恋愛ゲームの主人公、お菓子なドタバタイベント。12
タリクさんがあれから少しして戻ってきて、事の顛末を話すとそれは驚いていた。
「彼女の砂時計で本当に未来へ戻れるかはまだ確実にわかりませんが、ハイデン伯爵の娘さんですからね‥。あり得ない、とは言えませんね」
アレスさんが静かに頷く横で、ルルクさんは焼きあがったクッキーをかじりつつ、「あの顔見知りらしき男も怪しいな‥。すぐに追っておけば良かった」と、言うとタリクさんが静かに首を横に振った。
「気持ちはわかりますがそんな男が裏にいるとしたら、ルルクさんに危険が及ぶ可能性もあります。ここに留まって下さって良かったです」
確かに。セーブ機能があるなんて言ってたくらいだ。ルルクさんを知っている可能性もあるもんね‥。だけど砂時計なんてアイテムあったか〜〜〜?!オートセーブの時とか、ローディングの時に砂時計がくるくる回っていたけど、そんな機能なかった気がするんだよね。それとも私が知らない裏設定?
「ユキ、思考の波に潜ってるぞ」
「はっ!いつの間に‥」
「確かに潜ってしまいますよね。急に砂時計が目の前に現れたら混乱しますよ」
アレスさんがそう言いつつお茶をサッと手渡してくれた。気遣いありがとうございます‥。私は淹れてもらったお茶をゆっくりと飲んで、ソーサーにそっとカップを置いた。
「ともかく、一度砂時計を手に入れないと‥ですよね」
「そうだな。試して戻れればラッキーだ」
「ですが、彼女に迂闊に近付くと危険ですからねぇ。なにせ呪いを持っていますし‥」
「あ、そ、そうだった」
万が一日本語で何か書かれたらまずい。今回紋様の道具を何も持ってない私では対処のしようがない‥。ルルクさんがお茶を飲み干し、
「俺が盗んでくる。ジャケットのポケットに入れてたし‥、どうにかなるだろ」
「いや危険ですってば!何かあったらどうするんですか!」
「だがさっさと盗まないとまずい。家に置いていかれたらそっちへ取りに行くほうが危険だろ」
「そ、それは‥」
だけどやっぱりルルクさんが心配だよ‥。
それにルルクさんにばかりに危険なことを押し付けるのは私も嫌だ。どうしようかと頭を巡らせていると、焼いたばかりのクッキーが目に入った。
「‥‥眠り薬って、ありますかね?」
「「「え?」」」
そっとクッキーを持ち上げ、
「セリアさんに眠り薬を仕込んだクッキーを食べて頂く、というのは如何でしょう?」
完全に恋愛ゲームの主人公らしかぬ提案をすれば、3人が顔を見合わせた。
「眠り薬ならばすぐに調達できます」とはタリクさん。
「お菓子の材料はあるので作れます」とアレスさん。
「おびき寄せるなら夕方以降だな。成長していても薄暗い場所なら誤魔化せる」とルルクさん。
あっさり決まったな!?
自分で提案しておいてなんだけど、本当にいいのか?
私は3人を交互に見つめると、3人は静かに頷いた。
「顔見知りの者が誰かわからない以上、すぐ動いた方が得策です。もしこれでダメだったらまたすぐ行動すればいいだけです!」
「おやおやアレスが随分とやる気に満ちて‥。やはりお菓子を作らせると良いようですね」
「‥‥そういう訳では。ともかくタリクすぐに眠り薬の調達をお願いします。私はその間に手紙を書いてセリアさんに渡してきます」
え、それはそれで危険じゃない?
私は慌てて挙手をして、
「私が転入生のていで、お手紙を渡します!」
「ユキ!?」
「ちょーっとだけです。セリアさんのクラスの人に手紙を渡して欲しいってお願いするだけですよ」
ルルクさんがそれは嫌そうに顔をしかめたがそこは耐えてくれ!!
ここは皆でどうにかしなければならないのだよ。ルルクさんを見上げ、
「ルルクさんは私を影から見守ってて下さい。それで何か危険があれば教えてくれると助かります!」
「‥手紙ならタリクに任せてもいいだろう」
「教師が生徒一個人に渡したらお呼び出しされてしまうので、それはちょっと無理ですね」
タリクさんにあっさり論破され、ルルクさんはそれはもう不満そうに私を睨む。あの制服を着るのが嫌なのはわかる。でもスカート丈はあれでも長いんだぞ?ジッとルルクさんを見つめると、小さくため息を吐き、
「‥危険だと判断したら、即窓から連れて出て行くからな」
「はい!!!」
首が切られないなら全然オッケーである!
にっこり頷いて急いで椅子から立ち上がり、「すぐ制服に着替えてきます!」と、宣言すると、ルルクさんがそれはそれは重たいため息を吐き、
「一ミリも短くするなよ」
と、生徒指導の先生かってくらいビシリと私に言い渡したのであった‥。
うっかり眠って本日更新!
草刈りしたので腕が痛い‥。草刈り機って重い‥。




