恋愛ゲームの主人公、お菓子なドタバタイベント。11
何故かとんとん拍子にお菓子を作ることになった。
しっかし職員用の仮眠室なのにキッチンまで完備ってすごいよなぁ。流石貴族の為の学園‥、先生達も高待遇なんだな。
感心している私の横でサクサクとボウルやスケール、木べらなどを取り出してささっと手早く用意するアレスさん。‥お菓子職人、動きに迷いがない。
「この材料だとクッキーか、ドーナツ、フィナンシェ‥ですかね」
「どれも魅力的ですねぇ!」
「ふふ、折角ですし作れるだけ作ってみますか」
「はい!!」
粉を計量して欲しいと言われ、早速腕まくりをする私。
計量するだけなら焦がすこともないしね。いくつか出してあるボウルに粉をそれぞれ計ってアレスさんに手渡すと、嬉しそうに砂糖や卵を入れて混ぜ始めた。本当にお菓子を作るのが好きなんだなぁ‥。見ているこっちが微笑ましい気持ちになってしまう。
「ええと、ユキさんまずはこのボウルの中をかき混ぜるのをお願いしてもいいですか?」
「はい!!」
「ルルクさんはこっちをメレンゲにしてもらっても?」
「はいはい」
テキパキとオーブンを温めたり、天板にシートを敷いてクッキー生地を均等に丸めるアレスさん。さっきまで落ち込んでいたのにすっかり楽しそうな顔になっている。ああやって普段もお菓子を作っているんだろうなぁ〜なんて思っていると、ルルクさんが私の肩をトンと叩いた。
「ほら、そっちのボウルを寄越せ。それは手早くかき混ぜないとだ」
「‥‥ルルクさんもお菓子職人になれそう」
「まぁ誰かさんよりは確実になれるな」
「その一言は余計では?」
唇を尖らせてルルクさんを睨むも手早くボウルの中の粉をかき混ぜる手つきに何も言えない‥。くそ、どんどんお菓子作り上達してないか?ボウルであれこれ混ぜている間にあっという間にクッキーが焼けて、窓際に冷やすために置くと、窓の外でアレスさんを追うセリアさんが見えた。
朝から追いかけてたんかーーい!
思わず心の中で突っ込むが、セリアさんの「アレス様〜〜!待って下さいよう〜〜」と言う声がこっちまで聞こえてきて、フィナンシェをオーブンに入れたアレスさんの顔が固まった‥。慌てて窓を閉めようとするもアレスさんが「大丈夫ですよ」と、言ってくれたけど本当に大丈夫そ?
心配していると、アレスさんが使ってないボウルを洗いつつ窓の外を見つめた。
「‥多分、あの姿を見るに一年か、二年生だと思うんですけど、あの頃はやたらと追いかけ回されて、なんで自分を?と、不思議で仕方ありませんでしたね‥」
「な、なるほど‥」
まぁセリアさんが転生者で、このゲームを知ってたからなぁ‥。
けど、よくよく考えたらゲームの主要キャラじゃないのにどうしてあんなに攻略対象や王子と結婚したいって思ったんだろ。現実はそう上手くいかないって伯爵家にいれば分かるはずなんだけどな。
窓から見えないようにセリアさんの頭を見ていると、一人でブツブツと「あーもう!全然靡かない!」と怒っている。いや、そりゃ距離の詰め方が流石に問題あるでしょ‥と、恋愛ゲームの主人公として突っ込んでいると、腕を振った拍子にセリアさんのポケットから何かが飛び出した。
「え?」
コロコロとセリアさんの足元に転がったそれは砂時計‥。
なんだか、壊れてしまったあの砂時計によく似てないか?思わず窓から顔を出し、まじまじとそれを見つめていると、丁度の木の下にいる人がその砂時計を拾ってセリアさんに声を掛ける様子が見えた。
あら‥、優しい人がいるもんだ。
そんな風に見ていると、ルルクさんがジッとセリアさんを見ている。
「ルルクさん?」
「しっ」
ルルクさんが人差し指を口元に当て、どうやらあの二人の会話を聞いているようだけど‥、この距離で聞こえるの?ともかく静かにしていると、やがて二人はその場で別れ、木の下にいた人の姿は見えなくなってしまった。
「ルルクさん、もしかして会話が聞こえたんですか?」
「‥ああ。どうも顔見知りらしい。で、さっきの砂時計だが、せーぶきのう‥?が3回までって言ってたが、もしかして3回しか使えないのかもしれないな」
「えっ!??」
ちょっと待って!!セーブ機能って言ってたの?
じゃあ、あのセリアさんの顔見知りの人も、転生者ってこと?!もう一度窓から顔を出したけど、もうどこにもいない‥。私も転生者だし、セリアさんも転生者。そりゃ他に転生者がいてもおかしくないけど一体誰なんだ?
と、私とルルクさんの会話を聞いていたアレスさんがジッと窓の外を見つめ、
「‥つまり、あの砂時計を使えば戻れる可能性がある?」
そう言うと眼鏡がキラリと光り、
「タリクが帰ってきたら早急に相談をする必要がありそうですね」
宣言した途端、オーブンがタイミングよくチーンと鳴った。
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