楽しいかくれんぼ
「じゃあまず僕が教えよう。その間はジン、色々調べとけよ。あのことも、ね」
「わぁったよ。じゃ後で」
そういってジンさんは前傾姿勢で下腹部を抑えながら中に入っていった。まだ痛む?そんなに?
「じゃ、ミリア。さっそくだけど使う武器はどうしようか?短剣?長剣?」
「いやぁ…できれば人を殺したくないっていうか…」
「それは無理かもしれない。相手は殺しにきてるからね。こっちも殺しにかからないと、隙を一瞬でもみせたら殺られてしまう」
「ですよね…わかってるんです。お二人の立場の危うさも、自分の弱さも…」
どうせこの世界の人には理解してもらえないことだろう。でも私、一昨日までは日本人の高校生だったんだ。それをこの訳わからない世界にきて戦って人を殺せと言われてるのだ。意味もわからぬ明確な敵意を向けられて。
「まあ、ミリアは女の子だから無理もない。守れる範囲では僕らがきちんと守るし、殺さなければいけない奴らは僕が殺そう」
「…っ、」
ルイさんは時々酷く冷たい瞳をする。そしてなによりも怖いのは人を殺すことに関してあまり抵抗がない。邪魔な奴らは邪魔だし、排除すべき奴は殺す。どんな人生を歩めばこうなるのか、日本で育った私には見当もつかないけど、いつか知ることができればいいな…。
「…ありがとう、ございます」
「まあ、殺さずとも相手を再起不能にさせる方法はあるよ。気を失わさせたり、毒で痺れさせたり、それこそ相手が男ならさっきのジンみたいにね」
「そうですね、毒で痺れさせたところで急所を切り取ると言えば再起不能ですかね?」
「恐怖で気絶すると思うよ、普通の男ならね」
ルイさん、顔色悪いですぞ?
「怖い話はこれくらいにして、どの武器が合うか色々試してみようか?短剣、長剣以外にほしいものはある?」
「んー、私が使っていた竹刀のようなものがいいんですけど…」
「竹刀って竹でできたものでしょ?そんなの一撃で剣に切られちゃうよ」
「あ、じゃあ切られない竹刀のような形のモノがほしいです!なんというか如意棒ってわかりますかね?そんな感じの!」
「ニョ、ニョイボー?はわからないなぁ。形は細長い棒って感じ?」
「そうですね、伸び縮みができる棒です」
こんくらいです、という意味を込めて親指と人差し指で丸を作る。太さはちょうど竹刀と同じぐらい。
「伸び縮みができる棒、かぁ。戦いで使われてるのを見たことがないけど魔法器具で楽意棒っていうのがあるよ。高いところに届くように伸びるようになっていて、収納には嬉しい縮む仕様になってるやつ」
「それ!それでいいです!それがいいです!」
「でも、家庭用の魔法器具だから丈夫なモンじゃないし、ただのアイデア商品だよ」
「それの強化版みたいなの作れませんか?!」
「うーん…しょうがない、ジンに相談してみる」
「ありがとうございます!」
よし、これで武器は決定だ!作れれば、だけど!
「短剣も長剣も、本当にいらないの?」
「うーん、一応護身用には欲しいですけど…」
「護身用なら短剣がいいね。短剣の使い方も覚えていこう」
得意分野だからなのか少し嬉々とした表情のルイさん。ごめんなさい、そこまで真剣に学びたくないです。
「護身用のアイキドウってやつはそんなに心配ないと思ったんだけど、どう?」
「いや、いきなり襲われたときに使えるかどうかが問題なので」
体が動いてくれるかが心配。だって日本人だもん襲われたことなんてない。
「そうだな、じゃあ僕がいきなり襲ってみてもいい?」
「ええ?!それは怖すぎます!」
「大丈夫大丈夫、一回だけ。試しにさ」
試しにとか言って目がギラギラしてますけど?!
隠れるから目瞑って10秒数えてねじゃないですよ!どんなかくれんぼ?!鬼が殺される側のかくれんぼなんてあります?!
とか思ってたらいつの間にかルイさんの姿がない。え?いつ隠れた?瞬間移動の魔法使えるのってルイさんですか?
周りを見渡しても人影一人ない。
「ル、ルイさん…?」
呼んでも返事はなく、風の音だけ聴こえる。
こ、怖い!本当に殺されるなんてことは多分ないと思うけど…多分、多分ね。ないよね?死なないよね?!無理!怖い!ちょっとチビっちゃったよ!
「ルイさぁぁあん!!」
怖くてたまらなくなって思わず叫ぶ。するとヒュウっと風が吹いたかと思うと後ろに気配がした。
振り返ろうとしたときに聞こえた言葉。
「ゲームオーバー」
後ろに気配がしたと同時にとにかく相手を遠ざけねば!と思って両手を突き出したら、身体がぶわっと熱くなり、手に力がこもった。
ゲームオーバーと言った声の主は、10メートルほど飛んでいった。
ど、どうなった?!




