ロンとミリア
沈黙が走る。
用あるんならなんか喋ってくんないかな?!
「あ、あの…何用ですか?」
「……。」
やめて!穴が開くほど見つめないで!イケメンな自分の顔わかってやってます?!
「あの!なんですか!」
「…なんでそんな格好してるんだ?」
「え?」
「いつもの厚化粧もないし…髪の毛も一つだし…ドレスでもない」
「……あのー…」
「お前はミミリアだろ?」
全然バレてますー!全然気づいてらっしゃる!
「…まあ、ミミリアと言えばミミリアですね」
「どういう意味だ?前のミミリアとは何もかもが違いすぎる。捨てられた後なにかあったのか?」
「まあ別モンと考えてください。ミミリア・ルーヴェルトンは記憶喪失になって、ミリアと名を改め強く生きてます」
「だからさっきミリアと名乗ったのか」
「そうです、ルーヴェルトンの名はもう名乗ってません、安心してください」
「…敬語はやめろ。ミミリアから使われると変な感じだ」
「あ〜わかりました。ロンお兄様は私を恨んでないの?」
「恨んで…いたな、確かに。リリーとのことでは特に恨んでいたんだと思う」
「だ、だよね、なのになんで今こうして話してくれるの?」
恨んだ相手と二人になるってなんだ?!殺したいとか思ってないでしょうねロンお兄様!
「…ミリ、アが別人のようだったからだ」
「まあ別人みたいなもんだけどね。でもミミリアがやったたくさんの悪いことは消えないよ」
「ああ、そうだな」
「だからロンお兄様に恨まれてても仕方ないなって思ってたの」
「でも、記憶がないんだろ?」
「ああ、まあ…」
正確には記憶はあるけど完全に別人ってことが言いたいんだけど、説明に時間はかかるし頭おかしいと思われるのがオチだからやめておく。
「それに…リリーの顔が段々思い出せなくなっている」
「ええ?!」
それってどういうこと?あんなに盲目的に好きだったのに顔が思い出せなくなるってあり得るの?お兄様が独り言のように呟いた言葉に思わず反応してしまう。
「…なんでミリアが驚く?記憶喪失なんじゃないのか?」
「いえ、記憶喪失ながらミミリアが起こした散々な悪事は教えてもらってます」
用意していた言い訳を何も考えずに口から零す。良かった考えておいて。私今目泳いでなかったよね?!
「そういうことか…。リリーは王子を選んだ。僕はこうしてローバル階級に下がってしまったし、父はそれでショックで寝込んでる。僕が後を継ぐのも時間の問題だったし、仕事を請け負わざるを得なかったんだ。離れるしかなかった」
「ご、ごめんなさい…」
完全に私のせいですよねローバル階級に下がってしまったのも…。お父様はショックで寝込んでるとかもう…放任主義だったみたいだから自業自得みたいなとこもあるけど。
「…それでも、想い続ければいいんだと思っていたんだ。僕がこの想いを大切にしていれば、彼女の幸せを願っていればいいんだと」
「でも違った。彼女と会わなくなってから日数を重ねる度彼女への想いが消えていく。それに顔も靄がかかったみたいに思い出せなくなっているんだ…」
「ロンお兄様…」
「自分でも驚いてる。自分のあの熱い想いは全くもって軽いものだったんじゃないか、自分は薄情な人間なんじゃないかって」
「そんなことない…と、思うよ」
ありきたりな否定の言葉しか出てこない。何故なら私とお兄様には思い出がないから。過去がないから。貴方はこうだとハッキリ言えるほど、ミミリアともあまり関わってなかったようだし。
「調べてみたんだ、気になって」
「え?」
「リリー・カインロスについて」
あれ?話が飛んだ?
「なにを調べたの?」
「リリー・カインロス、彼女についてだよ。彼女自身のこと、彼女の身の周りのこと、色々調べてみたんだ」
「なるほど。でもなんでそんなことしたの?」
「僕も最初こそ悲観したんだ。自分の薄情さに。でもね、冷静になって考えてほしい。本当に顔が思い出せなくなることなんてあるのか?」
確かに…ファンタジックな世界だからってなんでも安易にそうだそうだの取り入れていたけど普通に考えたらおかしい。だってすれ違っただけの他人ならまだしも、あんなに盲目的に好きだった人だよ?それに会わなくなってから10年経ったわけでもあるまいし、これは明らかにおかしい。
「ない、かも」
「だろう?だからこそ僕は一つの可能性を考えた。彼女が僕を操っていたのでは、と」
「操っていた?!それはまたなんで?」
「僕はあまりにも簡単に彼女に恋に落ちた。恋をしてる間は彼女が僕の中の絶対だったんだ。彼女が是と言えば是、非と言えば非って感じでね。それが彼女と離れた途端こうだ。見たことはないけど、精神系の魔法を使うんじゃないかってね」
「精神系の魔法を使える人は全然いないってこと?この世界には」
「そう、精神系の魔法はこの世界の禁忌の一つだからね。それも黒い魔法だ」
「黒い魔法…?」
なにやら物騒な言葉がでてきたぞ?
「そう、詳しくは言えないけど、悪魔系の魔法だよ。普通の人には使えない、禁じられた魔法」
「でもそれならなんでリリーが使えるの?おかしくない?ただの庶民なんでしょ?」
「彼女、ある時から突然魔法が使えるようになって魔法学園に編入してきたらしいんだ。なにか特殊なことでも発生したのかなってね。でも、これはあくまでもただの僕の予測だからそんなにアテにはしないでいいよ」
ある時から、突然ーーー?
そんなのまるで、私みたいじゃないか。




