『第三十七話 一週間後』じゃ
魔王軍四天王《不滅》のラボアジェとの戦いから一週間後。あれから、色々なことがあった。
本当に色々なことがあって……
「覚悟はいいな。テメェ」
オレはいま、自分のチ〇ポをギロチン台に置かれている。
「いやっ、ちょっと待ってっ、話聞いてくださいって!!」
周りには強面の男たちが囲み、オレは椅子に縛り付けられたまま叫んだ。
「ウチの嬢に本番強要したろうがクソガキ! 傷モノにしようとしただろうが!!」
「してません!! いやっ……一瞬『ちなみに本場って……笑』とはお尋ねしましたけどっ、強要は決してして!!」
「嬢から聞いたぞ!! お前、そう言ったあとイキナリ叫び散らして押し倒してきたらしいじゃねえか!!」
「あ、あれはっ」
それは行為に及ぼうとしたらコン様の呪いが反応して、精嚢に激痛が走ったからだ。それで嬢に覆い被さるようにベッドに倒れ込んでしまった。
「――んです!!」
「コン様って誰だよオイ! 呪いとかテキトーぶっこいてんじゃねえぞ」
傷だらけの顔に青筋を立てた男が、ギロチンに手をかける。
「ちょちょちょちょっと待ってお願い!! 連絡して! コン様に電話させてくれたら裏とれるからっ!」
「デンワってなんだよ。電気あんまの略か!」
「なんでそっちの概念は知ってんだよっ!」
と、その時。いきなり部屋の壁がぶち抜かれた。「ぐわっ!」「なんだァ!?」太いツタがうねりながら入ってくる。
これは……!
「クスロウ君!」
ローブ姿の紫髪の少女、魔法使いのマイが穴から顔を出した。
「なっ、なんだテメェ!!」
「フン……」
さらに脇から金髪鎧姿のソフィアが現れ、素早く剣を抜くと、オレを縛っていた縄を切る。
「わしらは……勇者パーティじゃ!!」
さらに頭上から、可愛らしい声が響く。天井をぶち破って巫女服姿の幼女が出現。
「コン様!! ――ッ~~……」
名前を呼んだ瞬間、氷のように冷たいコン様の目がオレを睨み据えた。
あ……これ……やばい。
コン様は、マイ、オレを抱えたソフィアと共にその場を離脱する。
「クソッ、追え! 追ええ!!」
こうしてオレたちは何とか危機を脱し、拠点とするモーテルに戻ってきた。
「し……死ぬかと思った……」
ベッドに寝転がってため息をつく。そんなオレの股間の上から、間髪入れずコン様が着地してきた。
「ヒッ!」なんとか股を広げて回避する。
「何をしておるんじゃ? ヌシ……」
コン様は怒りに満ちた形相でオレの腹をぐりぐりと踏みつけ、迫ってくる。
「傷が治るなり夜遊びとは。悪ガキが治っとらんようじゃのオ~~!」
「ご、ゴメンって! いや、違うんだよ、道歩いてたら無理やり客引きに誘われてっ」
「そんな店の前を歩いとる時点で気があるじゃろうが!!」
「グハッ!」
それは興味本位だ!
思いっきり蹴り飛ばされて、ベッドの端に転がる。
「まったく……」
「フン……少しはマシになったと思って、自由にした私もバカだった」
腰に手を当てるコン様の隣では、ソフィアが軽蔑のため息をつく。
だって……。
「もう二週間は射精してないんだぜ? 精通してから一日以上オナ禁したことないオレからしたら……股間に爆弾ぶらさげて生きてるようなモンなんだよぉ……」
リアーナとの誓いを守るため、理性では絶対に他の女とはやらないと決めている。
でも……本能に抗えない。
オレはやっぱり最悪なヤツだな。
「じゃあ、あ、あたしに頼めばいいじゃない」
そこでベッドに腰掛けたマイが声をかけてくる。猟奇的な表情で舌なめずりしながら、
「なんで他のおっ女とセックスしようとするの? クスロウ君。死にたいの?」
「お前は言動がいちいち怖すぎるんだよ。さすがのオレも勃たんわ」
「ちょっといいかな?」
ガチャリと扉が開き、部屋に人が入ってくる。ソフィアと同じ鎧姿の騎士。
ラボアジェと一緒に戦った奴らの隊長だった。
「傷はもう回復したようだな」
「ああ……お陰様で」
特に、部隊の一人の女騎士にはとても世話になった。信仰力のためコン様の足を舐めるという苦行をやり遂げてくれたのだ。
お陰でラボアジェから瀕死の傷を受けたマイが、いまはこうしてピンピンしてナイフを持ち、俺を殺そうとしている。
「我々は一度王国に戻る。君らパーティは……」
「オレたちは」
「わしらはもう少し周辺国を回る予定じゃ。今回の一件で、クスロウにはまだまだ鍛錬が足らんと突きつけられたからの」
「…………」
実際、いまのオレが王国に戻ったとして何もできる気はしない。
いまのままでは、オレは王女を助けることなど、魔王を倒すことなど到底できない。
「わしも認識が甘かったわい……」
コン様は腕を組んで静かに呟くと、ビシッとオレを指し、「覚悟せい」と言い放った。
「これからはより厳しく激しい試練をヌシに与える。時間が無い。本当の死ぬ気でやらねば、全ての取り返しが付かなくなるぞ」
「……わかってる」
オレは頷き、その場の皆を見回した。
「一刻も早く魔王を倒し、リアーナを取り戻す。そのために全力でやるよ」
「監視は引き続き私が受け持つ」
ソフィアが腕を組んだまま付け足す。任務につく騎士として、責任感のある眼差しを隊長に向ける。
「なら、我々はこれで失礼する。また変化があれば連絡してくれ」
すると隊長は淡白に返し、きびきびと部屋を出ていった。
一緒に王国に来てくれ、とは言ってこない。たぶん……オレにもうそこまで期待してなかったんだろうな。
いや、仕方ない。それが現実だ。
オレはこれから、その中で自分を変えていくんだ。
「で……次の試練ってのは?」
「うむ。クスロウ、今いるこの国は何で有名かしっておるか?」
コン様は少し表情をほころばせ、尋ねてくる。
「何って……風俗のクオリティはヒドかったし……」
「…………」
「ダンジョン、だろう」
代わりにソフィアが答えた。
ダンジョンか……入ったことないんだよな。ちょっとイメージが湧かない。
「このゴルド共和国は、北大陸で最も遺跡の多い国と言われている。魔物が多く、新しいダンジョンがいまだに出土し、冒険者ギルドにも多くの攻略依頼が出されている」
「なるほど……」
「つまり、鍛えるにはもってこいの環境というわけじゃ!」
コン様が鼻息荒く指を立てる。「じゃあ、俺たちの次の目標は」オレが聞き返すと、
「うむ。このゴルド共和国でも最難関のダンジョン……《アラクニドロワイヤル》を攻略するのじゃ!」
「アラクニド…………!?」
それっぽい名前来たァ!
オレ、ソフィア、マイの頭の上に、蜘蛛の巣だらけの巨大な遺跡のイメージが浮かんでくる。
蜘蛛糸で束縛されるのって……ちょっとエロいよね。
まだ性欲が抜け切っていない頭でオレはこれからの空想し始めていた。
その日から、俺たちのレベル上げの長い道のりが始まった。
※
その頃、魔王城の大広間。
その中央には、巨大な氷の塊が安置されていた。
氷の中には、王国から捕らわれてきた王女リアーナが、静かに眠りながらクスロウの助けを待っていた。




