恋愛ゲームの主人公、お世話イベント!10
リィちゃんによってお父さん役に抜擢されたルルクさん。
無言でお花を食べるふりをするルルクさんを笑わないよう、必死に唇を噛み締めていると、ニヤニヤが止まらないウィリアさんが私の肩を叩いた。
「オレ、今日はタリクとリィちゃんの護衛するからさ、ユキちゃんは午前中仕事しておきなよ」
「え、いいんですか?」
「ルルクもいるし大丈夫だろ」
「‥俺は花で腹一杯なんでそろそろ終えたいんだが?」
「まだ5分も経ってないだろうが!オレとタリクは昨日夕方から夜までずっと遊んでたんだぞ」
ウィリアさんの言葉にげんなりした顔をするルルクさん。正直過ぎる‥。
まぁ、横にいるリィちゃんがそれを許すこともなく、「お父さん!お皿洗ってね!」と、早速指令を出しているけど。
「ルルクさん、私すぐそばで仕事するんで午前中だけ頑張って下さい」
「‥‥‥わかった。何かあったらすぐこっちへ来い」
「はーい」
心配性だなぁ‥。
小さく笑ってルルクさんの頭をそっと撫でてから、私はすぐ横にあるテーブルへ紋様の道具が入った籠を置いた。はたから見たらウィリアさんが一人人形遊びをしているようだが、騎士団の人達も事情を知っているのかリィちゃんを見て「お、今日も元気だな」と、声を掛けている。非常事態なんだけど、結構のんびり構えているんだな。
「あれ?今日はトーリちゃん一人?」
「え?」
声がした方を見れば、いつも紋様を頼みに来る大工のおじさんだ。
「おはようございます。ルルクさんならちょっと所用で‥」
「あちこち色々あったもんな。ルルクさん腕が立つから引っ張りだこだろ」
「そう、ですねぇ」
今現在はまさか人形になっていて、真後ろにいますねぇなんて言えない。ともかく早く紋様を描いてしまおうと、腰痛防止の紋様をおじさんの腕に描き始めると、ウィリアさんの手元の人形が目に入ったのか目を丸くした。
「あれ、人形?」
「っへ、あ、は、はい。その、ウィリアさんの妹さんが人形をいくつか送ってくれて???」
ひーーーーー!!
慌てて誤魔化すと、ウィリアさんも「そうそう!可愛いでしょ?」と、笑いつつ籠の中にささっとリィちゃんを隠した。あっぶな!
「最近人形持ち歩くやつ増えたよなぁ〜。この間も人形をカバンに入れて持ち歩いているやつ見たぜ」
「え!?そうなんですか?」
「おう。うちの娘もこの間人形買ってきた!って見せてくれたぜ」
「へぇ、いいですねぇ」
「でもよぉ、大きな大人が人形を持ち歩くってなぁ‥って、言ったらすごく怒られてさ」
「大きくなっても好きなものは好きですからねぇ」
私の言葉におじさんが「やっぱそうなの?」なんて言うけど、そうですね。どんだけ大きくなっても人形を好きでいいと思いますよ。‥とはいえ、人形を持ち歩くのがこの世界でもそこまで珍しくなかったとは初めて知った。ここって大分田舎だから情報が来るのが遅いんだろうな。
その後も数人紋様を描き、客足が少し止まったところで後ろを見れば、ウィリアさんがぐったりと疲れた顔をしている‥。
「‥ウィリアさん、一旦休憩してきたらどうですか?」
「いや、でも今回護衛だから」
「今、お客さんもいないし、ちょっとならいいのでは?まだあと1日あるんだから無理はしないほうがいいと思いますよ」
「うっ!じゃ、じゃあ、ちょっとだけ‥、いいか?」
チラッとタリクさんとルルクさんの方を見れば、籠の中の二人が小さく頷いた。
「ウィリア、ついでにシヴォンから連絡が入ってないか確認してきて下さい」
「そうだな‥。ついでに早く戻る方法も探してきてくれ」
「無茶苦茶言うな!!ユキちゃん悪い!少しだけ頼む」
「はーい、大丈夫ですよ」
トイレにも行きたいだろうし、一息つきたいだろう。
リィちゃんは「え〜〜〜?」と不満顔だが、ピッチャー交代だ。
「リィちゃんは私と遊ぼっか。櫛も持ってきたんだけど使ってみる?可愛く髪を結えるよ?」
「髪の毛!?やってみるー!」
パッと顔を輝かせるリィちゃんを見て、タリクさんは「ユキさんは流石ですねぇ」なんてすぐに褒めてくれたけど、まぁ一応女児遊びは一通りしましたからね。リィちゃんの髪を二つ結びしていると、
「あの‥」
後ろから声がして、そちらを振り返れば私より年上らしいお兄さんが立っていた。
ん?この人誰だろ?
あまり見たことない顔だな‥。
まじまじとつい見過ぎてしまったのか、お兄さんはあちこち目を泳がせつつ、
「その人形‥、どこで」
「え、ええっと‥」
まさか預かっていると言えず、言葉が詰まると、
「僕の持っていた人形にすごく似ているんですが、ちょっと見せて頂けませんか?」
え?そうなの?!
でも確かにおじさんが人形を持ち歩く人がいるって言ってたしなぁ‥。とはいえ、いきなり喋る人形ではないのは確実だ。
「すみません‥、実はこれは今人から預かっている物なのでそれはちょっと‥」
「そう、ですか」
そう言った瞬間、お兄さんは私の手の中のいきなりリィちゃんを引ったくって、一瞬頭の中が真っ白になった。ちょ、ちょっと!??
今日も読んで頂きありがとうございまっす!!




