そのお嬢さんは?」
あ?!私?!
「あ、すいません!私ミリアって言います。ジンさんとルイさんとパーティを組んでます」
「ほぉ〜これは可愛らしくて礼儀正しいお嬢さんだ。じゃあ立ち話もなんだし、中に入ってじっくり話そうか」
「あ、は、はい。ありがとうございます」
「本当相変わらず胡散臭いなゴンゾー。ミリアのことは知ってるだろ?」
「ルイも知ってるだろ?俺は自分の目で確かめたい性格なのさ」
チラッと横目で私を見てニコッと笑うゴンゾー?さん。確かに、少し胡散臭い感じがしてきた…。ってあれ?!イノシシ飼ってたのこの人ってことは、二人の育ての親はこの人…?どちらかというとルイとジンの方が親って感じするけどな。
案内されたのは日本でいう居間。ダイニングテーブルに椅子。そこに四人で腰掛けた。
「さぁ、ミリアちゃん。改めて自己紹介するよ。俺はゴンゾー・カイドウモン。気軽にゴンゾーと呼んでくれ」
「よろしくお願いしますゴンゾーさん」
「ゴンゾーでいいよミリアちゃん。可愛いからね、君は特別だぞ」
ぞわわ。な、なに?!この人。女好きなの?!
「おいゴンゾーてめぇ。ふざけるのも大概にしろ。ミリアのこと聞きたくてここまで入れたんだろ?」
「せっかちだなぁジン。じゃあ単刀直入に聞こう。君は、ミミリア・ルーヴェルトンだ」
…っ。全然バレてる。二人も言ったことがないのに知ってるってことは、本当に耳が利くってやつ…?本当のこと話していいのかな?だって私、この人について何も知らない。
「…そうだよ。ミリアはミミリア・ルーヴェルトンだ。知ってるくせにミリアに意地悪すんのやめなよね」
「意地悪なんて人聞きの悪い!俺は本人の口から直接聞きたいだけだ。さぁ、どうかな?」
真っ直ぐに見つめてくる黒い瞳は全てを見透かしていそうだった。口元はニコリと微笑んでいるのに、一切の油断を許さないような、そんな印象を受けた。そして直感が告げる。この人を、敵に回してはいけない。ボロが出る嘘なら始めから言ってはいけない。
「………その通りです。私の身体は確かにミミリア・ルーヴェルトンです」




