でかいところ
「…先に家具を買って家に送る…その間に日用品を買う…良いかな?」
「了解です!」
数十分後、大きなショッピングモールに入った。3年ほど前にオープンし、殆どの商品を最新で揃えることをモットーにしているらしい。
「でかー」
「…お気に入りの寝具専門店があるんだ…僕の寝具もそこで揃えたんだよ」
「ほー」
「…うん…まずは向かおうか」
エスカレーターで3階フロアに上がり徒歩3分。照明ビカビカの寝具専門店に出会った。白で統一した外壁と内装、シンメトリーなレイアウトが、廊下からでも目をひいた。
「…ここ」
「ふむふむ」
非常に高級感のある内装、完全に白だけで統一しているという訳でもなく、所々に金色の幾何学模様の何かを貼り付け、その金色の模様がアクセントになり、簡素な雰囲気にはならなかった。
「…欲しいの選んでね」
背中をポンと押され、流れのまま店内を散策した。
「寝る寝る〜寝る〜ベッド〜」
値段は一切見ない。デカイ可愛い柔らかいで考える。一つ一つ周り、規定以上の大きさや可愛さを持つベッドを、手で押して柔らかさを確かめる。
「あ…」
店内角に配置されているベッドが目に止まった。大きさは規定を軽々超えている。柔らかさも、触った瞬間理解出来た、コレはGoodでしかない。それよりも、このベッドは全部がピンクで可愛らしかった。それだけで買う理由になった。
すぐに亜美の元へ戻り、手を引いてお目当てのベッドの所へ走った。
「これ!」
「…うん……え」
値段28万6000円。目に入った瞬間、即座に目を逸らし一生見ない事にした。亜美の1ヶ月半の給料がこの瞬間消費された。一式セットとはいえ、あまりにも高い。高級店という訳でもない店でこれほどの金額を払わされ、少しだけ過去の自分を怒鳴った。
「…わ…分かった」
「よーし!!次は〜どこに行くのだ?」
「…ちょっと待って…まずコレを買わないと」
「あ、そっか。じゃあ我は外で待っているぞ!」
ズダダダっと豪快に走り出し店を去った。目が眩むような値段の前で取り残された、もう逃げ道は無い、買う以外の選択肢はとうに消えていた。
「…これ買います」
金を払い、届ける住所を書いた後、魔王の元へ向かった。魔王は店の前の長椅子に座って吹き抜けを眺めていた。
魔王にとって、高所からの眺めと言うのは特別なものではない。魔王の城にも吹き抜け自体はあるのだ、だが人々は行き交っていない、魔族しか居ない魔王城は静かなのだ。それだけに目の前に広がっている賑やかな光景は、初めて見た、と言えるほど珍しかった。
「…お待たせしちゃったね」
「ん?」
声のする方を向くと、亜美が隣に座っていた。いつの間に来たのかは分からない、行き交う人々に夢中になり過ぎて、自分が周りを見れていなかっただけだろう。
「次はどこに行くのだ?」
「…テレビとか机とか…スマホが一番最初かな…?」
「スマホか…」
スマホ?全く分からない、でも推測は出来る。街を歩く人々は常に持ち歩いている、あの特殊な板。その高い需要や普及率、そして時には家具よりも優先されるという事実を考えれば、あの板がスマホであることは明白。多分。
「スマホと言うのは何が出来る物なのだ?」
興味があった。それほどまでに人が依存してしまうスマホという物に。
「…これ」
亜美はポケットからスマホを取り出し、魔王の膝の上に乗せた。太ももに触れた瞬間、スマホの画面が白く輝いた。
「明かりがついたぞ………あ、消えた」
ガラスを触る度に反応して画面は明るくなる。画面がついた状態でスライドすると絵が動く。ポチポチポチポチ、瞬きを忘れて没頭した。
「…買ってくるね」
返事は無い、だが特に気にすることなく歩き出した。
「ふむふむ…」
検索エンジンを開き、スマホについて調べている。亜美が居なくなってから数分、隣に男が座った。カジュアルな男性物の服装を身にまとい、渋めのメガネを掛けている。男らしい彫りの深い顔は疲労で垂れていた。
「君が魔王か?」
覗き込むように体を傾け、重低音な声で語りかけた。




