恋愛ゲームの主人公、お世話イベント!11
いきなり腕の中のリィちゃんを引ったくったお兄さん。
突然のことに頭が真っ白になった瞬間、肩の上にいたルルクさんがパッと飛び上がり、お兄さんの後ろの服のフードにスポッと飛び込んだ!
「ルルクさん!!?」
お兄さんは私の叫び声に慌ててギルドから飛び出してしまい、私は急いでタリクさんを腕の中に抱えて外へ追いかけた。が、騎士団を建てる為に大工さんや他の業者さんが慌ただしく動いていて、人混みに紛れて見失ってしまった。
「え、ど、どうしよう‥!」
本当にあのお兄さんの人形だったの?!
でもそれにしたってなんでいきなり奪っていくの!?というか、ルルクさんまでどうしよう!!真っ青になった私に、腕の中のタリクさんがぽんぽんと手を叩き、
「まずはウィリアに報告です!人相は覚えてますから大丈夫ですよ」
「は、はい!」
そうだ!まずは報告をしないと!
私一人で抱えられる問題じゃない!騎士団の方へ走っていくと、丁度ウィリアさんが建物から出てきたところで急いでタリクさんと事の次第を伝えると、慌てて他の騎士さんに声を掛けてくれた。けど、私は?このまま何もできないの‥?
リィちゃんを助けようとお兄さんのフードの中に飛び込んだルルクさんがもし見つかったら?もし壊されてしまったら‥?そう思ったら怖くて、足が震えてしまう。
「ユキさん、少し落ち着かれた方が‥」
「で、でも、ルルクさんが‥」
どうしよう。早く見つけなきゃ。
ぐるぐると頭の中が渦巻いていると、ふと建物の隙間から昨日タリクさんを連れていこうとした猫がするりと出てきて歩いているのが目に入った。
「‥そうだ!!匂い!!」
「え?」
急いでギルドの中へ戻り、紋様の筆を取り出した。
匂いを辿れば見つけられるんじゃないか?そう思って、急いで左腕の袖を捲り上げた。犬って確か嗅覚人間の何百倍もあったはず。
「嗅覚向上って、‥ええっと500万倍くらい???」
急いで日本語で書けば、文字は金色に光ってパッと消えた。
よし!これで大丈夫‥か?
すっと鼻から匂いを吸うと、
「うえぇえええええええええええ!!!!は、鼻が痛い!!!」
「ユキさん!大丈夫ですか?!」
「い、今、嗅覚をあげてみたんですけど、思いの外匂いがすごくて‥。うう、臭い〜〜〜〜!匂いの大渋滞だぁあ!!動物ってすごい‥」
「本来動物はこれと決めて匂いを嗅いでますから‥。無作為に嗅いだら辛いと思います」
そ、そうだったの〜〜〜?!それにしても流石先生物知りですね。
「あ、でも待って‥私、リィちゃんの匂いを知らない!」
「匂い、ですか」
タリクさんがちょっと考え込んでから、私を見上げた。
「その、匂いなら昨日からずっとリィちゃんと一緒にいたのでもしや少しはするのでは‥」
「それです!!すみません、失礼しますね!!」
タリクさんを持ち上げてすっと吸うと、ふんわりと花の香りがする。
そっか、さっき花で遊んでたから‥。それと少し土の匂い?顔を離して、ふんふんと周囲の匂いを嗅げば、匂いが外へ続いているのがわかる!
「タリクさん、いけそうです!!」
嬉しくてそう伝えるも、タリクさんは目をウロウロさせつつ「よ、良かったです‥」と、もそもそと呟いた。よし!早速ウィリアさんにも伝えなきゃ!急いでギルドを飛び出して探しに行こうとしているウィリアさんに伝えたら、タリクさんを見て、
「‥‥タリク、大丈夫か?」
と、聞いたが何かまずいことでもあったのか?
私は心配してタリクさんを見れば、ちょっと赤い顔で「な、何の問題もないですよ?」と、しどろもどろだった。ええ、本当に?!
ウィリアさんはそんな私とタリクさんを呆れたように見つつ、
「で、匂いはどっちへ行ったんだ?」
「ええっと、あ、タリクさんもう一回嗅がせてもらいますね」
「は、は、はいっ」
タリクさんの首元の匂いを嗅いで、匂いを自分にしっかり覚えるんだ!パッと顔をあげ、花と土の匂いを辿れば、湖の方へ続いている。
「湖の方です!!」
「よし、馬に乗っていくぞ!タリク!頑張って生きろ!!」
「は、はいっ」
なんだかさっきより腕の中でくったりしているタリクさん‥。
もしかして匂いを嗅がれると疲れちゃうの???慌てて頭をそっと撫でると、今度は赤い顔になって、
「あのっ、大丈夫。大丈夫ですから‥」
なんて息も絶え絶えに言うからますます心配なんだが?!
ウィリアさんに目線で「本当?!」って聞けば、ウィリアさんはそれはどこか遠くを見つめ、
「うん、大丈夫って言ってるしユキちゃんはオレと一緒に馬に乗ろっか」
と、言うと私とタリクさんの馬に乗せてくれて、一緒に湖の方へと駆け出した。そうだ、まずはリィちゃんとルルクさん救出だ!!いくらマイ人形だったとしても、いきなり奪っていくのは失礼だし、万が一ということもある!すぐに助けにいくからね〜〜!!!
ぬいを買ってしまったら私は一生大切にしちゃうので、あえて買わない。
だって失くしたら絶対立ち直れない‥‥。




