恋愛ゲームの主人公、お菓子なドタバタイベント。6
本棚の横にあった小さなコンロの魔道具でお茶を淹れてくれたタリクさん。
カップが足りなくて、タリクさんはビーカーでちびちびお茶を飲んでいたが火傷とかしないのかな‥。心配でついついそちらに目がいく私を横にルルクさんはガラス部分が割れてしまった砂時計をゆらゆらと揺らした。
「‥魔法や魔術で過去に戻ることはそもそも可能なのか?」
ルルクさんの問いにアレスさんが首を横に振った。
「いえ。過去に戻るなんて聞いた事はありません。まるで「魔法」に掛かった気分です」
「じゃあ、戻ることはできないと?」
「‥いえ。砂時計で過去に来たのなら未来にも戻れるのではないか?とも考えています」
アレスさんは「ただ、どうしたらいいかは皆目検討が付かなくて‥」と、言うと肩を落とした。あ、ああ〜〜、そんな落ち込まなくても‥。オロオロする私の横でちびちびお茶を飲んでいたタリクさんがそっとビーカーをテーブルに置いた。
「あの黒い砂時計を入手すればいいのでは?」
「え?!」
「この時代にまだあの砂時計の話は聞いていません。ベラートで探すという手もありますよね。それか黒の魔法石を入手するとか‥」
「どっちも現実的ではないだろう‥」
ルルクさんが呆れたようにタリクさんに言うと、にっこり笑った。
「でも候補はこれで2つも出来ました!ゼロでないだけ少し気が楽になりますよ」
タリクさんの前向きさにじんわりと励まされ、私もうんうんと頷いた。
「そうですね!可能性はゼロじゃない!」
「‥お気楽がもう一人増えた」
「いいじゃないですか。それにここに知っている人が3人もいるって心強いですよ!」
にこーっとルルクさんに笑いかけると、一瞬目を丸くしたルルクさんが私の頭をワシワシと無言で撫でた。ちょ、ちょっと!人前でそういう事をしないの!ジトッと睨む私を面白そうな顔をしてなおも撫でるルルクさん‥。心臓はきっと合金製なんだろう。
アレスさんがカップをじっと見つめながら、
「ひとまず、ベラートに関する情報を集めないとですね」
「そうですねぇ。そうなると王城か、学校の図書館か‥」
「学校の図書館?」
そんな場所にあるの?思わず尋ねる私にタリクさんが小さく頷いた。
「私自身も各国について勉強しておかないといけない事も多くて‥。かといって王城へ通い詰めるのも難しいのでレオルドに頼んで鍵付きの書庫に用意させておいたんです」
「え、でも鍵付きって‥」
鍵を開けられないと困るのでは?
と、横にいたルルクさんがタリクさんに「鍵に魔術は?」と、聞いた。
「魔術は掛けてないです」
「それなら大丈夫だ。俺が開ける」
「あ、開ける!??」
「場所さえ教えて貰えれば。学校が終わってから夜にでも開けておけば大丈夫か?」
「そうですね。私も大体夕方までしか使ってなかったので夜なら安心ですね」
なんでもない事のように話してるけど、ルルクさん鍵って開けられるの?!‥‥いや、あんだけゲームで暗殺者として暗躍してたんだ‥、鍵なんてなんて事ないか。感心する私の横で、タリクさんとアレスさんが学園内の地図を書いて場所をルルクさんにテキパキと説明し終えると、タリクさんは食堂から食料を調達してくると早速出かけていった。だ、大丈夫なのかな?バレたりしないのかな?
「‥堂々としてれば案外わからない。それにあいつならあの女に万が一会っても大丈夫だろう」
「ルルクさん、私の心読んでます?」
「大体わかる‥」
本当に〜〜〜?
ルルクさんを疑惑の眼でジッと見ていると、タリクさんが小さな声で、
「色々、巻き込んでしまって‥、本当にすみません」
突然謝るので驚いた。
なんで?なんで謝るの?!私は慌てて、アレスさんの方へ向き直った。
「巻き込まれたなんて思ってませんよ!今回のはどう考えたって防げたものじゃないし‥」
「ですが、私がリストアップをお願いさえしなければ‥」
深刻そうに項垂れるアレスさんの肩をポンと叩き、
「さっきも言いましたけど、一人じゃなくて皆でここにいられて私はかえって安心ですよ?あと、こんな時に不謹慎かもしれませんが、マリーベル学園に来られてちょっと嬉しいんです」
「え?」
「‥私、小さい頃に母に「いつかあそこに入学するのよ」って言われてたんです」
私の言葉にアレスさんが驚いて顔を上げた。
あ、そっか。本来なら私がこの学園に本来は入学するって設定をアレスさんは知らないんだ。恋愛ゲームなのに誰もそれを知らないってちょっと面白くて笑ってしまう。
「もしかしたらアレスさんと同級生だったのかな〜って思うと、ちょっとワクワクします。不安もそりゃありますけど、せっかくですし学生気分を味わってみるのもいいかなぁって!」
「‥‥‥同級生」
まじまじとアレスさんが私を見て、「そうだったら、きっと楽しかったかもしれません」と、照れ臭そうに話す姿にほっこりする。‥ただねぇ、一緒にお菓子作りしようものなら絶対焦がしてた。どこか複雑な気分で「それなら嬉しいです」と、答えると、ルルクさんにまたも無言で頭をワシワシと撫でられた。‥なぜだ。
頭って好きな人しか撫でられたくないよね〜って話したら、女子一同頷いてくれました。イケメンだろうがその場所は好きな人オンリーという話に一話書けそう‥、いや、その前にこっちや!と、突っ込む自分。




