彼
湿気が多いですね。
「あ、おかえりルイ」
「ただいまミリア」
ルイが帰ってきた。どこに行ってたんだろう?呼ばれてるって言ってたけど…。
「ルイどこ行ってたの?」
「国に呼ばれてたんだ。会議があったからね」
「ええ、ルイって国の会議に出るくらい偉い人だったの?!」
ナントカ大臣とか?!この国の政治についてなにも知らないけど!
「違うよ、僕はカイドウモン家の代表として出たんだ。代理でね」
「代理?ルイが代表っていうわけじゃないの?」
「違うよ」
「おいルイ。あいつ、なんで出れなかったんだ?」
「さぁね、またなんか探し物でもしてるんじゃない?本当、自分の任務くらい全うして欲しいよ…僕が代表代理で行ったって何も意味ないんだから」
はあ、と呆れた顔をして溜息をつくルイ。あいつって誰だろう?
「ねえ、あいつってだれ?カイドウモン家の代表?」
「そう、代表にしては自分勝手な人だけどね」
「良く言えば自由奔放、悪く言えば自己中心って感じだ」
「そうそう、自分のやりたいことばっかりやるからね。強いし頭も良いから無駄に実現できているのも腹立つ」
「この前資料見に帰ったときなんかイノシシ飼ってたぞ…」
「はあ?!絶対帰りたくない」
あれ?すごく悪口言われてない?わかるのは自分勝手な好奇心旺盛な人っていうことだけだけど…悪口の中に確かに感じる愛。この二人、その人のこと大好きなんだ。すごく伝わる。
「ふふ、その人のこともっと聞きたい」
「別にロクな話はねえぞ」
「まあここまで育ててくれたから感謝はしてるけどね」
「え、育ててくれた?!ってことは親なの?」
「親じゃねえけど、親みてえなもんだ」
「僕らはね、拾われたんだその人に」
…え?
「ひ、拾われたってどういうこと…?」
「そのまんまの意味だよ」
聞いちゃいけない話だった?もしかして…。だってそんな、拾われたって言われてなんて反応したらいいの…?
「ミリア、んな顔しなくても俺ら全然気にしてねえよ?もともとそういうの多いし」
「ミリアの世界ではあまりないの?」
「あ、あまりないです…」
「この世界はさ、マーツォリアができてから大きな戦争は起きてないけど、その代わりに級持ち潰しっていうのが起こってたんだ。等級を持ってる貴族の家を潰す庶民とかがいたんだよ。それで親を殺されちゃった子供とか、それと別に親を病気で失った子供とか、身寄りの無い子供が結構多いんだ。もちろん国も孤児についての取り組みはしているみたいだけど、足りない部分はまだある。それを補うために等級持ちの家は積極的に養子を迎える義務があるんだよ」
「それで、カイドウモン家に迎えられたの?」
「そう、僕が元いた家はロクでもない家だったからカイドウモンが潰しに来たんだ。今の僕らがやってるように」
「じ、自分の家を潰されたのについて行ったの?!」
「そう、あまり良い扱いを受けてなかったし、家もなくなってしまったからね。嫌だったけど…彼が『気に入った。俺と来い!』って聞かなくて」
「あいつ本当強引だからな、俺のときもだ」
「まあ、今じゃついて行って良かったと思えるからいいけどね」
知らなかった二人の話、過去の話。私の知らない世界で二人はちゃんと生きてて、ちゃんと人生を歩んでたんだ。不思議な感じだ。この世界に来なければ知ることがなかった、出会わなかった。殺されそうになるし狙われるし日本人の私にしては刺激が強すぎて、独りなのが寂しくもあった。すぐにでも帰りたかった。だけど、今は二人と一緒。二人がいてくれたからこの世界でも生きていられる。笑えてる。初めに会ったのがこの二人で良かった。出会えて良かった。
「…なんかありがとう」
「あ?なんだ急に」
「なんでもない!それよりその人のこと教えてよ。二人の育ての親の話!」
「色々あるけどなぁ。庭に穴を掘って出てきた熱湯を貯めて入ったりしてるぞ」
「ええ?!それ温泉じゃない!入りたい!行きたい!っていうかその人に会ってみたい」
「うーん、ミリアには刺激が強い気もするけど…」
「まあいんじゃねぇ?どうせルイも会議報告しに行くだろ?」
「まあな。なんの意味もない報告だしどうせ全部知ってるだろうけどね。行かないわけにはいかないし…」
「連れてって!温泉入りたい!」
「まあ、いつかはちゃんと紹介しなきゃいけないからいいかな。知ってるだろうけど」
「まあ、バレてるだろうな。別に隠しちゃいねえけど」
「まあいい。じゃあ明日、連れて行ってあげる。カイドウモン家に」
「やったー!」
温泉に入れるわ二人の育ての親に会えるわ一石二鳥!明日に備えて早く寝なきゃ!




