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『第三十六話 覚醒(?)』じゃ

 《固有スキル解放:覚醒(アウェイキング)


 レベル50に達したその瞬間、頭の奥で強烈な熱が生じ、心臓が大きく鼓動した。

 

「お……」


 ぼんやりとしたモヤのような光がオレの全身を包んでいた。


「……なんだそれは」


 目の前で鎌をかまえる痩身、ラボアジェが困惑する。

 オレもよくわからない。

 なんだ、覚醒って。何が覚醒したのコレ?


「なるほど……私の不死を利用し固有スキルを目覚めさせたのですか。……しかし、それはそうすぐに使いこなせるものではないぞ!」

「クスロウ!」


 ソフィアの呼びかけに、顔を上げると、ラボアジェはお構い無しに突っ込んできていた。


「う、クソ……!」


 とっさに封印剣をかまえる。

 眼前から来る圧倒的な殺気に身構えた。


 そのとき、体を包んでいたオーラが剣に移動し、その色をオレンジ色に変えた。


 ラボアジェの鎌の攻撃を、剣で受け止める。


 すさまじい衝撃にまた吹き飛ばされ──なかった。


「なに……」

「あれ?」


 衝撃は来た。だがオレはその場で耐えていた。

 もちろんめちゃくちゃ痛い。腕が折れそうな気がしたが……。

 なんだ、なんか、さっきより軽かったぞ。

 腕から剣を包むオーラが、一瞬にして消える。


 オイオイこれは……


「もしかしてチート的スキル解放かなァ────ぶっ、げあ!!?」


 しかしラボアジェは、攻撃が効いていないとわかると即座にオレの足を引っかけ、体勢を崩させると、

 みぞおちに強烈な蹴りを叩き込んできた。


 吹っ飛ばされて、オレはまた砂浜に転がる。


「あれ……あれ……??」


 いや痛い痛い痛い!

 ぜんぜん涙出るくらい痛いぞ!


 オーラも何もでなかった。

 何が違った?


「う……」


 わからない。

 っていうか、ラボアジェがもう目の前に来てる。


 痩身は静かに倒れたオレの隣に立ち、


「ぐ……う……!」

 

 オレの胸をみしりと踏みつけてきた。


「やはり……コケ脅しでしたかね」

「あ……ぐ」


 胸骨が……折れる……。

 踏み潰される。


 また恐怖が込み上げて……オレの胸を再びオーラが包んだ。今度は、ブルー色に。


「やはり魔王様には……勇者は失墜したとお伝えしましょう。王女も用済みだ」


  ……あ?


「魔物どものエサにでもしましょう」


 その言葉を聞いた瞬間、胸のオーラが消える。代わりに、右腕と剣を、今度は鮮やかな赤いオーラが包む。

 

「クソ……ガリガリ野郎が……っ」


 また心臓が、鼓動を強くする。


「…………感情のコントロールが下手ですな。勇者」


 そのときラボアジェはオレの胸から足を離し、オレを蹴り転がした。


「うっ……ぐっ!」


 オーラが霧散し、なすすべなく突っ伏す。


「それでは私には敵わない」


 クソ……

 さすがに……解放した瞬間、こいつを倒せる、みたいなことは起きないか。


「それでは」


 鎌を振り上げるラボアジェ。


 あー……。

 オレの固有スキル初お披露目が……まさか最期になるなんてなぁ。

 ごめんな……リアーナ……君にもう一度会ってちゃんと謝りたかった。

 真面目に更生して、今度こそ真の勇者として、魔王を倒しに行きたかった。

 こんなどこの誰がションベンしたかも射精したかもわからない砂浜で寝転がって一生を終えるなんて。

 しかもこんなガリガリの男に殺されるなんて……。


「…………」


 ……せめて、おっきなおっぱいに埋もれて窒息死とかがよかったな……。


 ……。


「…………」


 ラボアジェは鎌を振りかぶったまま硬直している。


「……感情……そうか。なるほど」

「あ……?」

「勇者クスロウ。いまの貴様では魔王様どころかこの私にすら足下にもおよばない。だが、そのスキルならばまだ可能性はあるな」


 コイツ……オレの固有スキルを見抜いたのか。


「ビビらせて正解でしたな。残念ながら、いまはあなたを殺す許可は出ていない」


 そう言って武器を下ろした。


「な……ま、待て!」


 あっぶねえ生きた、生きたぞぉ!! 


「まだ戦いは終わってねえぞ!」


 やっぱ中ボスはそうでなくちゃなッ!

 トドメはラスボスにとっとく。お決まりのパターンだよなァ!!


「ありがとう!!」

「本心が漏れてますよ」

「あっ」


 数歩下がったラボアジェはつまらなさそうにため息をつき、


「固有スキルひとつだけでは膨大なレベルの差は埋まらない。もっと強くなりなさい。地道に、魔王様に叩き潰されるにたる勇者に」


 そう言った瞬間、奴は砂浜を蹴り、上空に飛んだ。

 直後、凄まじい風が吹き荒れ、どこからか飛んできた巨大な竜の背中にラボアジェは乗っていた。


「クスロウ!!」


 竜が羽ばたいて去っていく。コン様たちが駆け寄ってくるのを視界の端に見ながら、

 俺は安堵と疲労の中で意識を失った。

私生活に大きな受験があり、更新が一年近くストップしていましたこと申し訳ありません。

これから最低週一ペースでは投稿再開していきます!

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