恋愛ゲームの主人公、お菓子なドタバタイベント。5
突然マリーベル学園に移動してしまった‥?と、思っていたら、白い魔法石で溶けてしまったはずのセリアさんはいるわ、廊下の向こうに学生服を着たアレスさんが立っているわで、私達は思わず顔を見合わせてしまった。
「ど、ど、どうしてマリーベル学園‥、え、待って?もしかして過去に来ちゃった?!」
私が呟いた言葉にタリクさんがワクワクした顔で、
「なるほど!確かにその可能性はありますね!」
「な、何でそんなワクワクした顔‥」
「前回の不可思議な体験をして以来、ちょっと楽しくて」
「先生、一旦落ち着いて下さい‥」
思わず突っ込む私の横で、ルルクさんが大きくため息を吐いた。
「過去はわかったが、そもそもなんで突然ここにいるんだ」
「ですよね‥」
私も全然わからない。
何かきっかけなんてそもそもあったっけ?
首を傾げると、アレスさんがさっき落とした砂時計を取り出すと、ガラスの部分がに大きく亀裂が入っていた。アレスさんを見れば、ジッとその砂時計の中を見つめ、
「‥恐らく、この砂時計の可能性があるかと」
「え!?」
「この黒い砂‥、よく見ればオーロラ色に光っているんです」
「オーロラ色って‥!!」
それって黒の魔法石って事?!
皆でアレスさんの手の中にある砂時計をジッと見つめれば、お日様の光でキラリとオーロラ色に光る砂が見えて、目を丸くした。
「本当だ!でもなんで突然‥」
「恐らく先ほど学生の話をした時に反応したのかもしれません」
「それだけで‥!?って、そうだ‥リィちゃんも遊びたいっていう欲求からタリクさんやルルクさんを人間にしてた‥」
「はい。ですが、この砂時計はどうもそういった無差別な感じで願いを叶えたように感じないんですよね‥」
「確かに。さっき落として触っていた時にはなんの反応も示さなかったな」
ルルクさんがジッと砂時計の中を見つめ、それからアレスさんを見上げた。
「‥‥だが、これはもう使えないんじゃないか?」
「えっ!?」
「‥はい。今、触っていても何の魔力も感じません」
「じゃ、じゃあ」
戻れないって事?!
そう言葉が出かかったその時、
「アレス様〜〜〜〜!私と一緒にお菓子を作りましょうよぉ!」
鼻にかかった話し方をするセリアさんの声が中庭に響いた。
どこにいてもあんな感じだったの?あの人‥。そっと茂みから顔を出せば、それはもう迷惑そうな顔をしているアレスさん。
「私は勉強をしたいので、お菓子作りなどしている時間はありません」
「ええ〜〜〜!?でもぉ、お菓子を作るのって楽しいですよ?」
「結構です。あと手を勝手に触らないで下さい!」
「うふふ、照れてるんですか〜?」
わぁあああああ‥‥‥。
同じ女性だけどね?同じ女性だけど、なんていうか目も当てられなくてつい隣にいたルルクさんを見れば、ルルクさんは横にいるアレスさんを見て、
「大変だったんだな‥」
「し、しみじみ言わなくていい!と、ともかく、この場からひとまず離れないと‥」
「そうですねぇ。生徒同士のいざこざをそのままにするのは居心地が悪いのですが、仕方ありませんね」
「タリク!??」
「はいはい。私の研究室の横に倉庫があるので一旦そこへ行きましょう。あそこは私しか使ってないから大丈夫です」
皆で頷きあって、そっと中庭から研究室の横にあるという倉庫までこっそり移動するが、ちらっと最後に見えたアレスさんのほとほと困り切った顔。あの時は、まだお菓子を作ってなかったのか‥。
本当ならゲームの進行上、一緒にお菓子を作ることで親交を深めるはずだったけど、私はこの時代には田舎の別荘地へ逃げていて、学園のことを思い出す間もなかった。アレスさんはアレスさんで、学園時代を苦労しながら過ごしていたんだな‥なんて思うと、ちょっと重みは違うけどわかるよ〜なんて肩を叩きたい気分だ。
「こちらです」
タリクさんの声にはっとしてそちらを見れば、学園の端っこに小さな小屋が建っている。
「この頃の私は滅多にここへ来ることがなかったので大丈夫でしょう。さ、入って下さい」
「は、はい」
皆で急いで小屋の中へ入ると、壁に備え付けてある棚の中には本がびっしりと収められていて、その真ん中にテーブルと椅子がポツンと置かれていた。
「いやはやお恥ずかしい‥。あまり片付けていない部屋へお通しする羽目になってしまうとは」
タリクさんが照れ臭そうにそう話すと、アレスさんが「あの頃は相当忙しかったですしね」と、付け加えた。
「タリクさん、他に何かしてたんですか?」
「ああ、レオルドの家庭教師と学校の教員、それと魔石の研究と出張と採掘にも行ってて‥」
「わぁあああ‥」
「そこへ先ほどのセリアさんが突然研究室へ乱入して、あちこち魔石を触ろうとするものですから本当に大変でしたねぇ」
「わぁあああ‥」
なんと言ってよいのやら。
横で聞いていたルルクさんは「あれと3年もいたってことか?」と、ちょっと驚きの表情で話したけれど、確かに!結構大変だったろうな‥。
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